11-5 突然の終わりと始まり
(俺はアホか)
ファミレスを出てすぐに、冷静になって頭を抱える。
何やってんだ。カップルって思われたくなかったはずなのに、なんでそうとしか思われないような言動をしてきたんだよ。
いや、あの状況下で俺は気にすることなく過ごせたのだから、ある意味ではいいが。
こうやって思い出すたびに、すごく恥ずかしい。これもそれも全部、あのダーティ&ガービッジという汚いごみたちのせいだ。お前らのことは死ぬまで忘れぬぞ。それまで恨み続けてやる。
「ふ~ふふふん♪」
まぁ、唯愛はこんな感じですごいご機嫌なのが、せめてもの救いだな。このために頑張ったと思えば、まだ救われる。
……よし、あれは今は忘れよう。
「それで、どこに行くんだ?」
「えっとね……」
俺がたずねると、唯愛は考え込む。今になると、「こうやって悩むのも楽しいことなのかな?」と思うようになった。
唯愛も考えているとき、笑っているし。俺のほうもそんな唯愛を見ていて、なんだが心が温かい。
そうやってしばらくいると、唯愛の鞄の中からなにやら音が聞こえてきた。これは……ケータイか?
「あ、ごめん。たっくん」
そう言って、唯愛は予想通りケータイを取り出し、画面を見た。
「え!?」
唯愛は届いたのであろうメールを確認して、小さく声をあげる。そして、すぐに表情が暗くなり、悲しそうな顔をした。
俺は不思議になって声をかける。
「どうしたんだ?」
唯愛は視線を俺に変えると、申し訳なさそうに言った。
「ごめん、たっくん。なんか生徒会の仕事で、今から学校行かないといけなくなった……」
「え? 日曜なのにか?」
「ごめんね? たっくん。私から誘ったのに……」
そうして俯く。語尾も小さくなって、元気がない。……それもそうか。唯愛は俺に謝ったけど、何より楽しみにしていたのは唯愛自身だ。それが途中で終わってしまったんだから、悲しいに決まっている。
俺は唯愛の肩に手をかけて、顔を上げさせる。
「いいよ、それより急なんだろ? 早く行きなよ、唯愛姉」
俺が優しく言うと、泣きそうだった顔は明るくなって
「うん!」
と頷いた。
「たっくん。今日は本当に楽しかったよ! ありがとう!」
そう言い残して、走り出していく唯愛に、俺は手を振って見送った。
(本当に大変だな、唯愛は)
生徒会の会長だもんな。何をやっているのかはよくわからないけど、生徒のために頑張ってるんだろうな。
最後に笑ったのも、その仕事自体が嫌だったわけじゃないからだ。あいつにとって生徒会の仕事は、やりがいがあって、人の為になることをして、嬉しく思っている。
そういう優しいやつで……それは、俺とを天秤にかけるようなことじゃない。あいつにとっては、それだけ大事なことだ。
(また日を改めて……ってくらい言えばよかったな)
唯愛に非はないし。まぁ、帰ってきたときに言うか……もしくは、俺のほうから誘えばいいか。
……うん、俺のほうから誘うか。きっと、そっちのほうが唯愛も喜ぶ。
(さて……と、どうするかな、これから)
唯愛もいなくなったし。やることなんてなくなった。
……家に帰ってゆっくりでもするかな?
そう考えていた時、俺のケータイが震えた。俺のほうにメールが届いたようだ。
「……『at_me』?」
なんであいつから……ってそうだ。昨日、俺があいつにメールを送ったんだ。その返信ってことか。
そう思って、文面に目を通していく。
「……え? 今から会えないか?」