第3話 精霊少女達は、着衣無し?
俺の数メートル先に半裸以上全裸未満の姿をした人間風の少女が三人と変な物が佇んでいた。
この子達を左から順番に見ていると、紅色の瞳の少女と目が合った。
赤髪の髪が肩の高さで切り揃えられていて、勝気さ感じさせる雰囲気をした少女だが洋服というものを着ていない。
服の代わりなのか胸と腰の部分に炎を纏っている。
炎がメラメラと勢い良く燃えているが、少女は熱がってそうな表情を見せず涼しげに立っている。
手や足には、炎を纏っていない。
例えるなら炎のビキニ姿。
その隣にいるのは、青色の髪の毛を腰の辺りまで伸ばしている凛々しい感じの蒼色の瞳の少女。
身体には流れる流水を纏っている。
こちらも例えるなら流れる水のワンピース姿。
水は重力なんて無視するように地面に流れ落ちることなくこの少女の身体に纏わり付いていた。
ちなみに水の流れの勢いが強いのか気泡が結構水に含まれていて素肌が透けて見える訳ではない。
三番目は、緑色の髪の毛を頭の後ろで縛っていて活発さを感じさせる萌葱色の瞳のポニーテール姿の少女。
身体には白い霧を纏っていて、どうやっているのかは知らないけどこの子だけ空中に浮いている。
霧は、首から下を全部覆っていてロングコート姿を連想させる形でに纏わり付いていた。
白い霧は拡散することなく少女の身体に纏わり付いている。
最後に右端にいたのは……?
ひとりだけ性別不明だ。どういう訳か、泥人形が立っていた。
泥が人型を作っているだけなので顔の表情なんて分からないし、人か怪物なのかもわからない。
三人とも顔立ちが整っており可愛いかったり、綺麗な子達ばかりで外見からだと年齢は小学校高学年くらいに見える。
ちなみに泥人形も少女達と同じくらいの身長だ。
姿態は、どれも過激だった。
身体の見えちゃいけない部分を隠すようにはなっているけど、服という物を着ていない。
炎だったり、水だったりを身に纏っている。
身体を覆う、炎、水、霧、土を見れば彼女達がそれぞれの属性の力でコブリンを攻撃したということが想像できる。
助けて貰ったのはありがたいけど、まだ彼女らが味方とは限らない。
というか、俺のチート能力が開花したという訳ではなかったのは少し残念。
コブリンの容赦ない殺しっぷりを見ると、姿は女の子だけどその正体は人間とは限らない。
まあ、あの格好をしている時点で人間の可能性は低いと思っているけど。
とりあえず、挨拶とお礼をして敵対する意思は無い事を伝えないと。
「あの……、先ほどは怪物から助けて頂いてありがとうございます。女の子なのに強いんですね」
よし、当たり障りの無い無難な話題で挨拶ができたかな。
さあ、友好的か敵対的な返答か。
コブリンに襲われそうになった時とは、また別の緊張感が生まれる。
心臓がドキドキしてきた。
どんな返事が来るのか。
女の子三人は不思議そうに顔を見合わせてから、こちらに顔を向けると赤髪の少女が口を開いた。
「◆◇□※■」
「……」
「〇□◆◇□※■◎□」
「……は?」
「■◇◎〇□※■◎◆」
「全然、言葉が分かりません」
一瞬、驚いてポカーンと止まってしまった。
俺は、言葉か理解できないと首を左右に振って相手に伝える。
赤髪の少女も俺の言葉を理解できなかったのか首を傾げて困った表情を顔に浮かべている。
赤髪の子の両隣にいる2人も同じく首を傾げている。
この子達も俺の言葉が理解できなかったようだ。
泥人形の子は、終始無言だったけど何の反応も無かったところを見ると、この子も理解できていないだろう。
赤髪の子は、鈴を転がすような綺麗な声だったが、言葉の意味が分からない。
ここで異世界の定番ネタ。言葉が通じないがでてくるとは。
確かに日本じゃないのに相手が日本語で話しかけてきたら驚くけど。
せめて何故か言葉が通じてしまうというお約束があってもいいと思ったけど、そんなに世間は甘くなかった。
この森の広さはわからないけど、コブリンの他にもまだ危険な動物やモンスターがいそうだ。
始めに接触できたこの世界の住人らしき少女達とは友好な関係を築きたい。
コブリンに圧勝できるだけの戦闘力もあるんだし、一緒に行動できれば俺の安全も高まる。
この世界とこの周辺の情報が集まるまで行動を共にしたい。
それに女の子と一緒に行動出来れば楽しいそうだし。
少女三人は、俺に理解できない言語で俺の方をときどきチラッと見ながら何か話し合ってた。
俺のこれからの処遇を決めるために話し込んでいると思うけど、どう殺すかという相談をしているという事だけは勘弁してほしい。
でも、最初に問答無用で襲って来なかったということは、俺が殺されるいう可能性は若干低いかもしれない。
「□※■◇◎□※■◎◆□」
「■◇◎■◇◎〇□※■◎」
複数の女の子の驚くような叫び声が聞こえたので思考の世界から我に返ってみると。
赤髪の子が俺を指差ししていて青髪の子と緑髪の子が俺の事を驚いたような表情で見ていた。
赤髪の……いい加減髪の子、髪の子というのも面倒くさくなってきた。名前が分かるまで赤、青、緑、土でいいや。
赤が何か提案して他の二人が驚いているっていう構図かな。
赤が満面の笑顔でトコトコと俺に近づいてきた。身に纏うのはビキニのような形をしている炎だけ。素肌の上でメラメラと勢い良く燃えている。
どういう原理か解らないけど火傷しないのだろうか。
彼女の表情を見る限り全然苦痛を感じていなさそうだけど。
俺の身体の胸くらいまでの身長なので日本でいう小学校高学年女子という感じかな。
時間帯は夜らしいので彼女の纏う炎が暗闇を照らしている。
ちなみにコブリンの巨大な焚き火の炎は、薪を追加する者もいなく、巨大な水滴が破裂した時の水を被っていて小さくなっていたが、それでもまだ周囲を照らすには充分な火力だった。
赤髪を肩で切り揃えていて勝ち気そうな雰囲気だ。胸は年相当。
つい男の性でこの子の身体を眺めてしまう。
「□◎□※※◆」
俺から二、三メートルの所でこの子は立ち止まり、何かを話ながら万歳をするように両手を上にあげたり下げたりという謎動作を繰り返している。
「おっ、お、おおお?」
まさか近距離で必殺必中の攻撃してくるのかと思い思わずビビって後退りをしてしまう。
「◆□◆◇※◆□◆◇◇◎◆□」
「この動作は何だ?」
「◎■◇◎□◎◇◎※◆◎」
俺も同じく万歳を繰り返してみる。
暗い森のなかで変わった格好の少女と向き合って二人で無言で万歳を繰り返しているというシュールな状況が数分続いたところで、目の前で笑顔を浮かべていた赤の子は意志疎通できない状況の不満からか、頬膨らませ唇を尖らしてきた。
言葉は理解できないが、意志が通じないのでだんだんと不機嫌になっているのはわかる。
子供らしい不満の表し方で、不満顔もなかなか愛らしく可愛かった。
ここで怒らせたらこの場で見捨てられたり、最悪殺されるかもしれないと思いこの万歳動作の意味を必死に考えているがまったく思いつかない。
赤の子が何かを閃いたようで頬を膨らましていた表情をあっという感じの表情に変え、目をぱちくりさせると、にこっと笑顔を浮かべるとその場所でしゃがみこみ隣の地面を右手でポンポンと叩いた。
俺は意味が理解できたという感じでポンと自分の両手を叩いた。
「あー、隣に座れかな?」
さっきの万歳動作との関連が分からないけど、とりあえず赤の子の右隣にしゃがみこんで、横にいる赤の子の顔を見ると、今度は正解だったらしく赤の子は満足そうな微笑みを浮かべ頷いている。
「◎□※■◎◆□◆◇※」
赤の子が緑と青の子に向かって右手を振って何かを叫んでいる。
今、気づいたけど肩が触れ合いそうな距離なのに、なぜか炎が熱くない。服にも燃え移りしない。不思議だ。
隣を見ると赤の子が身体を俺の方に正面を向けてしゃがみ直していた。
俺も彼女の正面に身体を向けたほうがいいのかなと顔を横に向けながら考えていたら、赤の子は両手で俺の左腕を挟み込むように掴むとそのまま首をつき出してきて。
ちゅっ
俺の唇にキスをしてきた。
山中直登、十六歳。名前も知らない女の子と異世界でファーストキスを経験する。