一年生 6月-1
今日は、いつになく学校が騒がしかった。
理由はわかっている。テストだ。
6月になり、前期中間テストが行われた。そのせいもあって、最近はどちらかというと静かだったが、それが終わり、さらにテストの返却も終わってみんな、解放的になっていたのだ。
まぁ、中には、赤点を取って憂鬱な気分に浸っているやつもいたが……。大半は喜びと嬉しさだ。
それに、テストが終わって部活が再開するということで、張り切っているものも多い。
そういう俺は……もとい俺と伊久留は、テストが終わったので、久々に部室に集まった。別にテスト前だからって、こ子での活動は休む必要はないと思ったが、伊久留がそう言ったので従った。一緒にテスト勉強するというのも考えたが、人によっては一人のほうが集中できるし、伊久留はそう言う事だろうと、詮索もしなかった。
まぁ、活動が減った代わりに、俺はあきなちゃん(12)のことを見守ったりすることができたしな。
そんな俺のテスト結果だが、60点から80点のあたり。平均で70点台と言ったところだ。この学校的にも順位を見ると、平均より少しいいくらいだった。初めてのテストでどうなるか不安に思っていたところもあったが、俺はこんなものか。
「伊久留はどうだったんだ?」
俺が聞くと、伊久留は鞄を指さす。勝手にみろと言う事らしい。
俺はそれに従って、テストを取り出す。
「うわ……お前ってあんまり成績良くないんだな」
そうして目に入ってきたのは、ほとんどが40点台。よくても50点台とかだった。
どっちかと言えば、頭は良さそうなイメージだったが。意外だ。だが、赤点はないようだからマシなのか。伊久留もさして気にした様子ではないし。本を読んでる。
と、それはそうと……。
「これからどうする?」
俺が伊久留に声をかけると、顔を上げる。俺は続けて話す。
「いや、テストも終わってひと段落したけどさ。同時に思うんだけど、俺たちも一通りは思いつく中でやれることは済ませたじゃないか」
それなりに色々と遊んできたし、友達らしくなれた……と思っている。言うなれば、友達中級者くらいにはなったはずだ。
だからこそ、俺たちは新しく何かするべきではと思ったのだ。
俺はそのことを伝えると、伊久留は――
「……別にいい」
「え、えぇー……」
全然乗り気じゃなかった。つーか、視線が既に下がって本を読み始めてる。
っぐ! 何故だ。伊久留だって、俺が初めての友達とかでそれなりに浮かれていたじゃないか。それなのに、どうしてこの話を拒否するんだ。
実はあれか。友達になったことを後悔している感じか? 「もうあんたとは付き合ってられんわー!」って感じか? もう仲良くはなりたくないと。そう思っているのは俺だけだという事か?
いやいや、そんなはずはない。俺たちはちゃんと通じ合ったはずだ。友達としても部活の仲間としても。理由は知らないが、ここは押し切らせてもらう。
「な、なぁそんなこと言わずにさ。何かやろうぜ?」
俺はそうやってしつこく話しかける。すると、集中がそがれたのか顔を上げ、俺に聞いてきた。
「じゃあ、新しいことってなに?」
「え? いや、それは今から考える……」
「決まったら言って」
そうとだけ答えると、また本に視線を戻してしまった。……って!
「ええ!? いや、これは一緒に話し合おうって部分じゃ……!」
「……めんどう」
「……さいですか」
その答えに俺のほうが勢いを削がれた。だが、このままじゃ俺の気が収まらない。ずっともやもやとしたままだ。
くそ~……だったら俺一人で考えてやる。それだったら、別にいいみたいだしな。
よし、まずは今までにやってきたことを思い返してみよう。そこから次へのステップアップには何が必要か考えるんだ。
やったのは自己紹介と質問があったな。質問とかだったら今だからこそ、聞いてみたいことってあるだろうし……いや、こんなの普通に聞けばいいや。もう今更だ。改まってやる必要性はないな。
後は……しりとりとか。普通だな。シミュレーションなんてのもやった。またやってもいい……いや、ダメだ。あれは絶対ダメだ。なんかおかしい雰囲気になる。
他にもやったのはいくつかあるが、これらを踏まえた上でどうするかだな。
……うん。わからん。まず自分で言った言葉だが、友達中級者ってなんだ。むしろ、初心者と中級者って何が違うんだ。友達にくらいなんてあるのか? あれか、休日に遊ぶとかそう言う話か? だったら、少なくとも今はできないだろ。
……こうやって考えていたら、別に普段通りでいいんだなってわかってきた。……なるほど、伊久留はそれが分かっていたから、断ったのか。
「はぁ……」
俺は無駄に疲労してため息をつく。伊久留はと言うと、俺のほうになど目もくれずに本を読んでいた。
俺はそれを眺めた後、もう一度ため息をついた。
その後は、特にやることもなくボーっとして過ごした。その中では静かにページをめくる音だけが響いていた。