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16-8 決勝! 関羽VS伊久留!

 そして決勝。一人は俺と戦い勝った関羽。もう一人は……


「…………」

「まさか、部長が決勝の相手とはな。意外だったぜ」


 そう、関羽の言う通り、決勝に来たのは伊久留だった。

 伊久留はいつも通り、無口無表情で関羽と対峙している。


 しかし5~8のほうの対戦は一切見ていなかったが、まさか伊久留がここまで勝ち進んでいたとは……。

 驚きだな。2回戦の相手は利莉花だったはずだし……。絵夢はそのこぼしていた愚痴からしても、利莉花に圧倒的なまでに負けたようだったし。それに勝ったんだよな。


 でも、その実力は俺含め、関羽には未知数だ。一体どんな試合を見せてくれるのか。見ものだな。


「頑張ってください! 伊久留ちゃん~!」

「そうだそうだ、部長! 完熟なんてぶっ潰せー!」

「うぉい! 部長ばっかじゃなくてだれか俺の応援もしてくれよ!」

「ボクはもう正直、先輩と戦えましたし、先輩も試合に出てないのでどうでもいいです」

「同じく。俺も決勝で巧人と戦えなかったし、もうどうでもいい」

「ひでーな、お前ら!」

「まぁまぁ、さっさと始めろよ。俺は……どっちが勝ってもどうでもいいけどな。適当に二人とも応援しててやるから」

「いやいや、そこは俺を応援してくれる流れだろ!? 俺、お前に勝ったんだぜ!?」

「いいから始めろよ。ほら、バトルスタートー」


 俺はそうやる気なく掛け声を言ってやる。「もう少しテンション上げろよ! 決勝だぞ!」とか言ってたが、気にしない。

 そうしてワイワイ言いながら、俺たちは全員で決勝戦の試合を観戦し始めた。


「気を取り直して……先攻は俺がもらうぜ! ドロー! マナチャージ! ドラグーンテイマーを上級召喚! さらに、チビドラゴを通常召喚! カードセットでエンドだ!」


 関羽は流れるように一連の動作を済ませ、ターンを終える。あれは間違いなく、最高の滑り出しだ。


「伊久留のターン……」


 さて……注目の伊久留のターンの開始だ。

 俺は伊久留が戦っているのを見ていない。一体どんな戦いをするんだ? そう思って、興味津々に見入る。


「マナチャージ。上級サモン。闇魔界の住民」



闇魔界の住民 レベル3 属性闇 パワー210 ブレイク1

能力

起動 ターン1回

相手の場のモンスター1体を選択。このターンの終わりまで、パワーを50下げる。



 そこまでのプレイングを見て、関羽は少し顔をしかめる。


「混合デッキか……」


 そう判断した要因はマナへと送られたカードが自然のカード。そして上級サモンされたのは闇属性のカードだったからだ。


 このゲームには、属性がある。属性によって、少しずつ特性が違っているのだ。例えば俺が使っていたのは、光。全体的にバランスの取れたいいカードが揃う。


 関羽なら、火。攻撃力や破壊力が高いカードが多い。


 そして伊久留が使っているのは、どうやら自然と闇。

 自然はマナに関する効果が多い。闇は、カードの弱体化や墓地からの復活。さらに、問題無用でカードを消し去っていくようなカード群だ。


 そして混合デッキは上級者向けのデッキだ。というのも、基本的に一つの属性……単色デッキのほうが、カード同士がそれぞれ噛みあった動きをするからだ。俺のデッキで例えれば、それもわかりやすいだろう。


 対して、複数の属性を併せ持つデッキとなると、カードシナジーが薄くなりがちだ。しかし、これはあくまでも一般論であり、使う人が使えば、単色デッキよりも強力なデッキにもなる。


 あのデッキを使いかつ、ここまで勝ち抜いてきたのだ。普通に考えても、今大会中で一番の実力者……強敵だろう。

 けれど関羽だってそう簡単に負けるようなやつじゃない。あいつは強い。戦った俺が言うんだ。間違いない。


 伊久留……お前の戦いがどれほどのものか……みせてもらうぜ。


 そうして、ターンはドンドンと進んで行った。そして――


「フレイムアスクドラゴンで部長に直接攻撃だ!」

「シールドゾーンから守備陣営を発動。緑の戦士でブロック」



緑の戦士 レベル5 属性自然 パワー200 ブレイク1

能力

自動【コスト2、このカードを横向きにする】

このカードが召喚されたとき、コストを払い、自分のシールドゾーンの表側で存在するカード1枚を、横向きでマナゾーンに置いてよい。



「なら、俺はこれでターン終了だ」


 このように、関羽は順調にレベル11にまでなった。つまり10ターンが経過した。このとき、普通ならマナは6になる。だが……


「っち……」


 関羽は舌打ちする。それも仕方ないことだろう。

 なぜなら、伊久留のマナは8。関羽のマナは4だからだ。

 関羽は二度、伊久留のカード効果によってマナを消された。それに対して伊久留は、さっきの緑の戦士のようなカードを使い、マナをドンドンと溜めていった。

 しかし、ライフ差は……



伊久留18

関羽 28



 圧倒的に伊久留が不利だった。

 けれどこのライフ差はそこまで重要なものではない。現に俺が前に1ターンでシールドすべてを破壊し、20のダメージを与えたりもしている。後半になればなるほど、ダメージは多く受けるようになる。それがこのカードゲームだ。

 だからむしろ、ここで不利なのは……


「関羽先輩……ちょっとまずいですよね」

「え? そうなの? 普通に完熟のほうが押しているように見えるけど……」

「いや、そうでもない。確かに承全寺と関羽のライフ差だけを見ればそう見えるかもしれないが、関羽にはマナが圧倒的に足りていない」

「うん。そうだね。4しかないもんね」

「けど、関羽先輩の使うフレイムアスクドラゴンの効果に必要なマナは7……。これじゃ、最大限にモンスターたちの力を生かして戦えないんですよ」

「あ、そっか! へぇ~……あんまり気にしてなかったけど、マナ減らしって相当強いものだったんだね~」

「確かに、マナを減らす戦術は強力だ。だが相手のマナを減らすカードは、自分のマナを大量に使うものも多い。例えば、承全寺の使っていたカードなら……道連れの地獄手だな」



道連れの地獄手 サポート コスト4

自分の場のモンスター1体を墓地へ送る。そして、相手のマナ1枚を墓地へ送る。



「さらに、このカードのように、自分の場のカードを墓地へ送って発動するという、使い勝手の悪さも目立つ。それなら普通にもっと別のカードでせめていったほうが有効な場合も多いだろう」

「それもこれも、あのプレイングのうまさにありますよね。流石私の伊久留ちゃんです!」


 いや、利莉花のものになった覚えは伊久留にもないと思うぞ。が、プレイングがうまいのは同感だ。


「まぁ、絵夢の言う通り、関羽はモンスターが4体。伊久留は2体だし、一概に関羽が圧倒的に不利であるとはいい難いが……それでも、この場を支配しているのは伊久留であることは変わりないだろうな」


 相手のマナを減らすのに自分のマナがいり、自分のマナを増やすのに、緑の戦士のように、そのモンスターの攻撃を放棄する。

 マナを増やすカードも、ステータスが低かったりと、あまり使い勝手のよいものはない。


 もっと言えば、マナが多い、相手マナが少ないからと言って、直接的にアドバンテージにつながることは少ない。

 どんなにマナがあろうと、それを消費するカードがないと意味がない。


 だからと言って、コストの重いカードを増やせば、マナを増やしていないと使えなくなる。


 そんな立ち回りをうまくしないと一気に崩れ落ちるほど、繊細なデッキだ。そんなデッキを涼しい顔で操っているなんて……つくづくすごいやつだな。


「伊久留のターン。上級サモン」



闇魔界の支配者 レベル11 属性闇 パワー320 ブレイク2

能力

起動【コスト6】

発動時に相手の場にいるモンスターすべてのパワーを次のターンの終わりまでパワーを100下げる。さらに、そのブレイクを1にする。



「さらにシールドゾーンからサポートを発動。命削りの代償。このターン中、サポートを発動するとき、代わりにライフをその数値分支払う」



命削りの代償 サポート コスト2

このターン、サポートを発動するとき、代わりにそのコストと同じ数値のライフを支払うことができる。



「ライフが少ないのに……さらに削る気なの!?」

「これは……部長先輩も賭けに出ているのかもしれませんね」


 まさか、このターンで決める気なのか……? でも、28もある関羽のライフを……どうやって?


「そして次に、伏せていたドローアゲインを使う」



ドローアゲイン サポート コスト1~2

支払ったコストの数までカードをドローする。


「伊久留はマナの代わりにライフを2支払い、2枚ドロー」



伊久留ライフ 18→16



「部長……一体、何をしようとしているんだろう?」


 絵夢の呟きはもっともだ。このカードゲームにおいて、ドローカードはさほど重要ではない。

 なんせ、毎ターン5枚になるまでカードを引け、手札不足と言う状況に陥ることはまずないからだ。

 だが、伊久留は前のターンにも、同じカードを使用し、手札を6枚でエンドフェイズに移行した。そんなに手札を貯めて……一体なにをするつもりだ?


「伊久留はさらに手札からサポートを発動……合成」


 な、なに? 合成……だと?



合成 サポート コスト5

お互いのリーダーのレベルが11で自分のモンスターゾーンにモンスターが存在しない時のみ、発動できる。自分の進化デッキから自分のリーダーと同じ属性のモンスター1体をリーダーゾーンに置く。この効果で出したモンスターがいる限り、自分はモンスターを召喚できない。



「伊久留はコストとしてライフを5払う」



伊久留ライフ 16→11



「な……それは超レアカードじゃねーか!」


 関羽は思わず驚きの声を上げる。けど、それは俺も同じこと。まさかあの伝説級のカードをこんな場所で拝めるとは……。

 利莉花に目を向けると、どこか誇らしげに伊久留を眺めていた。驚いてはいない。ということはやはり、既に前の試合でも使っていたのか……。


 あれは他のカードとは違い、特別な処理が入るカード。

 進化デッキという今までの常識という壁をぶち破って降臨するモンスター。


 そしてレベル11というレベルの限界さえも越えたレベル12……。当然、その効果もレベル11をはるかに超えた超絶効果を備えている。


「エヴォリューション・サモン。降臨、レベル12闇魔界の超越者」



闇魔界の超越者 レベル12 属性闇 パワー1000 ブレイク10



「パ、パワー……1000!? もう桁が違うよ!」

「ブレイク数も10だなんて……これはまさに最強の名にふさわしいカードですね……」

「うっ……く! だ、だが! たとえそのレベル12のモンスターがでてこようが、俺のライフは28! これを削り切るなんてどうやったって不可能だぜ!」


 威勢をはるが、それが強がりであるのは誰の目から見ても明らかだった。伊久留はマイペースに続ける。


「さらにリバースカード。ライフチェンジ」



ライフチェンジ サポート コスト6

手札を7枚捨てる。自分と相手のライフを入れ替える。このターンの終わりに、再びライフを入れ替える。



「伊久留はライフを6払い、手札7枚を捨てて、発動」



伊久留ライフ 11→5



「このターンのみ、ライフを入れ換える」

「はぁ!?」



伊久留ライフ5→28


関羽ライフ 28→5



 ほぼマックスだった関羽のライフが一気に5へと変わる。

 そうか……このカードによる一発逆転を狙うために伊久留は手札を溜めていたのか。さらに、サポートの効果でライフを減らしていたのも、このときのため……。

 全く、凄まじいコンボだぜ。


「へ……でもあめーぜ! 俺にはシールドゾーンに守備陣営のカードがある! それに引き換え、部長のモンスターは1体。それじゃ、このターン中に勝負は決まらねー!」


 それもそうだ。もう伊久留にはリバースカードもなく、手札からサポートも使用した状態。このターン、サポートによる支援はできないというわけだ。


「このターンで決まらなかったら、ライフチェンジの効果も切れて、部長、またまた大ピンチだよ!」


 圧倒的なステータスを誇っていようが、ブロックされてしまえば、その力は存分に震えない。

 けれどそれはここで終わってしまったらの話だ。まだ……伊久留はなにかを隠している。


「闇魔界の超越者の効果。マナが6以上あるとき、その全てのマナを墓地に送り、その数まで相手のカードを、墓地へ送る」

「んっなに!?」


 やはりステータスの強さだけでなく、効果も持っていたか。

 だが、それはわかっていた。伊久留がここまでマナを溜めていたにもかかわらず、それをずっと温存していた……そこには必ず理由があるとな。

 これで守備陣営のカードも、関羽の伏せカードも全部墓地に行く……。もう関羽になすすべはないな。


「! くそ! なら、墓地に行く前にこのリバースカードの発動を……」

「無駄。この効果には、他のカードの効果は使えない」

「な!」


 伊久留は抑揚のない声で関羽の行動を制するように言葉をかける。

 そのいつも通りの言い方が今は無慈悲で、圧倒的な力の前にひれ伏せと言われているようで……。それがとても冷徹なものに俺は聞こえた。


「さらに、これにより墓地へ送った相手カード一枚につき、ダメージを1与える」



闇魔界の超越者 レベル12 属性闇 パワー1000 ブレイク10

能力

起動【コスト∞】

自分のマナが6以上あるとき発動できる。コストとして、マナをすべて払う。その後、そのマナすべてを墓地へ送り、その枚数と同じ数まで相手の場のカードを墓地へ送る。そしてそのカード1枚につき、ダメージを1与える。この効果に対して相手はカード効果を発動できない。



「……っは? ってことは……」

「伊久留の勝ち……だな」



関羽ライフ5→0



 そして思いのほかにあっさりと決着はついた。

 結果は伊久留の勝ち。いやこれは……伊久留の圧勝だな。


 そうして関羽が未だ困惑する中、第一回大会は終了したのだった。

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