9-1 風呂場での暴走
「あ~~……酷い目にあった……」
俺は自分の部屋でベッドの上に座り、ため息まじりに呟いた。そうして思い出されるついさっき起こった出来事。
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「はぁ……たっくんの素肌……」
唯愛はそう言って、俺のお腹に顔をこすりつけるように押し付けてくる。場所は風呂。何故か流れで、唯愛と一緒に風呂に入った。
ここで思い出してほしい。俺は高校二年生。唯愛は一つ上の高校三年生。この歳になっても、仲のいい姉弟であれば風呂は一緒に入ったりする人もいるようだが、そんなことは俺たちにはない。それは恥ずかしいからとか思春期的発想に基づくものではなく、単純に身の危険を感じた嫌悪感からだ。
あの唯愛と風呂――つまり裸で一緒にいるとか、想像しただけで何が起こるのか一瞬で理解できる。
それに、現状の俺はとてもまずい。普段なら大丈夫でも今の俺はダメだ。こんな姉に体が反応してしまっている。この腰に巻いているタオルをとったら、えらい、はりきり☆ボーイが姿を現すことだろう。どうにか死守しないと。
「ねぇ……たっくん。それじゃあさっそく体を洗おうか?」
なにが早速だ。5分も顔をこすりつけてきたくせに。やっとの間違いだろう。
「それでさ、たっくん。体を洗うのにそのタオルは邪魔じゃないかな? ねぇ?」
「別に」
「でも、それだと、たっくんのたっくんを洗えないよ!」
「洗わなければいい」
「なにを言っているの! そこに一番汚れがたまっているんだよ! 念入りに洗わないと駄目だよ!」
おかしいな。確か最初は、『たっくんについた他の女の匂いを取る』って名目だったはずなのに。いや、おかしいのはすでにその発想か。
「自分で洗うから」
「いや! 私が洗う!」
なんか、面倒な言い争いになりそうだからこれ以上はやめよう。
「大体、たっくんだけずるいよ! 私は何も身に着けてなんてないでしょ!」
確かに。こいつは何もつけてない。だから全部丸見えだな。
「お前は恥じらいを持て」
「ほら日本には古来より、裸の付き合いというものが――」
お前のはエロい意味でにしか聞こえない。
「とにかく! もう問答無用!」
そう言うと唯愛はボディーソープを手に取ると自分の全身に塗りたくり、泡立てた。……おい待て。
「お前、まさか……」
「っん……」
俺が言い終わるよりも前に、唯愛は俺の膝に正面に乗り、抱きしめた。
そうして押し付けられる唯愛の豊満な胸。俺のとある一部分がタオル越しにびくんとはねる。それに唯愛は頬を赤らめる。
「じゃあ、動くね」
俺に聞きはするが、返事も待たずに始め、体を上下に動かして、こすりつけてくる。そうすると、胸の柔らかな弾力が伝わってきた。
「っん……はぁ……」
しかも唯愛は艶めかしい声を小さく漏らして……まるで対面座位のようだ。勢いに押され、それにこの気持ちよさに流され止めることもできず。しばらく繰り返していると、俺のモノに柔らかな感触が当たる。
「あっ……すごいよ。たっくんの」
唯愛は動きを止めると、右手を後ろ手に回し、その部分へと伸ばす。
「タオルの上からでも感じるよ。たっくんのたぎった熱の鼓動を」
さすさすっと、ゆっくりと撫でまわす。その小さな刺激が逆に心地よく、さらに熱を帯びていく。そんな俺の反応に唯愛は嬉しそうに、動きを早めていった。
「……おい、さすがにやめろ、唯愛。冗談が過ぎるぞ」
少しきつめにそう言うが、この状態での言葉。さして気にした様子もなく、唯愛は答える。
「そんなこと言っても、これじゃ説得力ないよ? それに今まで止めなかったのもたっくんだよ?」
「っく……それは」
「いいじゃない。たっくん。今は私で反応しちゃうんでしょ? だったら、その欲望に身を任せようよ」
確かに、俺は今ロリコンじゃないわけで、この反応だってあくまでも俺の気持ちは関係ないが……。
「それに、私でこんな風になってしまったのなら、これは責任をもって私が処理しないと……ね?」
「な!? ば、馬鹿!」
俺は止めようとするが、それよりも先に唯愛はその手をタオルの中に入れてきた。
「うわぁ……直に触るともっと熱いね。それにすごく固い……」
「うっつぁ……」
これが……他の人に触られる感覚? なんだこれ? 自分でするのとは比べ物にならないほど……気持ちいい!
くそ、相手は唯愛だって言うのに、どういうことだ! これは!
「大丈夫だよ。たっくん。ちゃんとやるからね」
唯愛はそうささやくと、ゆっくりと扱き始めた。その細くしなやかな指が俺に絡みついてきて、さっき以上の快感にびくびくと反応する。
(うっ……早く止めないと……)
止めないとと思うが、それができない。唯愛の言っていた通り、俺は今までに味わったことのないこの感覚に、酔いしれていた。この快感を手放したくないとそう思った。
けれど、終わりは訪れる。下半身から例のアレがこみ上げてきた。それと同時に、ふわふわと漂っていた思考が、現実に戻り、事態の深刻さに気づいた。
「っく!? 唯愛、そろそろ本当にやめろって!」
「いいんだよ、たっくん。そのまま……そのまま出してもいいから! 私が受け止めてあげるから!」
唯愛は興奮した様子で動きを早めてくる。
(まずい! このままじゃ……! こうなったら力ずくで!)
そう考えて、唯愛をどかそうとするが、力が入らない。それもそうだ。発射までのカウントダウンが聞こえてきそうなくらいの時に、力なんてそうそう入るわけがない。それに唯愛の体自体は俺に密着していて、掴む場所がなく、引き離しづらい。
それらの理由により、俺は唯愛のなすがままに任せるしかなかった。そして――
「あ……もう、で……ぐっ!?」
そのまま募っていった快楽から……俺は果てた。
「きゃ!」
突然のことに唯愛は小さく悲鳴を上げた。驚くのは無理はない。というよりも、俺のほうがもしかしたら驚いている。実際には目の前は唯愛のせいで見えていないが、感覚から察するに、その勢い、量共に今までの比ではない。久々であることを差し引いても、これは異常だ。
唯愛は、悲鳴を上げるも、俺のモノからは手を離しはせず、ぎゅっとその存在を確かめるように握っていた。
すべてを出し終えて後も、びくんびくんと跳ねる。唯愛はそれさえも終わり、小さくなり始めたところでやっと手を離した。
「……すごいよ。たっくん。ドロッてして、エッチな匂い。量も多いね」
唯愛は体を密着状態から少し離すと、自分の手についたその白濁の液を俺に見せるように自分自身の顔の前に持っていく。そして指同士を伸ばしたり、近づけたり、こすり合わせたりして、粘液で遊ぶ。それをうっとりと眺めていた。
俺のほうにも、その独特の匂いが漂ってくる。今、やっと実際にその量をみたが、やはり多い。その粘りを見ても、やはり溜っていたのだろうな。
「んっ……味もすごく濃いよ」
一通り眺めた後、舌をちろっと出してそれをなめとっていく。その扇情的な光景に俺の息子は再び元気に――
(なってたまるか)
「おい……唯愛」
「んー……?」
俺の呼びかけに唯愛は生返事する。きっと、この結果に満足しているんだろう。顔も、どこか気の抜けた感じだ。
だがな、こっちは不本意ながら、吐き出したおかげでちょっとすっきりとした。よって、いわゆる賢者タイムとやらが訪れ、冷静になった。
だから今俺は『姉に反応する変態』ではない。『姉のアホな行動に怒りが沸き起こってくる弟』だ。
「あ、えっと……たっくん?」
さすがの唯愛も、ここまでの俺の雰囲気には気づいたようで、顔を引きつらせ、そう名前を呼んでくる。
俺は睨むように見つめ返して、こう答えた。
「一生俺に触れるな」
「!?」
「さっさと、どけろ」
驚く唯愛をよそに、冷徹な声で突き放す。「あ、うん……」と、少し怯えながらも、離れる。そしてそのまま俺は立ち上がった。
「あの、たっくん……」
「話しかけるな」
トゲを含んだ言葉を投げかける。今はその声を聞くだけで、苛立ってくる。
「俺が甘かったんだな。毎回毎回、お前が落ち込んだ態度を取る度に、慰めるようなこと言って。その結果が今日だろ? まったくもって、自分が情けない」
「うぅ……たっくん、お姉ちゃんが悪かったから……」
「それで反省した記憶が俺には一度もないな。だが、今回は本当にその通りだ。お前が悪いし、やりすぎだ」
「……ごめんなさい」
しょんぼりとして様子で頭を下げる唯愛を横目に、俺は風呂場を出て行った。
「じゃあな」
*****
まさか、あんな姉にイカされることになるとはな。最悪だ。最悪以外の何物でもない。
そして小学生のみんなに対する裏切りにも等しい行為だ。もう顔を合わせられない。いや、まだロリコンに戻ってないし、会うわけにはいかないが。
まぁ、俺のほうも相当酷いことは言ってしまったか。あの時は冷静なようで、怒りだけが先行していたからな。全部本心だけど、それでも限度ってものがある。
「謝ったほうがいいよなぁー……」
でも今すぐってのも考えようだ。またつけあがりそうだし。もう少し反省する時間を設けたいな。
それに、今日ほど怒ったのは、たぶん初めてだ。自分でもちょっとびっくりしてるくらいだ。唯愛のほうも相当堪えてるだろうな。これを機に、しっかり節度ってものを持ってほしいぜ。
そんなことを考えながら、その日は眠りに落ちていった。