三話
「はぁはぁはぁ」
やっと教室の前についた。
暑い中、自転車で坂道を全力ダッシュをしたのでもう死にそうだ。
教室に近づくにつれ、セミの大合唱に負けないくらいの大きさで、教室の中から女子の黄色い叫び声と先生の怒号が聞こえてきていた。
何が起こってるんだ……
俺は嫌々ながらも、扉を開けた。
ガラガラ……
「すいません。遅刻しました」
俺が教室に入ると、先ほど聞こえてた騒ぎが嘘のように鎮まった。
そして視線が集まった。
何だろう……視線が何だか冷たくて生温かい。
そしてなぜか誰も動こうとしない。
教室を見回してみると、両手で自分の肩を抱いている女子がいた。
視線が合うとその子は目をそらし、顔を手で覆った。
本当に何なんだ……
俺は朋輝に視線でSOSを送った。
それを見て朋輝が頷いた。
「シゲキックスおはよう。早速だけどみんなが聞きたいことがあるみたいなんだ。そうだろう?みんな」
朋輝は周りに聞こえるように言った。
クラスメイトのほとんどが頷いた。
担任の水木先生も頷いていた。
なんだか俺の話題になっていたようだ、でも俺に聞きたいことって何だろう……
「ねえねえシゲもん、ゆーやんとどんな仲なの?」
三ツ井が急に聞いてきた。
俺と侑果か……
家が隣で小さい頃からよく一緒に遊んできたな。
祐作おじさん、侑果のお父さんに連れられて、近所の神社で一緒に天体観測してたっけ。
どうなんだろう?友達というか、家族みたいな感じなのだろうか……いや、なんだかそれはいやだ。
「俺は……」
俺が口を開くと、また視線が集まった。
言いづらい……
「俺はゆーやんのこ……」
キーンコーンカーンコーン……キーンコーンカーンコーン
そこでちょうどチャイムがなった。
「はいはい、朝礼は終わり!一時間目は国語だろう、急がないと佐々木先生が来るぞ」
水木先生がそう言うと、教室にいるみんなが慌てて準備をし始めた。
俺も国語の準備をしようとしたのだが……
「中辻は話があるから、ちょっと来い」
水木先生に肩を掴まれた。
「えっ、でも授業は……」
と俺が言いったが、
「佐々木先生には言っておくから、荷物を持ってついて来なさい」
と言われてしまった。
水木先生と教室を出ると、ちょうど佐々木先生がやってきた。
「あら、水木先生、何かあったのですか」
「佐々木先生、ちょっとこれから問題があるかどうか個別面談室で確認するんですよ。中辻くんを借りますね」
問題ってなんだろう……
「わかりました。中辻くんあとでプリント渡すから、今日中に提出しなさい」
あ〜あ、佐々木先生のプリントかぁー
多分山ほどのプリントが待っているだろう。
「はい」
でもやるしかない。
プリント提出しなかったやつが、土日に呼び出されて倍の量をやらされたらしい。
少なくとも俺はそんなことはごめんだ。
「中辻いくぞ。では佐々木先生、授業の方よろしくお願いします」
水木先生はそう言って歩き出した。
俺は水木先生に付いて行った。