16-3 ただルール説明をしているだけのお話。
「じゃあ、いくぜ! ゲームスタート! 俺のリーダーはドラゴンナイト!」
「えっと……俺は、森に潜む毒キノコ」
ドラゴンナイト レベル1 属性火 パワー100 ブレイク1
能力
起動【コスト1】 ターン1回
このカードが墓地にあるとき、コストを払い、自分の場のドラゴンと名のつくモンスターのパワーを50ターンの終わりまで上げる。その後、このカードをマナゾーンに横向きで置く。
森に潜む毒キノコ レベル1 属性自然 パワー100 ブレイク1
能力
リーダーゾーンから墓地へ送られた時、このカードをマナゾーンに横向きでおいてよい。そうした場合、自分のマナゾーンのカードを一枚、墓地に置く。
「まずはドローフェイズだ! ドローフェイズは手札が五枚になるように引く。手札が五枚以上なら一枚引く。よって俺は一枚ドロー!」
関羽は勢いよく山札からカードを引く。
こんな場所で張り切らなくていいのに。
「次にスタンバイフェイズがあるけど、これは今はスキップだ。次はマナフェイズ! 手札一枚をマナに変換できる! さらに手札が6枚以上なら、2枚まで可能になるぜ! よって俺は、この二枚をマナに!」
関羽は手札にあったカードを、シールドゾーンよりもカード一つ分ほど離したエリアにカードを逆向きに置く。
「これの説明ももう少しあとにするが、とりあえずはやっておくといい。んじゃ次に上級サモンフェイズ! これで手札からモンスターを呼び出す! 来いドラグーンテイマー!」
ドラグーンテイマー レベル3 属性火 パワー230 ブレイク1
能力
起動 ターン1回
自分の場のドラゴンと名のつくモンスターのパワーをターンの終わりまで50上げる。
「上級サモンフェイズでは、リーダーのレベルよりも、一つか二つ上のモンスターをリーダーゾーンに出せるんだ。ただしこの時、その下にいたリーダーは墓地へと送るんだ」
関羽がドラグーンテイマーのレベルを指して説明しつつ、前のリーダーであるドラゴンナイトをデッキの下にある墓地へと置く。
「このレベルは11まであって、レベルが高くなるほど、モンスターも強くなる。これを繰り返して、戦うのがこのゲームの基本なんだ」
「ふーん。なるほどね」
そうして友人はなにやら考え込むように、自分の手札を眺める。
けれど、そんな相手のことなどおかまいなしとばかりに、関羽は説明を続けていく。
「そして通常サモンフェイズ。まだまだモンスターを呼び出すことはできるぜ。今度はフィールドの一番レベルの高いモンスター以下のレベルをモンスターゾーンに出せる。よって俺はレベル3以下のモンスターを出せるぜ! こい、デモンドラグーン!」
そう言って、リーダーゾーンとシールドゾーンの間にモンスターを置く。
デモンドラグーン レベル3 属性火 パワー210 ブレイク1
能力
起動【コスト2】
このカードのパワーをターンの終わりまで100上げるか、相手のこのモンスターのパワー以下のモンスター1体を破壊する。
「このフェイズ中に出せるモンスターの数に制限はない。手札に出せるモンスターがいれば、その数だけモンスターを呼び出すことができるんだ。ただ、モンスターゾーンの数には5体までという限りがある。つまり、リーダーを含めて合計6体までで戦えるってことだな」
「OKだ」
「次はメインフェイズに移行! ここでは手札からサポートを使用したり、モンスターの起動能力を使えるんだ」
「サポート?」
「遊○王でいう魔法カードさ!」
マンマやめろってば。
「でも、マナを使うところを聞く限りだとデュ○マぽいけどな」
お前も……話に乗るなよ。というかこいつ、普通にカードゲームに関して知識があるみたいだな。
もしかしたら……関羽。お前は厄介な相手を連れてきたのかもしれないな。今大会のダークホースになりうるかもしれないぞ。
「カードの能力を使用したり、サポートカードを使用するには、マナが必要になる。例えば、このデモンドラグーンを見てみてくれ」
そうして関羽はカード能力欄を指さす。
「【】を使って、その中にコストとなるマナの数字が書かれているだろ? その数字と同じ枚数のマナにある縦向きのカードを横向きにすることで、効果を使用できるんだ。こいつなら、2枚ってことだな。……さて俺の手札には、今のマナで使えるサポートはない。だから、代わりに伏せる」
そう言って、シールドゾーンの後ろ側……マナゾーンの前に手札のカード1枚を裏側で置いた。
「手札から使えるサポートは1ターンに1枚だ。だから手札にずーっと持っていてもただ勿体ないし、ドローは五枚になるように引くから、手札はできる限り減らしたほうがいい」
「だから、毎ターンカードをマナにしたほうがいいってことでもあるのか……なるほどね」
「ああ。ただし、伏せらせるカードも1ターンに一枚だけ。そして伏せられるカードの枚数……サポートゾーンも5枚までだ。伏せたら、そのターンには使用できないから注意な。だけど、伏せたカードはマナさえ払えば、メインフェイズ以外の好きなタイミングで使えるから、コンバットトリックなプレイができるぜ」
コンバットトリック……絶対言ってみたかっただけだな。
「次はバトルフェイズがあり、これで攻撃することができるが、先攻の1ターン目はできない。俺はこれでターンエンドだ。さぁ次はお前の番だ! 来い友人A!」
関羽は友人を煽る。
見ている俺はその態度にムカついていたが、友人のほうは別段気にした様子もなく、淡々と手札を眺めながら、進めていく。
「俺のターン、ドロー。えっと、マナチャージ。手札から森の住民ユニコールを上級サモン。さらに、通常サモン、蘇りし従者を召喚」
森の住民ユニコール レベル3 属性自然 パワー220 ブレイク1
能力
起動【コスト2】
自分の場のモンスター1体をマナゾーンに横向きで置く。
蘇りし従者 レベル2 属性自然 パワー180 ブレイク1
能力
起動【コスト1】
このカードが戦闘により破壊されて墓地へ送られているとき、コストを払いこのカードを召喚できる。その後、マナゾーンのカード一枚を墓地に置く。
「えっと……次はメインフェイズだっけ? 手札のカード1枚をセットして……っと」
どんどんと進んでいくそのあまりの手慣れたカード捌きに、関羽は驚きたずねる。
「お前なんでそんな普通にやってんだよ」
「まぁこのカードゲームはやったことないけど、結構カードゲームはやってるからね」
やっぱりか。でも、それも当然だな。関羽のあの自分のペースでやられた説明で理解できるのなんて、経験者くらいだろうし。
「くそ……カモだと思ったのに」
おい。聞こえてるぞ。初心者イジメやめろ。
いや、さっきまでの関羽の様子を考えるに、初心者に説明する俺カッケーって部分もあったか。ほんと、しょうもないやつだ。
「それじゃ、メインフェイズは終わりにして……バトルフェイズ!」
友人は強めな口調で宣言をする。
その声に反応し、気を取り直したように関羽は説明をした。
「まぁ、もうお前ならなんとなくわかると思うけど、バトルフェイズでは、モンスターで相手に攻撃ができる。攻撃するときは、その攻撃するモンスターのカードを横向きにするんだ。そして攻撃できるのはシールドか、横向きになっているモンスターだ」
「じゃあ、今はモンスターに攻撃できないってわけか。なら、シールドに攻撃する!」
そう言って、友人はリーダーである森の住人ユニコールを横向きにする。
「おっと、そうはさせないぜ? 相手の攻撃は、自分の縦向きのモンスターを横向きにすることで防ぐ……ブロックできる。俺はドラグーンテイマーでブロック!」
関羽もそうしてカードを横向きにする。
「これでバトルが発生した。お互いのパワーをチェックだ」
そしてカードの中央にある、3桁の数字に指をさす。
パワーはドラグーンテイマーが230。ユニコールが220だ。
「パワーが高いほうが戦闘では勝利。よってこの戦闘は俺の勝ちだ。ここで普通はモンスターが破壊され墓地にいくが……リーダーはこの戦いにおける、導くものであり、支配者だ。そして、プレイヤーの相棒でもある。戦いが終わるまで、いかなる場合でもフィールドを離れない。それが俺たちとリーダーを繋ぐ絆ってわけだな」
そういや、そんな設定があったな。他にもリーダー以下のレベルを出せるというのは、リーダーよりもレベルが高いとリーダーに従わないからだとか、モンスターの数が5体までなのはそれ以上になると、指示が行き届かなくなるからとか、結構色々あった。まぁ、その辺のことはアニメとか見ていれば重要だろうが、普通にカードゲームする分には関係ないものだし、忘れていたが。
「破壊はできなかったが……戦闘は俺が勝った。よってお前にはダメージが与えられる。戦闘でのダメージは、攻撃力の差分とかじゃなくて、一律で一だ。そしてこのカードゲームの初期ライフは30。よって、お前のライフは30から29になったってことだな」
「でも、これでお前にはブロックできるモンスターはいなくなった。俺は残っている蘇りし従者で、今度こそ……真ん中のシールドをアタックだ」
「ノーガード! これで俺のシールドが破壊……ブレイクされるが、このときのカードの破壊枚数はここ。カード右端のちょうど真ん中辺りにあるこの数字で決定される。そして、そこに書いてある数字のことをブレイクっていうんだ」
「なるほどね。けど、こうやって見ると、数字って横に一列に並んでいるね」
左からパワー、レベル、ブレイク数と言った具合になってるからな。
とはいえ、パワーは三桁の数字だし、レベルにはちゃんと『lv』がついているし、ブレイクは○の中に書かれている。混同するようなこともない。
「そいつのブレイクは1。よってシールドは一枚ブレイクされる。ブレイクされたシールドは、手札に加えたりはせず、その場に表になる」
そうして関羽は一枚を表に。カードは『ドラゴンメイス』だった。
ドラゴンメイス サポート コスト2
自分の場のモンスター1体のパワーを50上げる。さらに、選択したモンスターがドラゴンの名を持つとき、さらに100上げる。
「ここで表になったカードは、条件さえ満たせば、そのコストを払わずに、使用できる。もちろん、伏せたカードと同じように、好きなタイミングでな」
そう答えると、友人が疑問に思ってたずねる。
「今回はサポートだったけど……モンスターだったらどうなるんだ?」
「モンスターだった場合、上級サモン、通常サモンフェイズでフィールドに出すことができる。もちろん、リーダーのレベル以下とか、その辺の条件はクリアしないといけないがな」
「へぇ~……しかし、その場で表に……か。手札をなるべく減らしたいこのゲームにおいては、その方がいいのか」
「ああ。それに、こうやって公開されている情報があるからこそ、生まれる駆け引きもあるからな」
「このゲーム……意外に奥が深そうだね。俺はこれでターン終了」
エンド宣言をして一つため息をつくと、「にしても」と、感想のようなものを述べる。
「通常の召喚と、メインフェイズをわけるなんて、面倒なカードゲームだね」
確かに。普通、召喚と言えばメインフェイズに含むものだしな。
それに比べてこのゲームは、ドローフェイズ、スタンバイフェイズ、マナフェイズ、上級サモンフェイズ、通常サモンフェイズ、メインフェイズ、バトルフェイズ、エンドフェイズという流れになっていて、フェイズの数が無駄に多い。
「それと、レベルが二つ上までのモンスターに上級サモンできるなら、奇数のレベルのモンスターだけでいいんじゃない? 偶数のレベルっているのかな?」
それも至極当然の感想だな。
普通に一つ上までにしてレベルも今の半分までにしておけってことだし。
「それに、5枚になるようにドローって聞くと、毎ターン色々と展開できそうな感じがするけど、実際にはマナで一枚、サポートを伏せるのに1枚できたとして、残りの手札は3枚だし。上級サモンできなかったり、モンスターの召喚ができないと、手札の入れ替えもままならないうえに、盤面でのカードアドバンテージにも差が出て、一気に不利になりそうなゲームだね。そう考えると、デッキの構築難度って高そうだ」
そうだ。このカードゲームにおける一番の重要項目。それが手札事故。
友人の言う通り、手札が五枚あった場合、マナに一枚、上級サモンに一枚、通常サモンに一枚、手札からサポート使用で一枚、サポートを伏せるのに一枚使えれば、手札を0にして次のターンには5枚引ける。
が、もし手札に召喚できないほど高いモンスターしかなかった場合、マナに一枚使用するだけで、リーダーのレベルもあげられない。
さらに、次のターンに引けるカードもたったの一枚。その一枚で、また上級サモンできるカードを引くか、サポートを引かなければ、身動きが取れずに負けるのだ。
流石、経験者。このカードゲームの弱点をもう発見している。だが……
「ふふふ……そんなときのためにあるのが、エマージェンシーというシステムだ!」
関羽は不敵な笑いとともに声高らかにその名前を呼ぶ。
そう、このカードゲームは色々なカードゲームの寄せ集めのようなルールでありながら、手札に関しては別物の特有のルールになっている。
そのため、手札事故のための特別処置があるのだ。
「自分のターンのスタンバイフェイズ、手札を2枚まで選び、デッキの下に戻す。そして戻した枚数分のマナコストを払い、同じ枚数引き直す。これによって、手札事故の可能性をさらに減らし、スピーディーでド派手なバトルができるってわけさ!」
「へぇ~……流石にその辺のすぐわかるようなことは整備されてるんだね」
「あと、偶数レベルに関してだが。友人Aの言う事も一理ある。けどな、あっちはそのレベルの関係上、奇数レベルよりも強い効果になっている場合が多いんだぜ?」
「使いにくいからこその効果か……よくわかったよ。やっぱり、この程度じゃこのゲームは理解しきれないってことがね」
挑戦的な目で関羽を見る。あれは……真剣になっている証拠だな。
チュートリアルもこの辺で終わりだし、友人はここからが本気ってことだな。
「よっしゃ俺のターン! 手札を五枚になるまでドロー! スタンバイフェイズでは、すべてのカードを縦向きに変更! ここからは一通り説明もし終えたし、本気の勝負いくぜ!」
対して、関羽もそう言って友人に好戦的な笑みを向けた。
そうして二人のバトルは進んでいった……。