表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

70/130

9-4 邪魔者関羽

「どうしてお前がいるんだよ、関羽……」


 利莉花に連れられて向かったその家につき、発した俺の第一声がそれだった。

 そいつはなぜか、玄関から見えた中庭にいた。


「あれ? 巧に、リリー? そっちこそどうして……」


 俺の言葉に、視線を向けて疑問に思って関羽は聞き返してくる。

 そんな関羽に、俺は心から湧き起こるその気持ちをそのまま言葉にした。


「とりあえず、死んどけ、アホ」

「はぁ!? なんでいきなりお前に罵倒されなきゃなんねーんだよ!」


 折角、利莉花と二人きりという貴重な機会で、それにすごくいい雰囲気だったのに。

 お前のせいで台無しだ。最低なやつめ。あ、そういえば思い出したぞ。


「おい、関羽まずは殴らせろ」

「だから、なんでいきなりお前に殴られたりしなきゃなんねーんだって!」

「次にあったら、殴るって決めてたんだよ。いいから大人しく殴られろ。男らしくな」

「意味もわからずに殴られるやつは、男じゃねーだろ! 馬鹿だろそいつは!」

「だったら尚更だろ。お前馬鹿だし」

「あぁ!? てめー! いい加減しろよ!」


 ふぅ……まぁ少しは気も晴れた。このくらいで勘弁してやろう。利莉花の件はな。

 利莉花は俺と関羽のやり取りに苦笑いしながら、たずねる。


「それで、関羽さんはどうしてここにいるんですか?」


 あ、利莉花が敬語に戻ってしまった。そうか関羽がいるからな。ため口で話す利莉花はまだまだ貴重なんだぞ。条件が条件だし。

 まぁ、現状俺以外の前では見せてほしくない姿だから、関羽の前で出してないのはいいけど。だったらこいつがいなければいいだけの話だ。やっぱり邪魔だな。関羽。


「俺は、紀美恵さん(36)のところに来ただけだぜ」


 なるほど、いつもの行動と同じか。けど――


「へーお前にしては若いな」


 関羽ってもう少し上で40代くらいからが、ストライクだったはずだけど。まぁ、俺からすれば、みんな等しくおばさんだけど。


「ふ、俺はぐちゅぐちゅに熟れた果実も好きだが、熟れ始めも大好物だぜ?」

「へー……」

「なんつーかな。見守る喜びっつーか、自分が育てあげる喜びっつーか、この年にはこの年ならでは、楽しみかたってもんがあるんだぜ?」

「あー……」


 興味なさそうに、返事をする。というか、興味ない。

 ただその言い分だと、何歳のやつが相手でも当てはめれるよな。つまり、20代や10代のやつ相手にも、そのうち……。そこまで行ったら、変態に磨きがかかってもう誰にも止めらないな。


「ところで、利莉花。その紀美恵さんとやらは、独身なのか?」

「いえ、小学生の子供と中学生の子供が一人ずつ、いたはずですが」

「何!? 小学生だと!」

「まぁ、そう反応されましても、今日は私たちは以外の学生は普通に登校日ですから、いませんよ?」


 は、そうだった。てか、思わず反応したけど、会えなくて逆によかったんだった。ロリコンに戻るよりも先に、会わないって決めてたんだから。……既に二回も破ったけどね! 三度目の正直だから!


「てか、また人妻かよ。お前、NTRはやめろとあれほど……」

「おい、だから寝取ってねーってば! ただ、日頃のストレス発散に付き合ってあげてるだけだ! 主に性的にではあるが!」


 それがまずいんだろうに。


「大体、今日は本当にそーゆ―んじゃねーんだよ」


 関羽は少しトーンを落として、呟くように言った。

 俺はその言葉に疑問に思い、聞こうとしたところで、玄関の扉が開いた。


「あ、利莉花ちゃん? こんにちは」

「はい、こんにちは」


 利莉花は挨拶をする。どうやら、この人が紀美恵さんらしいな。見た感じ、人が良さそうだし、利莉花が猫を任せたのも何となくわかる。優しそうな人で、俺のほうもちょっと安心した。

 紀美恵さんは俺を見ると、利莉花に尋ねる。


「えっと……そちらは?」

「あ、私の友達です。猫の世話をしていた時にも手伝ってもらってて」

「どうも。島抜巧人です」


 紹介されてお辞儀をする。まぁ、手伝いなんて何もしてないけど、そこを否定していたら話が進まないし、余計なことは言わないでおこう。


「そうなんですか。私は綺羅瀬きらせ紀美恵といいます」

「まぁ、こんところでは何ですから、一度中に入りましょう」

「そうですね、関羽さん。ではどうぞ上がってください」


 関羽に促され、紀美恵さんは俺たちを家に中に招く。

 ……なんだこの関羽。違和感バリバリだぞ。


 確かに、おばさんと話してる時はこんな感じだったけど……気遣いができるやつだなんて……そんなのもう関羽じゃねーよ。こいつは空気が読めないおちゃらけたキャラだろ。どうした関羽。無理してるのか? それとも頭でもぶったか? それにさっきの言葉も気になるし……。後で聞いてみるか。

 俺は関羽への疑問をさらに強めた状態のまま、中に入っていった。


*****


「わー……久しぶりだね、ネコさん!」


 案内されてリビングに入ったところで、猫を見つけて利莉花はさっと寄って行った。そうして、嬉しそうに背中を撫でまわしていた。猫のほうも特に嫌がる様子もなく、されるがままに任せていた。


 それを見ていると、なんていうかほっこりとしてきた。微笑ましいなぁ……。この光景を眺めながら、あったかいお茶をずずっとすすりたい。そんなおじさんくさいことをやりたくなってくるほどだ。


「この子の名前ってどうされたんですか?」

「ミリーっていうの。娘がつけたのよ」

「へぇ……ミリーちゃ~ん」


 利莉花は名前を呼びながら、また背中を撫でまわす。というかメスだったのか。いや、オスでもちゃんとか言う人もいるか。まぁでも、今回はたぶんメスだな。


「そう言えば、娘さんたちはどうですか?」

「どっちも元気にしてるわ。下の子なんて、家に帰ってくるとずっとミリーと遊んでいるわ」

「そうですか。ちゃんと喜んでもらえているようでよかったです。ミリーちゃんもよかったね~」


 そんな風に、利莉花と紀美恵さんは色々と話をしていく。それを離れた場所から眺めていると、関羽が話しかけてきた。


「んで、なんで巧はリリーと一緒に居んだ?」

「それより、あれいいのか? 紀美恵さんは放っておいて」

「はっ! 何言うんだよ。あの中に入って、邪魔するわけにはいかねーだろ」

「でも、相手は利莉花だぞ? 百合だぞ?」

「あ……。え、リリーってそんな上のほうまで大丈夫なのか?」

「さぁ? 知らないけど」


 首を振った後、利莉花に視線を向けてみる。


「……やべーな。さっきまでは微笑ましく見えてたってーのに、突然百合っぽく感じてきやがった」

「そうか」


 俺には普通に、微笑ましいままだが。普通に冗談だし。


「ま……まぁ、俺は別に気にしねーけどな! 元々相手のこと考えたうえでの関係だし!」


 何を一人で強がってるんだ。馬鹿か? いや、馬鹿だったな。


「ふぅ……で、なんで二人でいたんだよ?」


 っち、忘れてなかったか。


「関羽には言いたくないな」

「はぁ? なんでだよ?」

「だってお前って口軽いし」

「おいおい。つーことは、他人に言ってほしくねー内容ってことか?」


 怪しんだ視線を向けてくる。ちょっとにやついているところがまたウザったい。


「少なくとも、透とかには聞かせられないだろ? 休日に二人きりなんて」

「あ~……まぁな。峰内にんなものを聞かれたら、俺も~って、なるんだろうな」

「ああ。というわけで、知りたいなら最低でも透に言わないと約束できるならいいだろう」

「その程度でいいなら、全然約束するぜ! 早く話せよ!」


 そう言って関羽は急かしてくる。こいつって、なんでも気になるタイプだよな。前も、仕方なく教えてやったことってあるし。

 まぁ、それはいい。話すならさっさと話すか。じゃないとうるさそうだし。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ