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失われたモノ  作者: sinson
第1章 ささやかな日常だった……
6/8

六話

「なんだよ、マイ、急に改まって」

「シゲキ、今から言うことは、ゆーやん以外誰にも言わないで。いい?」

彼女としては珍しく強い口調で言ってきた。

「わかった」

俺は強く頷きながら答えた。

「覚えてるよね、私の秘密」

五井の秘密か……

「あれだろ、PCがあれば何でもわかるって言ってたやつ」

「そうよ、私の手にかかればデジタル情報なら何でもわかるわ」

そう、五井は凄腕のハッカー……らしい。 

「もちろん、あなたの秘密もね」

「でも、マイのことだから、悪用はしないでしょ」

俺がそう言うと、五井は顔を逸らした。

「やっぱり変わらないのね」

ぼそぼそと言っていて聞こえなかった。

「マイ、なんか言ったか?」

「シゲキは自分の秘密を知られても、平気なんだね」

五井は苦笑いしながら言った。

心外だ、俺も知られたくない秘密もある。

でも……

「知られたくないって言っても、マイはもう知ってるんだろ」

五井はそれを聞くと悲しそうに少し俯いた。

「うん……ごめんね。私、前にも話したけど、色々あって人が信用できなかった、だから」

俺は五井の頭に手を置いて撫でた。

「知ってるよ。入学時、クラス全員の個人情報調べたんでしょ。そのことはもういいって」

「だって……」

「マイ、変わるって決めたんだろ。過去の過ちを繰り返さないようにって、それでいいんだよ」

五井は俯いた顔を上げ俺を見た。

「でも……もし私が約束破ったら、どうするの」

「お前に、そんなことができるのか?」

「えっ……」

声を低くして言うと、五井は不意をつかれたようだ。

「もし、秘密をバラしたら、こちらも同じことをするだけだ」

彼女は目を見開いた。

「だから、その、なんだ……抑止論というか……ある意味お互い様だ。だから気にすんな」

あー、うまく言えねぇ。

俺は気恥ずかしさをごまかすため五井の頭をわしゃわしゃ撫でた。

「ちょ、シゲキやめて。髪がボサボサになっちゃう」

「あぁ、ごめん」

手を頭から離した。

「ありがとう」

五井はまた小さい声でボソッと言った。

「ん、また何か言ったか」

「……バカ」

「何だと」

確かに学力では負けるが、バカはないだろ……バカは。

「まあまあ、気にしないで。それに少し話がそれちゃったね」

「そうだな、でその秘密がどうしたんだ」

「今、ネットの掲示板などで噂になってる話しってる?」

そういえば、朋輝のやつが言ってたな。

2チュン掲示板で面白い話があるって。

「あれか、人類滅亡説。今年、隕石が落ちて来て……」

「はぁー、確かにそれも噂になってるけど……そうじゃなくて」

「他になにかあるのか」

「ふっ、わかってないのね」

ふってなんだよ。

「で、なんなんだ? 教えてくれ」

「世界中で天文学者や、航空宇宙工学者、その関係者が失踪しているのよ」

「それは、本当なのか?」

本当なら侑果や祐作おじさんが危ない。

「多分当たってると思うわ。確かゆーやんのお父さんって有名な天文学者だったよね。心配になってね……詳しく調べるから、少し目をつぶっていてくれないかな?」

五井は俺の目を見つめてきた。

「ああ、頼む。これで俺も共犯だ、約束少し破ったのは内緒だぞ」

「うん! あとゆーやんのが無事か確認して」

「もちろん、わかった」

「私、もう帰るね。先生には親が伝えてると思うから」

五井はそういうと窓のを開けて、枠をまたいだ。

「おう、気をつけて」

「そっちこそ、じゃあね」

そう言って窓の向こう側に消えた。

キーンコーンカーンコーン……キーンコーンカーンコーン

チャイムが鳴った。

もうそろそろ教室に戻らないと。

「そういえば……ここって三階だったよな……」

慌てて窓から外を見た。

太陽が照りつけるグラウンド。

そこから体育の授業を終えた生徒が、こちらに戻ってくるのが見えた。

もちろん、五井の姿は見当たらない。

「どこに消えたんだあいつ……」

まあ、考えても仕方がない。

あいつが変なのは今、始まったことではない。

俺は窓を閉め、来た時のように元通りにし、鍵を閉めて個別面談室を後にした。


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