七話
キーンコーンカーンコーン……キーンコーンカーンコーン
やっと最後の授業が終わったと同時に朋輝が話しかけてきた。
「シゲキックス〜大丈夫か〜」
「あぁ」
俺は朋輝に生返事をしながら、帰る支度を始めた。
朝、個別面談室で五井に言われたことのせいで、授業内容が全く頭に入らなかった。
「シゲキ、朝の件はすまなかったって。先生の話で納得したから」
こいつ……昼休みの時、俺の話を全く聞かなかったくせに……。
朋輝が騒ぎ立てるせいで視線が集まり、弁当が食べずらかった。
「はいはいともりん、わかったよ」
俺はそう言いながら、バックの中に教科書を入れようとするが、何かがつっかえてうまく入らない。
取り出してみると、侑果に渡す予定の弁当だった。
いつも、侑果が持って帰ってたからなぁ。
どうして休んたんだろう……いや、今は侑果の無事を確認するのが先だ。
心の中の疑問を隠すように、俺はその弁当箱をバックの隙間にねじ込んだ。
「なあ、シゲキ〜」
また始まったよ……。
昼休みが終わる10分前に、水木先生が勘違いだと話してくれたおかげで、ある程度誤解は解けたが……
「ところで、実際はどうなんだ?」
それ以降、こんな感じに朋輝がしつこく聞いてくるようになった。
「それ、私もき〜に〜な〜る〜」
三ツ井も参戦してきた。
その、なんか抑揚つけた言い方がカンにさわる。
「もういいだろ。何度も聞かれて、耳にタコができそうなんだ」
「でも、気になるんだもん。ねえ、まいちゃん……まいちゃん?」
三ツ井は、誰もいない席に振り向きながら呼びかけた。
「そういえば、いないね」
朋輝も気づいたようだ。
「五井ならもう帰ってる」
「え、それっていつ?」
三ツ井……親友なんだろ、気づいてやれよ……。
「俺が教室帰った時にはもういなかったぞ」
「もしかしたら、朝いたのは本当に五井か?」
何言ってるんだ? こいつ。
「そうだね……まいちゃん、今日は来ないはずだし……」
三ツ井まで……。
「おいおい、五井はちゃんといただろ……」
「それにゆーやんもいないし……」
そうだ! こいつらとダベっている暇はない。
「シゲキックスどうした? 急に立ち上がったりして」
「すまん、朋輝。俺、先に帰るわ」
「え〜、なんで〜」
三ツ井の頬っぺは、食べ物を詰め込みすぎたリスのようになった。
こんなに伸びる頬っぺたは、三ツ井以外見たことがない。
「どうだっていいだろう。じゃ、またな」
俺はバックを掴み教室を後にした。
「何、急いでるんだろうね……」
「さあ……シゲキックスのことだから、ゆーやんの様子でも見に行くんじゃないかな」
「そうかもね……どころでさ、ともりん」
「何? さやちゃん」
「まいちゃんって、転校生だっけ?」
「何言ってるんだよ、五井さんと親友って豪語しているのに知らないって……ックックック、ウケる」
「も〜ともりんの意地悪。じゃあさ、ともりんはわかるわけ?」
「そりゃな、五井さんは……あれ?」
「ほら〜、ともりんもじゃん」
「ダメだ、まったく思い出せない……」
「もしかして……まいちゃんって幽霊?」
「……かもな」
「……ともりん、そこは否定して……本当に幽霊のような気がしてきた……」