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15-3 席替えだけでこんなに一喜一憂しててなんか微笑ましく思えましたまる 編

 というわけで、席替えをした結果。このようになった。



望、関羽、透

絵夢、巧人、利莉花



 俺の位置や絵夢の位置は特に変わりはなく、俺の正面に関羽がいることも前と同じだ。さらに、横には利莉花がきて、望の脅威から逃れた……。ふむ、完璧だな。


「納得いきません! こんな席なんて!」


 けれど望はそうではないようで、机をばんっと勢いよく叩き、声を荒げる。


「文句言うな。くじ引きで決まったんだから」

「だとしてもですよ! ボクがどうして透先輩と同じ側にいないといけないんですか!」

「俺か? ふん。前は仲良くしようとしているとか言っていたが、今日はずいぶんと喧嘩腰じゃないか」

「今だって仲良くとは考えていますよ。えぇ、当然じゃないですか。でも、人間には相性ってものがありますし。またあの時みたいな状況になってしまうことも考えられます。それを避けるためにも、別れていたほうがいいと思ったんですよ」


 あんなこと言ってるけど、望のやつ。明らかに敵視してるな。

 それに引き換え、透のほうは……前よりも何だか余裕そうな感じだ。何かあったのか?


「つーか、俺も納得いかねーよ! ふざけんなよ! この二人に挟まれるとか! しかもずっとこんな会話され続けるとか……勘弁だぜ!」


 関羽からも文句が飛んでくる。

 その関羽を挟んで、不穏な会話がまだ続く。


「というか、透先輩がボクの邪魔をしてこなければ、こんなことにはならなかったんですけどね~」

「だからあれは、見極めるためだと言っているだろう」

「まずそこが問題なんですよ。なんで、透先輩にそんなことをされなきゃならないんですか? 先輩が頼みでもしたんですか? むしろ、それって先輩にとって迷惑な行為なんじゃないですか?」


 ああ。実際、余計なお世話だよな。だってそれって自分の好きな人とか、自分の恋人を相応しいのかどうかって勝手に品定めされているってことだし。そんなもの自分で決めるし、相手を好きでやっているなら認めてやれってな。

 ……自分で言っておいてなんだが、俺もまるっきり同じ行為をやってきたことに気付いたぜ。人のこと言えなかった……。


「巧人に迷惑……か、なるほどな。それを考えたことはなかったな。確かに蔵良の言うとおりだ」

「え? あ、はい。分かればいいんですけど……」


 意外にも透が同意をして、望は戸惑ったように返す。


「だが、たとえそうだとしても、俺の気持ちに変わりはない。好きなら……相手に嫌われようがその人の為に動く。それこそが真の愛だからな」

「!? トゥルー・ラブ……ふ。その通りですね」


 そして望と透は笑いあう。何かわかちあってるんだけど……。

 こいつら大丈夫か? 後、望よ。いきなり英語に訳すなよ。変な……ていうかアホな感じがするぞ。


「まぁ、なんだ。喧嘩も止んだし。これなら、いいんじゃね?」


 俺はそう適当に返したが、まだ関羽からは文句が出てくる。


「つーかよ。今ここには男が4人で女が2人だろ? だったらバランス的に、2:1で分けるべきじゃねーのかよ」

「別に、それはどうでもいいだろ」

「こっち側が男だけだとなんかむさいんだよ!」

「いいじゃん。どうせお前熟女好きだし。こいつらがいてもそんな変わんねーだろ」

「それに、ボクがいてむさいとかいうのはやめてくれませんか? 男の娘としては普通に傷つくんですけど」


 男の娘とかそういうの、自分で認めるなよ。まぁ……望がいて別にむさいとかはないと思うがな。


「それもこれも、お前がそんな場所を引いたのが悪い」

「くっそ! でも半数以上が納得いかないっていうならやり直しだからな!」

「そうなったら、仕方ないしいいが……まだ誰かいるか?」


 俺はそうして周りに目を向ける。まずは隣にいる絵夢からだ。


「う~ん……別に私は何もないよ? 強いて言うなら、特に面白味がなかったな~ってくらいかな?」


 面白味なかったとか言うな。むしろ悪くなかっただけよかったと思え。

 ったく、これだからクラス中心系人物は。あれだろ? クラスで席替えやりたいやりたい! ってなって、くじ引きでいざやってみるとそんなによくなくて。むしろ嫌いなやつが近くにいたり、仲のいい友達が遠くなったり、席が中央列の一番前とかだったりして不満を言うってパターン。

 受け入れられないなら、最初からやったりするな。結局、あれは誰が得しているんだ。


「俺も特にはないが、強いて言うなら巧人の隣がよかったな」

「そう言う意味ならボクもですけどね」

「おら、どうだ巧! ほぼ全員が不満アリじゃねーかよ!」


 そうして関羽が威張ってように俺に視線を向けてくる。


「強いて言うならって言ってんだろ。別に今のままでもいいってことだろ」

「まぁ、そういうことだね~」

「っく! でもまだ2人いることに変わりはねーし!」

「あ、もうボク別に不満があるわけじゃ……」

「よーし! 最後にリリーに話をきくぞー!」


 関羽のやつ……望の声を遮りやがったな。


「私もくじですし、その結果に文句を言いはしませんが……一つだけ」

「おお、なんだなんだ!」


 控えめな様子の利莉花とは対照的に異常なほどな勢いで食いつく。どんだけ、変わりて―んだよ。


「せっかくの席替えなのに、伊久留ちゃんが混ざってないのはどうかと思いまして」

「伊久留? そういや……そうだな」


 俺は伊久留のほうを見る。伊久留はやはり変わらず、読書をしていた。正直、空気だった。忘れていたぞ。でも、利莉花の言う事も一理あるか。


「伊久留のことは、はぶっていたわけじゃないけど……そういうことならもう一度やるか」

「本当ですか? やった! ありがとうございます!」


 そうして利莉花に感謝をされる。こういうのって少し照れるな。そんな俺の様子を見て、横から絵夢が小声で話しかけてきた。


(やり直すなんて……やっぱりヌッキーって、リリーのことになるとちょっと甘いよね)

(そんなことは……ない)


 はずだ。たぶん。


(ひひっ! その間は何? ま、いいや。そう言う事にしておいてあげる!)


 意地らしい笑みを浮かべ、絵夢は顔を離す。……変なこと言うなよな。逆に意識するだろ。俺は……普通だよ。

 俺は微妙な気持ちになりながら、一枚足して再びくじを引いた。


 その結果は――



関羽


透、巧人、望

伊久留、利莉花、絵夢



 こうなった。……うん、なんだ。言いたいことはただ一つだ。


「やった! 先輩の隣です! もう最高な気分ですよ! ぎゅー!」

「ふ……これも神からのプレゼントと言ったところかな? こんなに近くに巧人を感じれるだなんて……俺も最高な気分だよ」


 ……最悪だ。お前らと違ってな。なんだよ、これ。両側にホモって……まるで図ったかのように俺にとっての最悪じゃねーかよ。後、腕に抱きつくな、望!


「ふふん。透先輩がそちら側にいて、先輩を独占できないのは少し気に食わないですが……いいでしょう。先輩のそちら側の腕は甘んじて渡しましょう」

「そうか? なら遠慮なく受け取らせてもらおう」


 勝手に渡すな。受け取るな。あーもう疲れる。そして胃が痛い。それに……あっち側はあっち側でまたカオスな状況が繰り広げられているな。


「きゃー! 伊久留ちゃんが……伊久留ちゃんが私の隣にいます! こんなに嬉しいことはありません!」


 利莉花は伊久留へと抱きつく。伊久留は反応を示さず、読書を続ける。


「それに、反対側には絵夢さん……これはもう私のハーレムですね!」

「あ、ははは……そ、ソウダネー……」


 嬉しそうに言う利莉花に絵夢は返答する。おい、片言になってるぞ。絵夢……お前もなんだか大変な位置になっちまったな。

 そして、残っている関羽はと言うと……


「納得いかねー!」


 と、当然のように叫んでいた。


「なんで、俺がここの席になるんだよ! 俺一人じゃねーか! そっちに混ぜろ!」

「仕方ないよ、完熟。ここ、6人用だし」

「いや、普通に今まで見たいに横に椅子おかせろよ! それで7人だろ!」

「でも、その席は特別なもので、そういう仕様だから……今更変えられないよ」

「諦めんなよ、そこで! 変えるよう努力しろよ!」


 関羽は絵夢とやり取りをしながら俺の後ろの方でわめく。俺は望のせい&振り返るときに透のほうを見るのが何だか嫌だという理由でどうかは知らないが、こりゃ相当きてるな。けどまぁ、なんだ。その席は元は伊久留の席だし……うん。そういう仕様だ。

 そんな関羽に利莉花は人差し指をたてて答えた。


「ふふふ……関羽さん。それなら一つ、いい方法がありますよ?」

「おお、なんだリリー! 何でもいいから早く言ってくれよ!」


 必死な様子で利莉花を急かす。それに利莉花はまたふっと笑うと――


「それは……こうするんです!」


 目を見開いて、おもむろに立ち上がった。

 そして、伊久留へと腕を伸ばし、抱え上げると、自分の前にその体を持ってきて、そのまま座った。

 ……簡単に言うと伊久留を自分の膝の上に乗せた。なんだったんだ、さっきの思わせぶりな一連の行動は。今日の利莉花は、そういうのが多い気がするぞ。それと、あの状況でも動じない伊久留。……さすがだな。

 利莉花は後ろから伊久留を抱きしめると、得意げに語る。


「こうすれば、席が一つ空きます。しかも一つの席に2人が座るので、伊久留ちゃんとの密着度を増やすことができるんです!」


『はっ! その手があったか!』


 衝撃を受けたように望と透が声をハモらせる。共感すんな、お前ら。

 そして望は俺に伺うような視線を向け、おずおずと口に出す。


「ね、ねぇ先輩? ボクも……」

「嫌だ、誰がお前を膝の上なんかに乗せるか」

「俺はむしろ、巧人を膝の上に……」

「それもしねーよ」

「っは! じゃあ、透先輩、先輩、ボクの順に座れば……!」

「それは一番ありえねーよ!」


 てか、俺の話を聞け! 俺を想うなら、俺のことを気遣え!

 くそ、このままじゃ拉致が明かない。ここはさっさと話を進めなければ……。


「よし、ここで多数決だ。もう一度席替えをするか否か。するやつは手を上げろ!」


 俺は強引に話を切り出す。実際、変わるなら変わるに越したことはないが、変わらないなら変わらないで、諦めがつく。その結果を知らないと、悶々としたままこの状態に晒されて気分が悪い。

 俺はもちろん手を上げる。そして関羽も「はいはいはーい!」と無駄に主張して手を上げた。さらに苦笑しながら絵夢も上げる。そして――


「…………」


 伊久留も本を片手に小さく手をあげた。


「えぇ!? どうしてですか、伊久留ちゃん!」

「……伊久留はあの席がいい」


 そして伊久留は元の自分の席を指さす。伊久留がここで喋るのは意外だったが、まぁ伊久留も元の席に戻りたいだろうなっていうのはなんとなく想像はついていた。

 だって、今まで好んで俺たちから離れていた人物だ。わざわざこっちの席に移るなんてするはずはないだろう。それなのに、この席替えに一度は付き合ってくれたのは……まぁ伊久留なりの優しさと、あいつ自身参加したかったってところか。伊久留って不器用だしな。またには一緒に遊びたかったとかそんなんだろう。

 ともかく、これで4人。過半数を超えた。これでやり直しは成立だな。


 というわけで再度やり直し、最終的には――

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