表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

91/130

12-5 昨日の出来事と群司の真意

「……ん? なんだこれ?」


 熱海群司は自分のPCのメールを確認し、疑問の声を上げる。


「島抜……巧人?」


 見慣れない相手の名前をみて、その内容に目を向ける。

 そうして一通り読み終えて、男はため息をつく。


「……はぁ、なるほど」


 状況は理解した。つまりこれは――


(めぐるの仕業だな)


 熱海巡こと彼の妹は、このあかりというアイドルのことを応援していた。

 それに、勝手に自分のPCを使っているときがあったのも知っている。前に見つけて、叱ってはいるが、その程度で反省するたまではなかったか。


(とにかく、この巧人という相手も必死なようだし。巡を怒るのは後にしてまずは、話をするか)


 男は立ち上がると、巡の部屋へと向かう。


「お~い? 巡?」


 ドアをノックして、そう聞いた後、間髪入れずに扉を開く。

 巡はベッドの上に寝っ転がって、ゲームをしていた。

 巡は群司を気にする様子もなく、ゲームをしながら聞く。


「なに~? お兄ちゃん? ごはん?」

「それはまだ」

「じゃあなに? 今日のサバゲーで勝ったっていう自慢話? 私聞きたくないよ」


(む、先に止められてしまった)


 前に超接戦したときの話をしてから、一切聞いてくれなくなった。あの名勝負を話すのに熱が入り過ぎたからか。それは残念ではあるが、今はそれは関係ない。

 群司は、さきほどのことを話す。


「さっき、島抜巧人という人からメールが来た」

「へ、へー……そ、それがどうしたの?」


 体を全身ビクッとさせて、動揺したような棒読みで返事をする。


(隠すのヘタだな)


 群司はそう思いつつ、さっさと本題に移る。


「本当は分かってるだろ。そいつはお前の知り合いだろ? 相談に乗ってほしいとさ」

「相談? ってなに?」

「あかりというアイドルと知り合いになって、連絡先もらったけど未だ返信してなく、俺はどうすればいいのか、だそうだ」

「ええ!? あのあかりちゃんと知り合いになっちゃったの!?」


 ついに、巡はゲームから顔を外し、こちらを振り返る。

 ようやくまともな会話ができる。そう思ったが、巡は落ち込んだように顔を伏せ呟く。


「うぅ……あかりちゃんが相手じゃ勝てない」


 一体何の勝負だと思ったが群司はすぐに理解する。

 そして理解したからこそ、群司はそこには触れずに、「それで?」とたずねる。


「どうするんだ? 相談に乗るんだろ?」

「それはもちろんだよ! けど……」


 一度上げた顔を再び元気なく俯かせる。


「私に何ができるのかな……?」


 巡は呟くが、それは群司には答えることはできない。いや、元々それはこちらに聞いたものではない。自分自身に確かめるためのものだ。

 群司はただ巡を見守り続けた。そして、数十秒経って巡は答える。


「私もちゃんと考えたいから。返事は一日待ってて」

「わかったよ。……けど、俺のPCを勝手に使うなよ」

「……ごめんなさい」


 巡がそう謝ったところで群司は、もう一度だけ念を押して、「じゃあこれは明日な」と言い残し、部屋を出ていった。

 巡は群司が消えて改めて、思い返す。


「巧人さん……」


 あかりちゃんと知り合いになったことは本当に驚いたけど、そのことを連絡してくるなんて。連絡くらいならすればいいのに。……でも、あの人ならではの悩みだよね。


(超がつくほどに極度のロリコンさんだもん)


*****


 そして、次の日。昼頃になって、群司のほうから巡に話しかけた。現在は、群司の部屋でPCの前に二人して向かっている。


「う~ん……」


 巡は、どう返すのかでまだ悩んでいた。

 一日という時間をもらいはしたが、元々こういうことには慣れてない。今回は真面目な話になる。いつものように冗談でおちゃらけたり、ヘタなことは言えないのだ。

 だからこそ、内容は難航している。


「やっぱりここは、少しふざけた感じでいったほうが……」

「……いや、これはマズいだろ。もう少し気を遣えよ」


 適当にタイピングした文章を横から見ていた群司は注意する。


『うぉい! 責任転嫁じゃんか! こっちかんけーねーよw。とりあえず、相談自体は乗ってやるけど、もうちょいkwsk事情を話せ』


 確かに、もう少し言い方があるかも。そう考え直して、巡は頭を悩ませる。

 そうしている巡と、その一度書かれたメールを見て、群司は少しだけ投やりに言った。


「というか、これだと何度もメールを往復させないといけないよな? それだったらもう、面倒だし。直接会って話をしたほうがいいんじゃないか?」

「え……ええ!?」


 予想外の提案に、驚きの声を上げる。


(そんな、会うだなんて……無理!)


 緊張を通り越して、心臓が止まっちゃうよ。


「なんだよ。会ったことないのか? 近所に住んでるんだろ? それに、巡は住所も知っているんだろ?」

「え、いや私はあるけど……あっちは知らないっていうか」


 あっちには住所もなにも教えてないし。

 それに、私は遠くから眺めてるだけで満足なんだから。

 群司はあたふたとする巡をみて、決める。


「やっぱり直接会ったほうがいいな」


 そう言うと、おもむろにPCを巡から奪って、タイピングを始める。


「メールする」

「え! ちょ、ちょっと! 勝手に!」

「巡も勝手に使っただろ、おあいこだ」


 群司はそうとだけ返して、必死に阻止しようする巡を無視し、『今から会えないか?』という簡素な内容で送信した。


「あー! なんてことするの! 私知らないよ!」


 そんなことを言って怒ったようにするが、部屋からはいなくなりもせず、横目でこっちを見ている。気にしているのがまるわかりだ。


「……お? 連絡が来たぞ。『別にいいけど』だってさ」

「し、知らないよ! お兄ちゃんがやったことなんだから!」

「じゃあ次は待ち合わせ場所の指定かな? え~っと」


 そうして考える群司に巡は焦った様子で答える。


「わ、私行かないよ! お兄ちゃんが代わりに行ってよ!」

「なんでだよ。お前の知り合いだろ? お前が助けなくてどうするんだ」

「だから、それは会わなくてもできるじゃん!」

「でも、会うってことになったしな」

「だったら、一通り話だけ聞いてきてよ! そうしたら、考えるって言って、またあとでメールするなりすればいいんだから」


 一応、悪くない手ではある。けど、それを受け入れるべきかどうかが問題だ。

 群司としては、巡自身に解決させてあげたいものではある。そして、それは今言った案でも実現することができる。

 だが、果たしてそれでいいのか。実際に巡が会うことのほうが、いいに決まっているし、そうするべきだ。


(でも、それは人それぞれか)


 俺はそう思うが、巡は違う。大事な気持ちだからこそ……特別だからこそ、できないこと。それが巡の考えた結果なら、今はそれに従うか。


(それに、巡が気に入った相手とはいえ、俺は会ったことがないしな)


 ちゃんと、相手のことを知っておきたい。

 それは巡の家族として、兄として。

 心配する気持ちと、巡の選んだ相手のことを知り認めたい気持ちの二つ。

 だから群司は巡の言葉に頷いた。


「わかった」

「ホント? じゃあお願いね、お兄ちゃん!」


 巡は笑う。……やはり、そうでなくてはな。大切なのは、お前自身の心だから。


*****


「えっと……あ、あれが巧人さんだよ!」


 巡は人物を見つけると、指をさして伝えてくる。

 群司がその方向を見ると、そこには高校生くらいの男がいた。ロリコンなどというし、思ったよりも若いことに少々驚く。見た目としては、普通だ。好青年といったところか。


(って、俺が言えた義理じゃないか)


 俺のほうがいわゆるキモオタなどと言われるような見た目だ。

 それを自分でもわかっている。そんな俺が、人を見た目で判断してはいけない。

 群司は、気持ちを改め、巡にこれからについて伝える。


「そうか、わかった。じゃあ巡は適当に隠れて後をついてくるか、もしくは俺の連絡を待ってなさい」

「お兄ちゃん、巧人さんに失礼なことしちゃダメだよ!」


 後ろから巡の声援(?)を受けつつ、群司は巧人の元へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ