二話
キーンコーンカーンコーン……キーンコーンカーンコーン
「起立! 礼! 『おはようございます』 着席!」
「週直係ありがとさん、もう6月29日だ今日を含めあと2日で7月だ、もう夏バテしてるやつはいるか〜てな訳で出欠確認するぞ〜今日は誰がいない? 五井か?」
私がそう聞くと、クラスのムードメーカである三原が答えた。
「先生、五井さんは来てますよ」
あの五井が?
五井はなんらかの事情で2週に1回月曜日休んでいる。
病気か何かだろう、私には何も知らされていない。
もちろん休むのは親から許可されているようだ。
その五井が来ているとは、今日は雨が降るかもしれない。
「ほお、五井がいるとは、……五井、大丈夫か?」
「大丈夫……」
五井は下を向きながら蚊の泣くような声で答えた。
口数は少ないが、嘘はつかない真面目な子だ。
大丈夫だと言ったら多分大丈夫だろう。
「先生〜ゆーやんとシゲもんが来ていませ〜ん」
可愛いと人気が有る、三ツ井が腕をひらひらと振りながら言った。
「中辻と宮沢か……」
中辻は、まあわかるが……宮沢が休むとは意外だ。
去年も私の生徒だったが、今まで無遅刻、無欠席。去年一年生の中で唯一皆勤賞をもらった子だ。
その子から、休みの連絡すらないなんて……槍でも降ってくるのか。
「宮沢から休む理由とか何か話聞いてる人いないか? 三ツ井どうだ?」
「うーん、ゆーやんと土日話してないし……。まいちゃん知らない?」
「知らない……」
五井は小さく首を横に振った。
「じゃ〜ね〜、ともりん!」
「ごめん、僕も知らないんだ……」
三原はすまなさそうに言った。
「シゲもん〜」
三ツ井は斜め後ろの席を見た。
「中辻もいないぞ」
私は三ツ井にそう言った。
「じゃあ、シゲもんとゆーやん、二人に何かがあったのかなぁ〜」
三ツ井の言葉に私はある予想をしてしまった。
まさかな……
「そういえば土曜日、シゲキックスが明日夜まで親がいないから、新しいことに挑戦するって」
「……ゆーやん、休日、楽しみにしてた」
三原と五井が続けて言った。
もしかしたら……いやいやいや、中辻は知らんが、あの宮沢のことだ何もないはずだ。
「そういえばシゲもんとゆーやんって幼馴染だよね〜家も隣って言ってたし」
忘れてた……これは確認する必要がありそうだ。
この話を聞いて、他の生徒も騒ぎ出した。
「成樹ってよく宮沢と一緒にいるよな」
「私、侑果と中辻くんが仲良く買い物しているとこ見たことあるよ」
「俺もそいつらが制服姿のまま、学校の裏にある神社への階段登ってるとこ見たぜ」
「さすがにそれはないでしょ。見間違えじゃない?」
「でも、もしかしたら……シゲキックスのやつ……」
「中学の時から付き合ってるって噂があったけど……ついに来たみたいね……」
「だからあの三原さんが休みなのか」
「中辻くんが『侑果、今夜は眠らせないぞ』とか」
「「キャーー!!」」
「おいお前ら落ち着け! 騒ぐな!」
私は怒鳴ったが全く効果がなかった。
だめだ、集取がつかない。
ガラガラ……
そんな時教室の扉が開かれた。