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第5話 精霊少女は誕生してまだ半年!

 そういえば肝心な事を言い忘れていた。


「先ほどは、怪物に襲われそうになってたところを助けて頂いてありがとうございます」


 俺は、四人に忘れないうちにお礼を言った。

 彼女達がいなかったら俺は今頃、人間の丸焼きかただの屍になってたな。


「これは、御丁寧に。いえ、こちらも助かりましたから気にしないでください」


 夏疾風なつはやては、そう答えたけど俺はその言葉に首を傾げる。

 

「え、俺は、何もしていないぞ?」


 俺は、彼女らにコブリンから助けて貰っただけで何もしていない。


「あ、失礼しました。直登様には、まだこの状況の説明が不充分でしたね」

「よ、よし、直登。この吹花擘柳すいかはくりゅうが説明してやろう」


吹花擘柳が頬を赤く染めたまま得意気な顔をしながら話しに割り込んでくる。


「あら、大丈夫ですか?」

「あんまり緊張せずがんばってね」

「……がんば」


 三人から声援がとぶ。


「……コホン。え~と、まず、わたし達の事だが全員、人間ではない」


 やっぱりねというのが最初の感想。

 半裸姿で炎や水を身に纏っていて、怪物を瞬殺するのが普通の女の子の訳がない。

 そうなると彼女らの正体が気になるけど、これも吹花擘柳が説明してくれた。


「人間の少女の姿をしているが、元は姿形も無い精霊だ。私達の姿を見れば解ると思うが、わたしは火、夏疾風が水、風花かざはなが風、金風きんぷうが土の属性を司っている」

「姿形も無いって吹花擘柳達は、人間の女の子の姿だよ?」


 改めて正面の四人を見てみるが、格好はともかく見える範囲の身体の作りは人間と同じだ。


 髪の毛の色は、ファンタジー物にありそうな色だし、耳の形も人間と同じ、お尻に尻尾も生えてないし。


 これで普通の洋服を着ていたら異世界の住人かなと誤解するくらい人間と同じ姿だ。


「いや、違うぞ。精霊でも階級はあるのだが低級はそもそも姿を持たない。中級、上級精霊なら獣型や人型はいるが、わたし達みたくここまで人間そっくりはいない」

「ま、まさか、吹花擘柳達は超上級の精霊、いや神様に近いとか?」


 怪物を殲滅した力を考えるとあり得るかもと思ったが、吹花擘柳はあっさり首を横に振る。


 言った後から気づいたけど、彼女らは最初に精霊と名乗っていたので神様はないか。


「違うな。わたし達は、悪魔との勝負の為に神に生成された人間の姿を持つ特殊な精霊だ。能力は、それなりに与えてくれたみたいだが、さっきのコブリンとの戦いで直登も見たような力がわたし達は使える」


 悪魔に神。異世界物の定番が登場したか、それにしてもこの四人って神様に生成されたって事は普通の精霊より格が高いんじゃないだろうか? 


 あと、あの怪物ってこっちの世界でもコブリンって言われているんだ。

 

「わたし達四人は、生成されて半年くらいだ」

「は、半年」


 生まれて半年って人間なら赤ちゃんだぞ。

 精霊は、成長スピードも速いのか。


「今の姿で生成されて知識も生成された時に付与されたが、実戦はさっきのコブリンが初戦だ。植物も動物も知識では知っているが見るのは始めての物ばかりだ」


 生成って赤ちゃんの状態でできるわけではなくってある程度成長した段階でできているのか。


 しかも、知識が最初から付与してあるって未来の世界のクローンの作成みたいだな。


「何せ、地上に降臨して三日も経ってないからな。人間を実際に見たのも直登が始めてだ。わたし達は、人間の女という性別の身体を模しているが、直登は男だろ。体つきが違う」


 この四人が生まれたてというのには驚いたけど、得心があった。


 なるほど、俺が彼女らの身体を見ていても嫌がったり、不信感を感じなかったのは生成されたばかりで人間というか男という存在がどういうものかあまり知らなかったせいか。


 付与された知識の中には男女関係の知識は無かったかもしれないな。


 となると、さっきのキスは意味も知らずにしてたのかな。生成されたばかりというとファーストキスだろう。


 人間の女の子を模したといっても女の子なら大事な事かもしれない。


「あのキスは、なんでしたの? しかも唇に」


 吹花擘柳とのキスシーンを思い出すだけで俺は頬が赤くなるのに、その相手は全然平気そうにしている。


 顔を見て話そうするけど、視線はついついキスをした唇にいってしまう。


「直登は、異世界の住人だろ? あのままでは、言葉も通じないし、この世界の病気の耐性も無いから、神の祝福ならぬ精霊の祝福をして直登をこの世界に馴染ませたのだ」


 へぇ……、さっきのキスにはそんな意味があったんだ。


 キスするだけで言葉が理解できたり、病気の免疫ができるとはさすが神様に生成された精霊ということかな。


「する場所は、人間の身体なら何処でもよかったのだが、キスの中では唇にするのが一番価値があると付与された知識の中にあったのでしてみたのだ」


 なぜキスをしてきたとかなぜ唇にとかの理由はわかった。

 そして、今までの状況や彼女らの話を聞いて思ったことがある。


 彼女らをこのままにしていたら危険だ。危ない。


 悪い人間。しかも、男と出会ったら彼女らは簡単に騙されて口では言えないような酷い事をされそうだ。


 生成されたばかりで世間知らずで純粋無垢な感じだし無防備。

 男女関係も中途半端な知識を覚えているようだ。


 俺も聖人というわけでもないので彼女らをエッチな目で見てしまうかもしれないが、他の人間よりましだろう。


 ここは、最初に彼女らに遭遇した人間として彼女らを悪い人間から守らないと。


 俺の脳内で、直登は美少女精霊を四人捕獲……いや、保護したというメッセージが流れた。



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