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1-2 現れる変態たち――姉

「……ふぅ」


 家の中に入っていくのを見届けて、喜びの溜息を吐く。やっぱりいいなぁ~……さよちゃん(10)。可愛いわ~。

 いや~これでみんなを異常性欲の持ち主達から守れて、俺も目の保養になって、一石二鳥だな。なんて最高なことだろう。

 こんな日々を送れる俺は、とても幸せな人間だな。

 俺はふと、腕時計に目を向ける。


「おっと、もうこんな時間か」


 よく見ると、辺りはもう真っ暗じゃないか。集中しすぎて全然気づかなかったぜ。

 こういうことが俺には多々ある。だから俺は、時間を気にするようにした。腕時計をして、時間を確認するという動作を、無意識で癖として行う。そうすることで、夢中になると時間を忘れるということの歯止めとなる。


 今のでも、相当ダメだろと思うかもしれないが俺の元はこんなものではない。比較することさえ、おこがましいレベルだ。例えば、昔ゲームにはまってやっていたら、一週間立っていたことがある。これは、突然倒れて体が悲鳴を上げていると気づいたが、そうでなければ続けていたことだろう。

 といっても、これもまだ序の口だ。俺にはもっと、冗談じゃ済まないほど危険な状態になったことがある。これでは、身体的にも精神的にも悪いため、この癖をつけるというのは必然だったといえるだろう。


「さて俺も家に帰るとするか」


 早く帰らないと親がうるさいからな。よく漫画やアニメにあるような親が海外出張で~とか、旅行に行って~とかあるが、そんなものは現実にあるはずもない。それはそれで自由でいいけど、そうなったら毎日の食事とか洗濯とか、掃除とか大変だし面倒だしな。あったらあったらで、困るものだ。まぁ、家事全般ができる妹でもいれば別だが。まず妹がいないからな。


 ほしかったな~俺も。おにいちゃんって言われてみてーよ。くそぅ~今からでもヤってくれないかな。俺の親。応援するんだけど。

 つっても、もう俺も十七歳だし、二人もきついか。いや、あの二人なら或いは……と、そんなこと考えている場合じゃなかったな。


「家に帰って、今日の分の写真を整理しないとな!!」


 俺はうきうきとした気持ちで、家へと帰って行った。


*****


「はぁはぁはぁ……やべぇ……これはまじでやべぇ……」


 写真整理も終わり、俺は自分の部屋で、パソコンに向いながら、前屈みで呟く。

 俺は今、ネットで一つの画像を見ていた。俺の今の状況もこの画像から来ている。と言っても、エロ画像じゃない。そんなもので俺は興奮しない。エロリ画像なら興奮するだろうが。


 今俺が見ているのは、最近、巷で話題になっているあかりちゃん。本名、仙光院せんこういんあかり。

 清純派アイドルとして売っている小学5年生、11歳。

 好きなものは、猫。嫌いなものは怖いもの。今付き合っていう人は、秘密とされている優しい女の子。その笑顔は太陽さえも目をつぶり、まさに天使というにふさしい。

 俺が見ているのはそのあかりちゃんの画像。写真の中の部屋は、ピンク色でまみれていて、ぬいぐるみなどか可愛らしいもので溢れていた。まさに、あかりちゃんのイメージに相応しい。


 そのあかりちゃんが、ベッドの上で、何か白い液体に塗れ、戸惑いながらも、はにかんでいた。その表情……俺の劣情をくすぐる。狙っているのは分かるが、それが分かっていて、なおそれでもいいと思える。

 小学校のれいかちゃん(8)やねねちゃん(8)もいいけど、あかりちゃんと比べると、どうしても霞んでしまうな。これがアイドルの力ってやつか。つっても、実際に会ったことがあるかないかの差で、まだせいらちゃん(9)達のほうが勝っているが。

 すぐに会えるのか、会えないのかの差がある。そこで、みんなのほうがいいと思う気持ちが出てきているんだろう。


 けれどそれでいい。絶対に届かない、高嶺の花。所詮、俺とでは住む世界が違う。だけどだからこそ、憧れとして俺の中で存在が昇華されるんだ。

 おっと、魅入り過ぎて、俺のリビドーが我慢できないって騒いでるぜ。よし、んじゃ、ここらで一発……


「たっくん、いる~?」


 と言いながら、俺の部屋の扉が開かれた。

 ここで説明しておこう。部屋の扉、俺、パソコンと位置関係はなっている。これで察しはつくだろう? 部屋に入ってきた人間にはパソコンの画面が丸見えなのだ。

 普通の人間ならここで画面を隠すところなのだろうが、俺は隠すこともせずに、一回溜息をはいた後、睨みつけるように後ろを向いた。俺の名前……島抜しまぬき巧人たくとをあんなふうに呼ぶのはあいつしかいない。


「なんだよ! 勝手に入ってくるなよ! びっくりするだろが!」

「まぁまぁ、姉弟でしょ。怒らな~いの」


 うぜぇ……。


「あ! またこんなもの見て!」


 そう言って画面を覗き込んでくる。

 こいつは、俺の実の姉だが、俺はこいつのことが嫌いだ。と言うのも――


「こんなもの見なくても私が見せてあげるのに……もっと恥ずかしいと・こ・ろ」


 後ろから抱き着いて、耳元で囁き、胸を押しつけてくる。


「やめろ変なもの押し付けるな。このブラコン!」


 俺は唯愛ゆいあを引き離す。

 そう。この姉は変態なのだ。実の弟であるこの俺が好きで好きで堪らないらしい。俺にはまったく理解できないが……。

 俺のタイプは、正反対だ。こんな、大人びたボン、キュ、ボンな人じゃない。


 俺だって別に、姉がいるのはいい。放っておいてくれるならいいんだ。

 けどこいつは構ってくる。うざい。この思春期の複雑な時期にだ。普通、放っておくだろ? そういうもんだろ?


「ぶぅ……分かってるの? そういう子供に手をだしたら犯罪なんだよ? いけないんだよ? だから、たっくんはお姉ちゃんにその欲望をぶつけるの。私ならそのすべて……受け止めてあげるから!」


 はぁはぁ……と息を荒げて、言い寄って来る。なんだこいつ。気持ち悪いな。まったく、俺はこんなに紳士なのに。なんで、この姉は淑女とは程遠い人間なんだ。


「近親相姦も立派な犯罪だろうが」

「残念だね。双方の合意があればOKなんだよ! だから……ね? しよ?」

「…………」


 あ~あ、こいつのグラマラスボディのせいで萎えちまったな。心も体も。


「はやくどっかいけよ。邪魔だから」

「この私の体を見て何にも思わないなんて……末期だよ! 分かった! 今すぐに私が道を踏み外してしまったたっくんを救い出してあげる!」

「弟を好きになった時点で、お前のほうが道を踏み外しているからな。自分は普通みたいなこと言うな」

「愛さえあれば関係ないもん!」


 お前のほうが末期じゃないか。俺はもう呆れて、パソコンに画面を向け直す。


「たっくん! そんなの見ないで、私を見て! たっくんにはお姉ちゃんがいるでしょ!」

「俺は妹が欲しかった」

「じゃあ、お兄ちゃんって呼んであげるから!」

「やめろ。気持ち悪い。俺の妹像を崩すな。壊すな」


 そして、あげるという上から目線なのも気に食わん。


「そんなこと言わないでよ……私は、ただたっくんに喜んでもらいたくて……」

「余計なお世話だ……おお、これもなかなか」


 無視して画面に目を向ける。


「うぅ……」


 そうしていると、唯愛は唸りを上げる。画面に反射した姉の顔は、涙目になっていた。……あ、また微妙に硬度が低く……。


「もう! たっくんなんて知らない! たっくんなんて大嫌いなんだから!」


 捨て台詞を吐いて、部屋を出ていった。

 ……本当にそうなってくれるなら、嬉しいのになぁ……。

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