第七話 私の思い
私はずっと一人だった。
小さい頃から魔法が役立たずだとわかった瞬間まるでそこにいないように扱われた。
今さら、親の愛情が欲しいとは思ってない。
だけど自分はこんなことができるということを何でもいいから証明したかった。
だがそれも無かった。
そしてしばらく時が経ち親・・・いや龍王からこの学園に行くように指示された。
私はその瞬間、『ついにきたか・・・』と思った。
むしろ今までこの王城に住まわせてもらっていただけ奇跡だと思っていた。
なので返事はすぐに出た。
『わかりました』と。
国を出る時多少は期待したが、やはり誰も私を見送ってくれる人はいなかった。
いや、性格には一人いた。
龍王・・・私の父に当たる人だ。
だが、私はそれを見送りとは考えなかった。
それが仕事なのだろうと思ったからである。
そして私は国を出た・・・いや出された。
隣町にある転移門からエターナルへ向かい、そしてついた。
転移は一瞬だった。
瞬きした時にはもう風景が変わっていた。
そこで私は始めてみる光景に胸を輝かせた。
人が普通に笑っているのだ。
国では笑ってる人なんて一人もみなかったからである。
そして、私は学園に期待を抱いた。
『私でも何かできることが必ずある』と思いながら。
だが現実は違った。
雷魔法ということだけで同じ特別枠の人達から侮蔑の目で見られた。
そこで私は再び悟った。
『ああ・・・ここも同じなんだ・・・』と。
それから部屋に一日中いた。
朝と昼間は嫌でも特別枠の人達が話しかけてくるからだ。
しかもそれは心配の類ではなく侮辱の類なので朝と昼は外に出る気にはなれなかった。
その事情を察したのがコールマン先生だった。
コールマン先生は他の人達とは違い優しくしてくれた。
と言っても朝と昼のご飯を持ってきてくれた時に少し喋っただけだが・・・
そして夜になった。
その時、私は何を思ったのかふらりと部屋の外に出た。
・・・そして声を聞いた。
何かが私を呼んでいるような声だった。
その声に導かれるまま私は足を進めた。
そしてその声が聞こえてきた部屋の前に私はいた。
ゆっくりと扉を開けたら中には真っ白な扉があった。
・・・『引いて』と言われた気がした。
そして私はその扉を手前に引いた。
その瞬間、扉の向こうに男の子が立っていた。
目は黒く、髪も黒かった。
その目と私の目が合った瞬間、私と彼は『え?』と同時に言った。
・・・目が合った次の瞬間、私は意識を失った。
目が覚めると目の前に一人の男の子がいた。
思考が真っ白になった。
次の瞬間私は大声で叫んでしまった。
彼は『ちょお!?』と言って驚いていた。
そして私が入ってきた扉の方から足音が聞こえてきた。
扉を開け中に入ってきたのは学園長だった。
そして白い扉の方を見て驚いていた。
「そこにいる君は確か・・・アルメシア・ドラゴニア君か・・・」
その言葉に私は返事をした。
「君がこの扉を開けたのか?」
『はい』と答えた。
その言葉を聞くのと学園長は少し考え始めたような顔になった。
「おい、そこの・・・えー・・・人族?でいいのか?」
学園長が考えるのをやめるのと同時に扉から現れた男の子の方を向きながらそう言った。
・・・が男の子はどこか遠い目で空中を見ていた。
「おい!君!」
「は、はい!?」
呼ばれたことに気づいたのか男の子は物凄く驚いていた。
・・・それからは異世界とか、この学園に入学するやらの話で頭が混乱してしまっていた。
そして再び私に声がかかる
「それで・・・何故、アルメシア・ドラゴニア君はこの部屋に入ったのかね?」
「そ、それは・・・」と言った後悩んだ。
だって声が聞こえたなんて誰も信じてくれるわけがない・・・
「何かいいづらいことかね?」
・・・正直に言った方がいいよね?
そう思い私は正直に話した。
その話をした後、私は他言無用だと言われて部屋に帰った。
・・・それからずっと気になってた。
あれから六日も経つ。
私のせいでつらい目にあってないかな?
そう思うたびに心が痛くなりまた泣きそうになった。
「・・・外にいけば会えるかな?」
言葉とは不思議なものでふとそう言っただけで会えるような気がした。
そして・・・実際に会えた。
彼は笑っていた。
そして彼にかけられた言葉で私は泣いてしまった。
・・・その後あった、コールマン先生の奥さんは怖かったけど。
そんな感じで心の痛みは消えた。
名前も教えてくれて私の友達になってくれた・・・
ずっと心に空いていた穴が埋まるような気持ちになった。
それから彼は私の悩みを聞いてくれた。
「うん。私は・・・雷魔法の使い手なの」
「・・・で?」
「・・・え?」
・・・・・・え?
反応が薄いような気が・・・?
「で?ってそれだけ?」
「え?他に何を言えば?」
「ええ!?他にもあるよ!なんでそんな役立たず魔法をとか。最弱魔法とか!」
「あ!ああ!そう言うことか!」
「むしろ他に何を思ったの・・・」
「そうか・・・そういえば雷魔法は最弱ってのが常識だったな」
「そうだよ。だから私は・・・」
「なら・・・一緒にその常識を覆さないか?」
「え・・・・・・?」
ニヤリといたずらをするような子供みたいな顔でそう言ってきた。
ユウは雷魔法を最弱だと思っていない・・・・・・?
「ど、どういうこと!?」
「まあまあ」と私を落ち着かせるように私の頭を軽く撫でた。
「ふにゃ!?」
そそそそういえば!!?私泣きながら頭撫でてもらってた!?
状況を理解するのと同時に物凄く恥ずかしくなった。
そんな私を無視するかのようにユウの話は進んでいく。
「そもそも雷魔法が弱いってことがおかしいんだよ」
その言葉に私は呆然となった。
「だって、体全体から放出するように電発生させてたら、そりゃ地面に吸われますわ。分散して逃げますわ」
え?え?いったい何を言ってるの!?
困惑状態の私を見てユウは焦ったように謝ってきた。
「ああ!ごめんごめん!言ってもわからないよな」
「う、うん。それよりも地面に吸われるってどういうこと?」
「あー・・・説明が難しいから簡単に聞いてくれよ?」
「うん」
「この世界で言う雷魔法は無意識の内に全方向に放出してるんだ」
全方向?でも私ちゃんと手に魔力を集めてそれを雷に変換しようとしてるけど・・・
そんな私の考えていることがわかるようにユウはそのことについて説明し始める。
「そうだな~手に集めた魔力を変換するんじゃなくて、体全体で変換した雷を手に集める感じかな?」
・・・つまり、私がしているやり方は魔力を消費しているだけ?
「そしてそれを前に放つように投げると・・・」
『バチッ!』
小さな音を立てて黄色い物が扉に向けて飛んでいきぶつかった。
「と・・・このようになる」
「い、いまのって・・・神の怒り!!!??」
「ちょ!?おちつ・・・!!(ガクガク)あばばっ!!!」
興奮しているせいで私は彼の肩を掴み引っ張ったり押したりを繰り返した。
「お、教えるから!!!?とりあえずガクガクやめて!!?」
「ハッ!?ごめん・・・」
首を痛そうにさすっていたがそうなるだけの理由があるのだから仕方ないよね?
「とりあえず、これは神の怒りなんかじゃなくて雷だ」
「・・・・・・え?」
雷って・・・神の怒りが?
そんな馬鹿なと思いながらも今見せられた魔法を思い返してみるとそんなことは言えなかった。
「そ。これは収束、圧縮、方向放出をすることでできる雷魔法だ」
「???」
「あー・・・そうだな~・・・・・・」
何かないかとユウは周りを見始めた。
「お!これならわかりやすいかな?」
そう言ってユウが持ってきたのは容器にはいった水だった。
「それが・・・?」
「えっとな。これはまず水だよな?」
それはそうでしょうという顔sたらユウに苦笑された。
「まあ、水なんだけど。じゃあこれをコップ二つに分けます。これで水は半分に分かれたよな?」
「う、うん」
「それを何回も繰り返すと水はどんどん減ってコップで場所をとるよな?」
そう言いながら彼はコップらしきものを部屋中に並べていった。
あれはなんだろう・・・?
ユウが使っていたのは紙コップだった。
なぜそんなものがあるかと言うと彼の唯一の持ち物学生バックに入っていたからである。
それを見たメアはコップのような何かと思ったのである。
「それでこの空になった容器が俺とメア、つまり雷魔法使いだと考えてな?」
「うん」
「じゃあ、これだけ散らばっている状況をメアはどう見る?」
「え?・・・一箇所に集めたい・・・かな?」
「そうだな。集めたいよな。じゃあこれを集めるにはどうしたらいい?」
「元の容器に全部入れる?」
「その通り。それが収束だな」
「あ・・・」
そうだよね・・・分散してるなら集めればいい。
「そしてこれを押しつぶすように小さく小さくしていくことを圧縮というんだけど・・・確か体積の量は変わらないから・・・」
前半の言葉は聞き取れたが後半の言葉はボソッと言ったのでメアの耳には届かなかった。
「まあ、後は方向放出は・・・見たまんまだな。飛ばしたい方向を強く思いながら圧縮していた物を解き放つ感じだな」
私は説明された通りにやってみた。
集中して・・・周りにある雷を感じる・・・
「あ・・・これが・・・」
これが・・・雷?
今まで全然意識してなかったから気づかなかった。
気づいた後は簡単だった。
手に収束させて圧縮し、放つ。
そして私の手からユウと同じような・・・同じ?
「ちょ!?でかいって!!?」
「あわわわっ!!?」
どうやら込めた魔力が多かったらしくユウが放った雷の5倍ぐらいの大きさになっていた。
そのことに気づいたユウが雷魔法で相殺してくれた。
心臓はバクンバクンとなって、あれが扉にぶつかったらと考えると冷や汗がでた。
「今のが雷魔法・・・?」
自分でも信じられないくらいに動揺していた。
「そうだよ。あれが雷魔法だ。ただちょっと力加減は覚えないとなあ」
「うっ・・・ごめんなさい」
「いやいや!別に何も起こらなかったから良しとしよう・・・な?」
「うん・・・」
そんな風に気落ちをしながらも心の半分は雷魔法のことについてでいっぱいだった。
むしろこんなに強い魔法が何故今まで?とも思った。
「やばっ!もうこんなに暗くなってる!?」
「あ。ほんとだ」
「えーと時間は大丈夫か?」
「・・・今から向かえばたぶん」
「そうか・・・じゃあ、また明日学園で会おうな?」
「うん。今日は本当にありがとう。私・・・がんばるから!」
「お、おう?」
そう言いながら私はユウがいた部屋から出て行き下の階にいたコールマンの奥さんに挨拶をして学園の寮に戻っていった。
そして・・・翌日。
私はダマッハに絡まれた。
それをユウが庇ってくれたというか喧嘩を挑んでいた。
「あの・・・二人ともごめんね?」
「別にいいさ。あいつにはちょうどいい雷魔法のお披露目相手になってもらおう」
「あははは・・・」と苦笑にも近い笑顔しか出なかった。
昨日のことを考えると本当にお披露目相手になってしまうと思ったからだ。
そんなことを思っていると二人は物騒な話を始めた。
「丸焼きにしないと駄目だからね?」
「何を当たり前なこと言ってるんだトルク」
「そうだよねー。あははは!」
「そうだぞ。はははは!」
「・・・・・・・・・・大丈夫かな?」
ちょっとだけ相手に同情したメアだった。
しばらく待つと新入生入学式が始まった。
予想通りダマッハとユウは互いに互いの名前をいいあった。
そして私とトルクも同じように名前を指名された。
指名した相手をみるとダマッハの周りにいた取り巻きだった。
・・・うん。頑張ろうって決めたんだ!ユウにその証拠を見せる!!
そう心に中で覚悟を決めたら言う言葉決まっていた。
それはトルクも同じようだった。
そして私達は返事をした。
「アルメシア・ドラゴニアその勝負受けます」
「同じく。トルク・デメシスその勝負受けます」
『これで最初に戦う魔法科の6人が決定した!さあ、決まった者は前へ!』
ユウとダマッハは私達よりも先に水晶に触れてその場から消えた。
そして次は私の番だった。
ユウ。頑張るから・・・この雷魔法に誓って。
そして水晶に触れ私は一瞬意識を失った。
「ここは・・・?」
意識が覚醒するのと同時に私は平らな地面の上に立っていた。
荒野が一番しっくり来る言い方だろう。
「おい!できそこない!」
その声が前方から聞こえてきた。
「今からお前をこの僕が潰してやるからそこを動くなよ!」
そう言って彼は火の玉、ファイヤボールを作ってこっちに狙いを定めていた。
「・・・もう、前の私じゃない。信じる自分を・・・雷魔法を!」
そうだ!もう役立たずじゃない!
覚悟は決めた!後は実行するだけ・・・!
「喰らえ!!」
そう言葉が聞こえるのと同時に私は私だけの魔法を声を張り上げて言った。
「雷よ!私を護る加護となれ!!」
『ライトニングブレス!!!』
・・・仕事が忙しくなってきたので投稿周期が遅くなると思います。
楽しみにしている方がたくさん・・・になるといいなあ・・・
まあ、そんな感じで迷惑をかけるとは思いますがこれからもよろしくお願いします。