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第四話 出会いは唐突に

 そして、学園に向かう前日・・・佑は再びあの少女と出会う。

 出会ったきっかけは簡単だった。

 ただアライアさんから買い物を頼まれたからである。

 しばらくしてアライアさん行きつけのお店に行くと右往左往しながらウロウロしている少女を佑が見つけた。

 ただ、ちょっとその姿に驚いた。

 体は全身を隠すような外套を身にまとっていたためだ。

 何故?と思いながらも話かけてみることにした。


「おーい君?大丈夫か?」

「はわっ!?」


 急に話かけられたことに驚いたのかビクッ!とした後ゆっくりとこっちを向いた。


「えええっとととわわわたしゅははははは!!」


 うむ。カミカミであるな。

 ちょっとだけその姿に心をほっこりさせる佑なのであった。


「落ち着いて。はい深呼吸ー」

「え?あ、はい・・・すーーーはーーー・・・」

「落ち着いた?」

「落ち着きましゅた!」


 全然落ち着いてないね。うん。


「大丈夫だって。それよりも俺のこと覚えてる?」

「え・・・?あ・・・」


 今まで気づかなかったのか俺の顔を見ると驚いたような顔になった。


「えと・・・」

「あー・・・」


 そうか・・・そうだよな。

 考えてもみれば目の前にこちらの世界に呼んでしまったであろう人物をみたら、そりゃあ困惑するわ。

 

「大丈夫だ。気にしてない。むしろありがとうかな?」

「え・・・」

「その・・・なんていうかさ?きっかけはあんなのだけど、こっちの世界にこれてよかったと今では思ってるからさ」

「・・・・・・・」


 黙って俺の言葉を聞いてくれている目の前の少女は驚いたような苦虫を潰したような顔をしていた。


「だからさ・・・そんなに責任感を感じなくてもいいぞ?」

「・・・・・・(ホロリ)」


 え?泣かれた!?


「グス・・・ご、ごめんなさい!ずっとそのことだけが引っかかっていたから・・・・グス・・・」

「え?え?いや別に気にしてないから!?むしろ今この状況の方が困ってるから!?」


 急に泣かれると周りからは俺が泣かしたと思われているわけで・・・

 つまるところ視線が痛いですハイ!


「うえーん!!」

「どうしろっちゅうんじゃいいいいいいいいいいい!!!?」


 この時の佑の叫びはエターナル中に響いたとかなんとか・・・




 そして、さすがにあのままではまずいので[宿り木の窓]につれてきた。

 いやだってさ?さすがに泣いてる女の子一人放置はできませんよ?

 ・・・ただ泣いている女の子を[宿り木の窓]のなかに入れた瞬間、なにやら殺気がとんできたが。


「ユウ君~?その泣いている女の子はなにかしら~?」


『ゴゴゴゴゴゴゴ・・・!!!」


 何故だ・・・


「いや、ちょっと待ってくださいって!?」

「ひい!?」


 俺の言葉に驚いたのかはたまた目の前にいる女性の怒気に当てられたのかそんな声を出して震えながら俺の背中に隠れてしまった。


「私って~そんなに怖いかしら~・・・」


 そんな少女を見てアライアさんは少し肩を落としながら言った。

 いや・・・いっちゃ悪いですけどその怒気に耐えれる人はなかなかいないと思います。

 てか街で見かける契約獣より怖いんですが・・・

 ちなみに契約獣とは学園を入学する際に魔方陣で契約するものでその魔方陣から何が出てくるかは不明らしい。


「とりあえず話し聞いてもらえます?」

「ええ~勘違いしてたみたいね~」


 はあ・・・なんで今日に限ってこんなに神経を磨り減らさにゃならんのだ・・・

 そう思いながらもアライア事情を説明していく佑なのであった。

 もちろん異世界と言う話を除いてだが。


「そうなの~扉を開けて互いにぶつかったのが始まりで~それを謝りたくてもどこにいるかわからなかった。けど~街で声をかけられたらその時ぶつかった人だとわかった瞬間泣いちゃったのね~」

「は、はい・・・」


 うん。話だけ聞いてると俺そうとう悪者扱いだな・・・


「そういえば~あなたの名前を聞いてなかったわ~」

「え?え、えと~・・・」

「なにかいいづらいのかしらあ~?」

「い、いえ。そういういうわけでは・・・」

「なら~教えてくれるとありがたいわ~ユウ君の友達みたいだしねえ~」

「と、友達!?」

「俺と友達は嫌ですか・・・そうですか・・・」


 ふふふ・・・わかってさ。

 俺にこんな可愛い友達なんてできるはずがないことなんて・・・


「そういうわけでは!?」

「それで~あなたの名前は~?私はアライア・デメシスよお~」

「デメシス・・・?コールマン先生の奥さんですか?」

「あら~夫を知ってるの~?」

「はい学園でお世話になりました」

「あなた新入生よね~?」

「は、はい。特別枠です」

「ああ~なるほどね~」


 特別枠?

 日本で言う推薦枠みたいなものか?


「私の名は・・・アルメシア・ドラゴニアです・・・」

「あら~びっくり~竜族の第一皇女様じゃないの~」


 全然びっくりしてるように見えないのは俺だけですか?そうですか・・・


「あれ?ってことは俺ってもしかしてとんでもなくヤバイ?」

「あらあら~首を刎ねられるぐらいですむかしら~?」

「そ、そんなことは絶対にしません!むしろ私には・・・」


 なんだ?急に落ち込み始めたぞ・・・?

 佑と同じく雷魔法の使い手であるアルメシアはほとんど厄介払いされようなものだとはこの時、佑達はしらなかったのである。


「私は・・・」

「・・・アライアさんちょっと部屋に行きますんでトルクには入ってこないようにお願いできますか?」

「・・・・・・わかったわ~頑張ってきてね~」


 全てを承知したような返事をアライアは佑に返したのであった。


「えーとアルメシアでいいか?ちょっと一緒についてきてくれ」

「え?は、はい」


 そう言った佑の後をついてくるアルメシア。

 どこか不安そうな顔をしているがそれは承知していることだ。

 そして部屋に着き佑はアルメシアをイスに座らせると話始めた。


「・・・急にこんなことを言うと困るかもしれいけど」

「え?」

「君が悩んでいることを相談してくれないか?」

「!?」


 この言葉にびっくりしたように肩をビクッとさせるアルメシア。


「俺も明日から学園に通うんだ。知り合いの不安ぐらい解決してやりたいんだ」

「・・・・・・私は」

「それとも不敬罪で罰せられるかな?」

「そんなことは私ではできません・・・」

「私では?」

「あ・・・」

「・・・じゃあ、俺の話から聞いてもらおうかな?」

「え?」

「俺はな、君にこの世界に呼ばれたで合ってるのか?いや、あの扉に呼び出された。きっかけは確かに君がドアを引いたからかもしれない」

「ッ・・・」

「そんなに自分を責めなくてもいいって。俺はな向こうの世界で生きていて生きていないようなものだったんだ」

「・・・・・・」


 ははは。

 まあ、突然こんなこと言われたら言葉がでてこないわな。


「理由は簡単。俺は親を知らない」

「え・・・」

「孤児だったらしい。ただ親かは知らないが俺に大量にお金を残していったんだ。そしてそれを目当てに俺を引き取ったのがいた。だけどそのお金に縛りがあった。俺が職につくまで・・・22歳になるまでそのお金を誰にも使われないようにしてあった」

「・・・・・・」

「滑稽だろ?俺を引き取ったやつもそれを知ると同時に優しい振りを止めた。まあ、そこからは淡々と毎日同じことを繰り返す日々だった。だけど15歳になった時に初めて自分が生きてるんだなあとも思った」

「・・・それはなんで?」


 お?興味をもったか?


「簡単だよ。初めて本当の友達ができた。初めて心から笑った。ただそれだけだ」

「・・・いいなあ」

「できるさ。君にも」

「え?」

「俺が君の始めて?でいいのかはわからないけど友達になる」

「・・・いいの?」

「ああ。俺にできることなんて限られてるけどそれでいいなら」

「・・・・・・私の友達になってください!!」

「もちろん喜んで」

「ううう・・・ありがとう・・・・・・ありがとぅ・・・・・・・」


 再び泣き始めたアルメシアの頭をゆっくりと撫でながら泣き止むのを待つ。

 そしてしばらくして・・・


「落ち着いたか?」

「うん。ありがとう。久々にすっきりした」

「ははは。こんなんでいいならいつでも引き受けるさ」

「・・・・・・ねえユウって呼んでいい?」

「ん?別にいいけど?」


 さっきまでの硬い言葉がほぐれて今では普通の少女らしいしゃべり方をするようになったアルメシアであった。


「ねえユウ話聞いてくれる?」

「ああ。えーと・・・アルメシアでいいのか?」

「いいよ。呼びづらいなら他の呼び方でもいいよ?」

「じゃあメアで」

「メアかぁ・・・うん。それでいいよ」


 先ほどとは違いちゃんと真っ直ぐとした笑顔を佑に見せた。

 ・・・ちょっと頬が暑くなったのは気のせいだと思いたい。


「じゃあメア聞かせてくれるか?」

「うん。私は・・・雷魔法の使い手なの」

「・・・で?」

「・・・え?」


 ・・・・・・少しの間沈黙の時間が続いた。


「で?ってそれだけ?」

「え?他に何を言えば?」

「ええ!?他にもあるよ!なんでそんな役立たず魔法をとか。最弱魔法とか!」

「あ!ああ!そう言うことか!」

「むしろ他に何を思ったの・・・」

「そうか・・・そういえば雷魔法は最弱ってのが常識だったな」

「そうだよ。だから私は・・・」

「なら・・・一緒にその常識を覆さないか?」

「え・・・・・・?」


 口をニヤリと効果音がつくぐらい笑いながらそうメルに言った。



 この時の二人は[双雷の誕生記]と自分たちが学園に入学してすぐ呼ばれ始められるとは思いもしなかった。

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