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16-2 始まる大会……! 唐突な新キャラ……!

 そんなこんなで、やってきた次の部活の日。

 幸い、この前の部活は木曜日だったため、土日などを使って、たくさん練習はできた。ちゃんとルールも覚え、デッキの調整もばっちり。カード同士のコンボの研究も余念はない。各デッキの対抗策に関しても万全。準備は完璧だ。ただ……


「巧人さん……大丈夫ですか?」


 利莉花が俺に心配そうに声をかけてくる。それは当然のことだろう。俺の目の下にはクマができ、見るからに顔色がよくない。そんな奴を見れば、俺でも同じように反応することだろう。


 実際、睡眠不足で頭が少しふらふらする。たくさん練習できたとはいえ、それでも時間自体はそんなに多くなかったからな。

 寝る間も惜しんでずっと研究の繰り返しだった。


 だが、そのかいあって俺の最強デッキは完成した。


(くくく……。これで関羽。お前に目に物みせてやるぜ……!)


 といきたいのだが……。


「俺のことは今はいいんだが……関羽はまだか」


 そう、関羽の姿が一向に現れないのだ。大会はあいつが言い出したことなのに、他のみんなは全員集まって未だ来ないってどういうことだ。

 ったく……。戦わずして勝つなんて、それじゃ拍子抜けもいいとこだぜ。


「とりあえず、トーナメント表だけでも作っておきましょうか?」


 利莉花がそう提案してくる。

 確かに。関羽が来てから決めても、時間がもったいないか。


「そうだな。今いるメンバーの分は、さっさとくじなりで順番を決めてしまおう」

「わかりました。では、私が表を作っておきますね」

「それでは、俺がくじを作るとしよう」


 そう言って、利莉花と透はそれぞれ作業に入る。

 二人ともルーズリーフで簡単に作るようだ。

 透のほうは、八等分になるように紙を折ると、それぞれをはさみで切る。そして、その一つずつに1~8の数字を書いた。


 利莉花のほうも、よくある8人トーナメントの表を簡単に書く。

 上の方には『第一回現代文化研究部カードゲーム大会』と可愛らしい字で書かれていた。……うん? 何気に利莉花の文字を見るのってこれが初めてじゃないか?


 うぉー……。何かそう考えると、目がさえてきたぜ!


「さて、くじを作ったのはいいが……何か入れ物がないとな。これだとランダム性にかける」


 そう言って透は自分で作った紙を眺める。

 確かに、それぞれの紙の切り口や、罫線の違いから、番号が分かってしまいそうだ。見ないでやればいいだけかもしれないが、それこそそうなる入れ物があったほうが確実になる。不正防止的な意味を考えてもそうしたほうがいいだろうな。


 そうして何かないか透が探していると、望が声をあげる。


「あ、じゃあボクの筆箱使ってください。中身を全部取り出せばいい感じになると思うので」

「そうか? なら、ありがたく使わせてもらおう」


 そう言って透は望むから筆箱を受け取る。

 おお……! あの二人が協力し合っている……! 最初はあんなに仲が悪かったのに……少し感動だ。


「ヌッキー……あの二人が協力しているよ……何だか、感動だよね」

「絵夢、お前もか……そうだよなぁ」

「うん。だねぇ……」


 そうして、俺たちはしみじみと望たちを眺めていた。

 しばらくして、くじの準備が終わる。


「それじゃみんな、引いていってくれ。あと番号は表の左から順に1番、2番とする。いいな?」

「ああ、わかった」


 俺がそう返して、みんながそれぞれ札を引いていく。俺は……3番か。相手は――


「やった! いきなり先輩と戦える! これだけでもうこのイベントは十分です!」


 望か。まぁ、誰が相手でもそんなに変わりはないか。


「ふふふ……これで先輩に攻撃をしたり、攻撃されたり……。あ、ダメです先輩! それは激しすぎますよ!」


 ……いや、あったな。できれば、望と透は当たりたくなかったな。

 変なこと言って……すごくやりずらいぜ……。


 そうして全員がくじを引き終えて、利莉花が表に書き込んでいく。


「えっと最後に私が6番に入って……と。残りは……ちょうど1番と2番ですね。これで表自体は確定ってことでいいですね」


 これで数字が分かれていたら、関羽の分を引かなきゃならなかったが……その手間が省けたか。ちょうどよかったな。

 と、一息ついたところでドアが開かれた。その姿を確認して、俺はため息を吐く。


「やっときたか……関羽」

「わりーな。大会に参加する最後の一人を探しててよ」


 そう言いながら、関羽は部室の中に入ってくると、その後ろに人影が見えた。

 俺たちの視線がそいつに集まったのを確認すると、関羽は誇らしげに、そいつを指さした。


「こいつが大会の八人目の相手だ!」

「どうも」


 ぺこりと小さくお辞儀される。

 関羽から勢いよく紹介されるが……全然知らない。誰だ?

 同級生らしいというのは分かるが……それ以上はわからん。

 というか、正直に言うが地味だ。一年前の知り合ったばかりの頃の大輝よりも地味だ。特徴がまるでない。言っては悪いかもしれないが……普通以下だ。


 俺は気まずそうにたずねる。


「えっと……お前は?」

「俺は友人ともひとあきら……まぁ、気軽に友人Aとでも呼んでくれて構わないよ」


 はははと笑って友人は言う。……すごいあだ名だな。モブ中のモブじゃねーかよ。

 それ以前に『友人』っていうのもすごいな。そこに関しては普通を超えてる。これがこいつの個性か。……酷い個性だ。

 利莉花は、さっきまでの状況を説明する。


「もう、対戦表はつくりましたよ。第一試合は、関羽さんと友人さんです」

「おお! ありがとよ! これで早速、試合に入れるぜ!」


 テンション上がってきた! とばかりに声を張り上げる関羽。

 やっと大会の始まりか。何だが長く感じたな。

 いや、始まりそうで始まらなかったからか。焦らされていたしな。

 さて、試合をするのはいいが……。


「時間短縮のために、5番と6番……絵夢と利莉花の試合も同時に行おう」


 本当なら、1回戦をそれぞれ同時にやるのがベストだろうけど、この部室のスペースじゃ、机の数に限りがあるし。一度にやれるのは2試合が限度だろう。


「はい、わかりました!」

「うんわかったよ! よ~しリリー! 負けないからね!」


 二人は俺の提案に頷くと準備を始める。

 個人的には利莉花の勝負が気になる。利莉花もノリ自体はいいから、絵夢に合わせて色々と言ったりするんだろうし。例えば……


『うぅ……やりますね。でも私だって負けませんよ! 反撃です!』


『いけ私のモンスターたち! 絵夢さんに総攻撃です!』


 うん。想像するだけで、こう……可愛い。オーバーな反応であったり、身振り手振りであったり。


『ふ……絵夢さん。あなたの行動はすべて読めていました……。あなたは私の手のひらの上で踊る人形にすぎません! 私の戦術の前にひれ伏すのです!』


 とか、ドヤ顔で指さされながらいわれたりしたらもう……ね?

 できれば、そんな姿をみていたい。

 が……俺が勝てば、次に戦うのはこっち側の勝利者だ。口惜しいが、こっちの試合見ておかないとな。


「よっし、勝負だ友人A!」


 そうして宣戦布告するように指を立てる。お前のドヤ顔はどうでもいい。いや、というよりみたくない。

 つーか、お前もそれで呼ぶのかよ。最高に可哀想なやつだな。


「っていっても結局俺は何をしにここに連れ来られたんだ?」


 おい。何の説明もしてないのかよ。こんなやつ連れてきて……関羽は何考えてんだ。数合わせにしたってひどすぎだろ。


「ああ……そういや説明してなかったよな。な~に、単純に俺とこのカードゲームをしてくれればいいぜ!」

「いや俺ルール知らないし、カードももってないんだけど?」

「大丈夫だ。デッキは俺が貸すからな説明もしながらやってやるよ」


 そう言ってデッキを渡す。

 ……って待てよ。そのデッキ……本当に使えるのか? 雑魚デッキ渡してんじゃないだろうな?

 とはいえ、今更そんな部分に突っ込んでも流れも悪くなるので、やめておく。


 二人が席に着いたところで、関羽が説明を始めていく。


「さて、まずは初心者であるお前にルールを説明しながらやる関係上、俺が先行でいかせてもらうぜ」

「ああ、わかったよ」

「まずはデッキ……50枚のひとまとめにしたカードの束からレベルが1のモンスターを1体選んでフィールドのリーダーゾーンと呼ばれる場所に召喚する。どっかで聞いたことあるようなルールだろうが、気にするな」

「ああ、ヴァ○ガードとかゼ○スとか、そう言うやつな」


 マンマ言うな。


「次に上から五枚をシールドとして、デッキ左横一列に置く。まぁ、似たようなものを聞いたことあるかもしれないが気にするな」

「ああ、デュ○マか」


 だから、マンマ言うなってば。


「次に五枚のカードを山札から引く。これでゲーム開始の準備が整った」


 関羽がそう言うと、友人Aも同じようにレベル1のモンスターをフィールドにだし、シールドを展開。カードを五枚引いた。

 そして、関羽と友人Aの対戦が始まった。

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