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第9話 膝枕大会開催中

 という夏疾風なつはやての台詞で急遽開催される。


『四大精霊膝枕大会。誰の膝枕が気持ち良いのか』 

 命名、吹花擘柳すいかはくりゅう


 一番手は吹花擘柳。


「ふふふ、わたしの炎で暖めてやろう」


 吹花擘柳の炎は、実体化したままだったら太ももに乗せた俺の頭がこんがりと焼けてしまうので幻影にしてもらった。


 張り切った吹花擘柳は俺を膝枕にした状態で、俺の身体を幻影の炎で包み込んだ。

 幻影とわかっているけど、人間の本能だろうか燃え盛る炎が真近くあるとまったく落ち着けない。

 というか、吹花擘柳がこの炎を実体化させたら俺は焼死する。


 太ももの感触は気持ち良かったけど、それより俺を包んでいる炎の方が気になって仕方なかった。


 二番手は風花かざはな


「ボクの気持ちいい風で癒してあげるよ」


 風花の白い霧は、無害という事で実体化したままで膝枕をしてもらった。

 霧の細かい水滴が俺の髪や頬をミストシャワーみたく濡らしている。


 風花の周囲にはそよ風も吹いており、涼しげで気持ちよかった。

 視界が白い霧で覆われたので早朝の霧が発生した時の風景を思い出した。


 三番手は金風きんぷう


「……全身、泥々」


 金風のライダースーツ風の泥は実体化したままだったら、俺の頭が泥だらけになるので幻影にしてもらった……が。


 ライダースーツ風の泥が幻影という事は見た目は泥でおおわれて隠れているけど、全裸と変わりないのではと思ってしまってからは全然落ち着つけなかった。


「では、私も……」


 夏疾風は、もう膝枕をしていたので見ているだけだったが、皆が終わった後にちゃっかりもう一回俺を膝枕しようとして吹花擘柳に怒られていた。


 さて、膝枕大会の結果は。

 一位、夏疾風。

 二位、風花。

 三位、金風。

 四位、吹花擘柳。


「くぅー、なんでわたしが最下位なんだ」


「まあまあ、吹花擘柳さん。燃え盛る炎の近くが落ち着かないのは人間として当然の反応ですし、仕方ないです」


「夏疾風、優勝だからって調子にのって」


 膝枕大会の優勝者と最下位がじゃれ合っている。


 優勝者は、ニコニコしながら嬉しく嬉しく仕方がないという感じで、最下位は結果が不満そうで悔しがっている。


「まあ、いい。次はわたしが優勝してやる。火は人間に沢山の恩恵を与えているのだ。いずれ直登が喜ぶ行為をすることもあるだろう」


「そうだね。風だって人間の生活に影響があるし次だね」


「……土も農作物や畜産から建材まで人間に恩恵がある」


「私もまた直登様に選ばれて優勝を目指しますわ」


 この精霊少女達を脇から見ているけどある意味纏まりがあるな。最下位の吹花擘柳は切り替えが早いし、他の三人も結果を引きずってない。


 円陣の形を作りながら和気藹々と膝枕大会の事を話している四人の精霊少女達。


 彼女らの円陣から少し離れた場所で、彼女らを眺めながら立っていた。

 変な意味は無くただ見ていただけ。


「ん……? あ! あああぁぁぁぁ!」


 みんなと仲良く話していた風花の表情が、ん、ちょっと待てよ、というような感じになったと思ったら突然叫んだ。


「……どうしたの」


「風花、いきなり叫ぶな。びっくりするだろ」


「風花さん、どうしました」


 他の精霊少女達は、突然の叫び声に会話を中断させて風花の方を不思議そうな表情でキョトンと見ている。


「なおとさんに食べ物!」


 風花が焦ったような表情で三人の顔を見回しながら喚き立てた。


「あっ」


 吹花擘柳は、すごい速さで俺の方に振り返り。


「……あっ」


 金風は、ぽかんとした表情で俺の方を見た。


「あら、あら」


 夏疾風は、右手を右頬に当ててつつ俺を見る。


 四人とも、思い出したという表情を作り、それから失敗したというばつの悪い表情へと変わっていった。


「直登、すまん。空腹で苦しんでいるというのにスキンシップに目が眩んでしまった」


「ごめんなさい。なおとさん、お腹空いて我慢しているのに」


「……ごめん」


「直前まで一緒にいたのに忘れてました」


 さっきまで膝枕大会で盛り上がってた同じ場所とは思えないほど、どんよりとした暗い空気が流れ込んだ。


 精霊少女達は、下を向き暗い表情をして俺の前に一列に立って並んでいる。

 小学校で先生に怒られている生徒達という感じだ。


 お腹は空いているけど、今すぐ食べないと生きていけないほど空腹という訳ではない。


 そもそも発端の俺が空腹で倒れたというのは彼女達の誤解だし、スキンシップで我を忘れてしまったのは可愛い失敗だ。


 ここはちゃんと対応しないといけない。

 彼女達には明るい表情で賑やかな方が似合っている。


「いや、膝枕で充分、元気になったし。みんなの膝枕も気持ちよかったから気にしなくていいよ。それより、どんな食べ物を探してきたのか楽しみだな」


 俺は、列の前を歩きながら彼女らの頭を優しく撫でながら、しっかり顔を見詰めながら励ましていく。


 吹花擘柳の肩で揃えた赤髪

 夏疾風の腰まである長い青髪。

 風花の後頭部の緑髪のポニーテール。

 金風のショートカットの栗毛。


 四人の髪を始めて触ったけど、さわり心地は三者三様ならぬ四者四様だ。

 柔くさらさらでこしがあって撫でて気持ちいい。


 撫でられている表情は、吹花擘柳が、恥ずかしそうに。


「……くぅ、頭を撫でても忘れたのは失敗だぞ」


 夏疾風は、気持ちよさそうに。


「……ふぅ、なんか安心できるような。良い気持ちです」


 風花がくすぐったそうに。


「あはは、髪の毛を触られるとなんかくすぐったいね」


 金風は、恍惚とした表情。


「……ほぅ」


俺 は、頭を撫でながら髪の毛を触っているだけだが、彼女らの表情は気持ち良さそうで満足している感じだ。


 膝枕で全員とスキンシップをしたばかりなのに今度は頭を撫でてスキンシップをしてしまったかな。



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