表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

96/130

一年生 6月-1

 今日は、いつになく学校が騒がしかった。

 理由はわかっている。テストだ。


 6月になり、前期中間テストが行われた。そのせいもあって、最近はどちらかというと静かだったが、それが終わり、さらにテストの返却も終わってみんな、解放的になっていたのだ。

 まぁ、中には、赤点を取って憂鬱な気分に浸っているやつもいたが……。大半は喜びと嬉しさだ。

 それに、テストが終わって部活が再開するということで、張り切っているものも多い。


 そういう俺は……もとい俺と伊久留は、テストが終わったので、久々に部室に集まった。別にテスト前だからって、こ子での活動は休む必要はないと思ったが、伊久留がそう言ったので従った。一緒にテスト勉強するというのも考えたが、人によっては一人のほうが集中できるし、伊久留はそう言う事だろうと、詮索もしなかった。


 まぁ、活動が減った代わりに、俺はあきなちゃん(12)のことを見守ったりすることができたしな。

 そんな俺のテスト結果だが、60点から80点のあたり。平均で70点台と言ったところだ。この学校的にも順位を見ると、平均より少しいいくらいだった。初めてのテストでどうなるか不安に思っていたところもあったが、俺はこんなものか。


「伊久留はどうだったんだ?」


 俺が聞くと、伊久留は鞄を指さす。勝手にみろと言う事らしい。

 俺はそれに従って、テストを取り出す。


「うわ……お前ってあんまり成績良くないんだな」


 そうして目に入ってきたのは、ほとんどが40点台。よくても50点台とかだった。

 どっちかと言えば、頭は良さそうなイメージだったが。意外だ。だが、赤点はないようだからマシなのか。伊久留もさして気にした様子ではないし。本を読んでる。

 と、それはそうと……。


「これからどうする?」


 俺が伊久留に声をかけると、顔を上げる。俺は続けて話す。


「いや、テストも終わってひと段落したけどさ。同時に思うんだけど、俺たちも一通りは思いつく中でやれることは済ませたじゃないか」


 それなりに色々と遊んできたし、友達らしくなれた……と思っている。言うなれば、友達中級者くらいにはなったはずだ。

 だからこそ、俺たちは新しく何かするべきではと思ったのだ。

 俺はそのことを伝えると、伊久留は――


「……別にいい」

「え、えぇー……」


 全然乗り気じゃなかった。つーか、視線が既に下がって本を読み始めてる。

 っぐ! 何故だ。伊久留だって、俺が初めての友達とかでそれなりに浮かれていたじゃないか。それなのに、どうしてこの話を拒否するんだ。


 実はあれか。友達になったことを後悔している感じか? 「もうあんたとは付き合ってられんわー!」って感じか? もう仲良くはなりたくないと。そう思っているのは俺だけだという事か?


 いやいや、そんなはずはない。俺たちはちゃんと通じ合ったはずだ。友達としても部活の仲間としても。理由は知らないが、ここは押し切らせてもらう。


「な、なぁそんなこと言わずにさ。何かやろうぜ?」


 俺はそうやってしつこく話しかける。すると、集中がそがれたのか顔を上げ、俺に聞いてきた。


「じゃあ、新しいことってなに?」

「え? いや、それは今から考える……」

「決まったら言って」


 そうとだけ答えると、また本に視線を戻してしまった。……って!


「ええ!? いや、これは一緒に話し合おうって部分じゃ……!」

「……めんどう」

「……さいですか」


 その答えに俺のほうが勢いを削がれた。だが、このままじゃ俺の気が収まらない。ずっともやもやとしたままだ。

 くそ~……だったら俺一人で考えてやる。それだったら、別にいいみたいだしな。

 よし、まずは今までにやってきたことを思い返してみよう。そこから次へのステップアップには何が必要か考えるんだ。


 やったのは自己紹介と質問があったな。質問とかだったら今だからこそ、聞いてみたいことってあるだろうし……いや、こんなの普通に聞けばいいや。もう今更だ。改まってやる必要性はないな。

 後は……しりとりとか。普通だな。シミュレーションなんてのもやった。またやってもいい……いや、ダメだ。あれは絶対ダメだ。なんかおかしい雰囲気になる。


 他にもやったのはいくつかあるが、これらを踏まえた上でどうするかだな。

 ……うん。わからん。まず自分で言った言葉だが、友達中級者ってなんだ。むしろ、初心者と中級者って何が違うんだ。友達にくらいなんてあるのか? あれか、休日に遊ぶとかそう言う話か? だったら、少なくとも今はできないだろ。


 ……こうやって考えていたら、別に普段通りでいいんだなってわかってきた。……なるほど、伊久留はそれが分かっていたから、断ったのか。


「はぁ……」


 俺は無駄に疲労してため息をつく。伊久留はと言うと、俺のほうになど目もくれずに本を読んでいた。

 俺はそれを眺めた後、もう一度ため息をついた。

 その後は、特にやることもなくボーっとして過ごした。その中では静かにページをめくる音だけが響いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ