五話
俺は個別面談室、通称牢獄に来ている。
この部屋は、犯罪行為や暴力行為などの非行を行った生徒を改善するための面談室、ということになっている。
なのでこの部屋に入ると、国語の佐々木先生を筆頭に三人以上の先生たちにこってり絞られるらしい。
「中辻、とりあえずそこに座れ」
水木先生に言われ奥の椅子に座った。
噂とは違って水木先生一人しかいない。
俺は何をしてしまたのだろうか?
特に悪いことなどした覚えがない。
「さてと中辻、なぜ呼ばれたかわかるか?」
さて噂の審問が始まった。
〜十数分後〜
ただ単に水木先生の勘違いだとわかった。
だが俺と侑果に何かが起こるだと、俺と侑果はそんな仲じゃない!
それに俺はいいが侑果に失礼だ!
侑果は優しく真面目で、笑顔にそばかすとメガネが妙に似合う、そんなやつだ、俺なんかに侑果は似合わない。
俺は少し淀んでいた、深夜遅くまでゲームをやっていたこと言った。
言いたくなかったのは、それを知ったら侑果が心配するからだ。
あいつには心配かけたくない。
「わかった、わかったから落ち着いて」
少しヒートアップしてしまったみたいだ。
心を落ち着かせ、先生の顔を見た。
「すまん、こちらの勘違いだ。お前が遅刻したこと、三原や五井が言ったこと、そして侑果か連絡もなしに休んだことが重なって違った結論を導いてしまった。他の生徒にもきっちり言っておく、本当にすまん。」
先生はそう言って軽く頭を下げた。
侑果が休んだ?!
それも連絡なしに?!
ちょっと待て俺、聞き違いかもしれ、ないもう一度確認するんだ。
「先生……今、侑果が連絡もなしに休んだって言いましたか?」
「あ、ああ、そうだが……」
あの侑果が? 小学校も中学校も皆勤賞をとったあいつが?!
「そんな、まさか……あいつが休んだりなんか……!!」
そう呟いた時、あることを思い出した。
中学校二年の夏休みの時、一回だけクラブ演習休んだっけ。
あの時、何で休んでたっけ。
「おい、どうしたんだ中辻。急に立ち上がったりして」
「先生、帰ったらゆーやんの様子見てみます」
「何か思い当たることでもあったのか?」
「まあそんな感じです」
先生は俺の目をじっと見た後、少し頷いて言った。
「わかった、その時プリントも持って行ってくれ、頼んだぞ」
俺は立ち上がった先生に肩をポンと叩かれた。
「明日、報告に来ます」
「報告待ってるぞ」
先生はそういうと個別面談室の扉を開けた。
「チャイムがなったら教室に戻れよ。次は苦手な英語だろ、頑張れ」
先生はどこかに行ってしまった。
侑果がいなかったことに気付けなかった……
何やってるんだよ俺。
それにしても中学の時、だよな……
「本当に何だったっけなぁ」
侑果が休むようなことだ。
「思い出せない」
「本当に思い出せないの?」
「ああ、何だか引っかかるんだけど……」
うん?
独り言のはずなのに返事が返ってきた。
「あれ」
僕は面談室を見渡した。
「だ、誰もいない」
ついに幻聴が聞こえるようになったのか……
「シゲキ、ここよ」
そう言いながら五井が机の下から出てきた。
「ああ、何だ五井さんかぁ、幻聴か何かかと……ってなんでいるんだ五井! 今授業中だろ!」
「大丈夫、佐々木先生は、今日私が来ていることを知らないわ」
スカートについたホコリを叩きながらそいう言った。
「だからと言ってお前はなぁー」
「ふっ、私は気付かれないプロなのよ」
五井はメガネを指で押さえて格好をつけた。
「そう言いながら、去年俺やゆーやんに気付かれたじゃないか」
「あら、なつかしいわね。そういえばあれから半年以上経つのよね」
去年同じクラスになった時、授業中にいなくなる女子がいた。
それに気づいた俺とゆーやんが、心配して声をかけてからの腐れ縁だ。
「もうやめとけって言ったはずだろう。先生に気付かれたりしたらどうする」
「心配はないわ、あなた達みたいな変わっている人はそうそういないもの」
「変わってるって言われてもな……」
「まあ、いいじゃない私の本性がわかったのだから、それに……あなたと私、そしてゆーやんしかいない時はマイって呼ぶ約束でしょう」
はぁ〜、だからこそ面倒なんだよな。
「で、どうした。わざわざ審問でも聴きに来たのか」
「そうじゃないわ、さーちゃんと三原が面白そうな誤解を招くことを言ったから、それに乗っただけよ」
「止めろよな……」
まあ、五井が周りの話しの流れを止めるほど喋れるとは思えないが。
「ちょっとゆーやんのことで話があるの」
五井が珍しく真剣そうに言った。