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16-9 勝負の後、いつもの終わり

「がーっ! 俺が……俺が負けるなんてー!」


 決勝の試合も終わり少しして、決勝戦仕様にしていた机の配置等を元に戻し(机二つだけを残して、それの周りを囲むようにしてみんなで立って見ていた)、全員が自分の席についたところあたり。

 そこでやっと現実を受け入れた関羽は頭を抱えて机に突っ伏す。


「うるさいぞ関羽。今はそれよりも勝利した伊久留を祝福するべきだろ」


 そして俺は、こちらもまた自分の定位置へと戻っていた伊久留へと目を向ける。他のみんなもつられるように視線を向けると、誰からともなく祝福の言葉をかけた。


「優勝おめでとう! 部長!」

「おめでとうございます! 伊久留ちゃん!」

「ふ……さすが、俺を倒しただけのことはあるな。俺からもおめでとうと言わせてもらおう」


 伊久留は特に反応せずに、読書を続ける。

 俺はふと疑問に思って関羽にたずねる。


「そういや、大会なのに優勝賞品とかないのか?」

「え? あー……そういや、その辺のことなんも考えてなかったな。レアカード! ……は『合成』のカードを持っているくらいだし、俺が持ってんのなんて、部長も持ってるよな」


 まぁ、だろうな。あのカードやプレイングとか見ると、明らかにプレイヤー歴が俺たちとの比じゃないし。


「んー……部長、何か希望ってある? 叶えられるものだったら、なんでも叶えるぜ?」


 そして関羽は考えるのをやめて伊久留に直接聞く。

 まぁ、関羽じゃそんなに良さそうなものも思いつかないだろう。それに、今から考えて変なやつになるよりマシだし。このほうが手っ取り早いか。


 伊久留は関羽の言葉に反応して、ページをめくる手を止めると顔を上げた。そして俺のほうを見てくる。……? なんだ? 俺が関係しているのか?

 そう思ったのだが伊久留は再び、本へと視線を戻して答えた。


「いい。伊久留はみんなとこうして遊べただけで満足」


 その声や表情からは判別しづらい。

 だが、伊久留が本心からそう思っているということは、きっとその場にいる誰もがわかったことだろう。


「私も、こうして伊久留ちゃんの声をいっぱい聞けて大満足です。もう一生分聞いたってくらいですよ!」


 嬉しがってるところ悪いが、それだともう伊久留の声を聞けないってことになるがな。けど、言われてみると今日はずいぶんと喋っていたな。

 まぁ、カードゲームやっているんだし、その特性上当然ではあるか。


 何にしても、現代文化研究部の部活は変わらず、今日もまたいつも通り、みんなで集まって遊んで終わりだな。


 今日の活動内容をまとめるなら……『昨今のゲームにおける心理戦とうまい戦略の立ち回り方について』ってところかな?


 俺はそう心の中で呟きながら、鞄から取り出した日誌にそう記した。

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