第五話 割と堪忍袋って簡単に切れるですよ?
そして入学日当日・・・
佑とトルクは早めに[宿り木の窓]から出発していた。
「今日が入学式か・・・」
「そうだね~早く召還獣に私は会いたい!」
「くくく・・・俺は早く雷魔法を使いたい」
「性格変わってるよー」
ハッ!?
やっと雷魔法を披露できると思ったら、気づかないうちに変わってた・・・
「やあ、キヨミチ君」
トルクと話をしながら学園の門前についた瞬間声をかけられた。
声をする方向を見るとそこにはここに来た時にあった女性がいた。
「あ、学園長。おはようございます」
「おはよう。君はコールマンの娘のトルク君だったかな?」
「はい!親ともどもよろしくお願いします!」
「ははは。いい返事だ。ん?どうかしたのかねキヨミチ君?」
いや・・・改めて納得したというか予想通りというか・・・
「ああ!そういえば私の自己紹介をしていなかったね。私はアールディル・メトルフォレ。ここリーンフォリア学園の学園長などをやらせてもらっている」
「今日からよろしくお願いします」
「おや?あまり驚いてないね?」
そりゃそうでしょ。
よくよく考えてみるとコールマン先生のあの地図を見たときの反応と俺が呼び出されたあの部屋。
どう考えても一般の職員が入れるような場所じゃなだろ。
「ふふふ・・・聡い子は好きだよ?」
「それはどうも」
「なんだか反応が冷たいじゃないか」
「人をからかいますって顔している人にまともな反応したほうがまけでしょうこの場合」
「なんだ気づいていたのか」
やれやれと肩をすくめながら学園長は苦笑しながらそう言う。
「そうえいば、キヨミチ君の得意魔法は何になったのかね?」
「雷魔法ですけど」
「・・・そうか強く生きろよ」
すげーな雷魔法。
得意魔法、雷魔法って言うだけで同情してもらえるレベルか。
「くくく・・・そうか。あなたもまだそっち側だったな」
「・・・急にどうしたんだ?」
「あー学園長は気にしなくてもいいと思います。一種の病気みたいなものですから」
「むう?そうなのか?」
「はい。大丈夫です。むしろ今日入学式である模擬戦でやらかさないかが心配で・・・」
「それはいったいどういう・・・」
とトルクが学園長に佑の状況を説明していて、それに対し疑問をあげようとした学園長だが、遠くの方から『学園長どこですかー!!?』という声がしてきたため、その質問は途中で遮られる事になった。
「はあ・・・やれやれ呼んでいるようなので私はもう行くよ」
「「あ、はい」」
そう一言だけ残して学園長は二人の前から呼んでいた職員らしき人物に向かっていった。
「いこっかユウ?」
「りょーかい」
また、佑とトルクも入学式が行われる特設会場・・・魔法練習用設備、日本で言う所の体育館にむかった。
「おおーここが入学式が行われる場所かー」
入った瞬間、でた言葉はそれだった。
いったい何人を収容できるんだよこの大きさと言いたくもなったがそれは先に来ていた彼女に中断させられた。
「あ!ユウ~こっちだよー!」
その声の主はアルメシア・ドラゴニア。
今日、模擬線でやらかす内の一人の予定だ。
「ちょっとユウあの子って・・・」
「ああ・・・そういえば言ってなかったけ。昨日友達になった。龍の国の第一王女アルメシア・ドラゴニアだ」
「え?・・・・・・ええーーー!?」
いや、まあびっくりするよね。
「ユウ!早くー!」
「そんなに大声ださなくても行くって。後その大声は他に人がいるときちゃんと出そうな?」
「はうっ!?」
ちなみに現在この体育館でいいか・・・
この体育館には俺、トルク、メルの三人にしかいない。
他の新入生はゆっくりとくるみたいだな。
そして佑とトルクはアルメシアの隣に座った。
「えーと・・・私の名前はトルク・デメシスと申します。本日はドラゴニア様に会えて光栄の・・・」
「い、いいから!そういうのいいから!?」
「えと、ユウ・・・?」
俺は苦笑しながらトルクの本当に大丈夫?みたいな目に頷いた。
「じゃあ、あたらためまして。私の名前はトルク・デメシスっていうの得意魔法は水ね。よろしくね?」
「あ。コールマン先生の・・・」
「あーお父さんのこと知ってる?」
「うん。こっちに来てからはお世話になったの」
「そうなんだー何か変なことされてない?もしされているのなら・・・」
そうトルクが呟いた瞬間背後になにやら般若が出現した。
「ひう!?」
・・・般若でてますよ。トルクさん。
めっさメルが脅えてますよー。
「あ。ごめんねー」
「う、ううん。大丈夫」
「自覚があるだけアライアさんよりはマシか・・・」
「お母さんのは天然だからねえ」
と、そんなくだらない話、いや結構くだらなくないかもだけど。
他の新入生がぞろぞろとあらわれ始めた。
その中で馬鹿みたいに集団を組んでるやつらがこっちにきた。
そしてメルにそいつは話かけた。
「よお。落ちこぼれ龍姫さん」
「ッ・・・」
メルはそいつの言葉を聞いた途端泣きそうな顔になった。
よし。こいつは敵だな?
ぶちのめせばいいんだな?
そんなふうなことを考えて体を乗り出そうとしたらトルクがそれを止めた。
「(ちょっとまって!ユウここは我慢しないと駄目だよ!)」
「(入学式で問題を起こすと罰せられるからか?)」
「(うん)」
と俺達が小声で話してるのを目ざとくそいつはからんできた。
「おい、お前ら何か文句でもあるのか?」
「・・・・・・」
「けっ!できそこないにはお似合いのお友達のようだな」
なあ?いいか?こいつ今ボコしていいか?
そろそろ堪忍袋が限界突破しそうなんだが。
「まあ、せいぜい頑張れよ。できそこないの雷魔法使いさんよお」
ブチッっと佑の中で何かが切れる音がした。
ああ・・・そうかお前もか。
うん。
決めた。
模擬戦の相手絶対こいつを指名しよう。
ちなみに模擬戦は指名制で指名しなかった場合教師側がランダムで模擬戦の相手を決める。
「・・・名前は?」
「あ?」
「お前の名前はなんだって聞いてるんだ」
「虫けらに言う名前なんてあるのか?」
「虫けらにすら名前もいえないクズがいるのか?」
「言うじゃねか・・・オイ」
「クズにクズと言って何が悪い」
「いいぜ。お前、今日俺の模擬戦の相手に決めた。ボコボコにしてやるよ」
「それで名前は?俺の名は清道佑だ」
「バルコロ・ダマッハだ」
互いに互いの名前を伝えバルコロは去っていく。
向こうから指名してくれるとは・・・ヤってやるぞ・・・
丸焦げにしてやる・・・
「ふう・・・」
そんな風にどうやってヤってやるかを考えているとトルクが俺のやりきった感のあふれるため息につっこんできた。
「ふう・・・じゃないよ!?何普通にケンカ売ってるの!?」
「いや、ああしないと俺よりもトルクの方が危なかっただろ」
「まあ、それはそうだけどさあ・・・!」
なにをおっしゃいますかトルクさん背中から黒いものがチラチラでてましたよ?
俺がバルコロ・ダマッハに絡まれたのを申し訳なく思ったのか、メアは俺たちに謝ってきた。
「あの・・・二人ともごめんね?」
「別にいいさ。あいつにはちょうどいい雷魔法のお披露目相手になってもらおう」
なーに気にする必要はない。
やつは実験体だ。
「あははは・・・・・・」
「丸焼きにしないと駄目だからね?」
「何を当たり前なこと言ってるんだトルク」
「そうだよねー。あははは!」
「そうだぞ。はははは!」
「・・・・・・・・・・大丈夫かな?」
一人相手の心配をするアルメシアなのであった。