第二十五話 常識ってのは常に変わる物だ
そしてカンナと模擬戦で鍛錬するようになって1週間が経った。
今日は週1回の学園が休みの日だ。
それにしてもこの1週間で色々と勉強になった。
例えば受身の取り方とである。
思っていて悲しいが日を重ねるごとに受身の技術だけやたらに上がってる気がする。
そのことをメアとコルネに話したところ・・・
『そりゃあれだけ吹っ飛ばされていればねえ?』
『あははは・・・・・・』
と反応された。
いや、まあね?
毎日空を飛んでいたら確かに受身はうまくなるさね・・・・・・
い、いや!それだけじゃないぞ!
他にも覚えたことはある!
魔術を利用できる所まで練習したし、体術は・・・・・・・・・自身は無いけどきっと良くなってるはず。
よし!ちょっと色々と思い出してみようか・・・
一時間後・・・
・・・・・・あれ?魔術と受身以外進歩してない・・・?
いやまてまて!?
そんなはずは無いと思いたい!
思い・・・たい・・・・・・・・なあ・・・・
・・・ようするにあれだ。
「俺、体術全く成長してない」
口に音として出した瞬間涙がでた。
あー・・・あれだな・・・・・・
達人から初心者が技術を盗むのは無理に等しい。
そりゃそうだ。
カンナは何百・・・もしくは何千と生きているんだ。
そうやって積み重なってできたものを覚えれるはずが無い。
確かにほんの少しだけは近づけることはできるかもしないがそれでもほとんど無理に近い。
あたりまえだ圧倒的に経験してきた年数が違いすぎる。
・・・いや、これは俺の言い訳か。
できるできないじゃなくてどれだけ近づけるかが重要だから。
「はあ・・・こりゃちょいと反省した方がいいな」
物事そんなにうまく進むわけが無いか・・・
「反省もいいけど、噴水の前で棒立ち状態でぶつぶつ呟きながら涙を流す人の隣にいる私の身にもなってくれないかしら?」
「スイマセントルクサン」
「まあ、いいけどね」
というかいつの間に横にいたんですか?トルクさん・・・
・・・今、俺とトルクがいるのは街の中にあるアマタ噴水の前だ。
ちょっと気晴らしに外に出てくるとメアに言い寮を出てきて街をぶらぶらしていていつの間にかついたのがここだった。
そこからはさっきの状態に戻る。
「というかいつの間に横にいたんだ?」
「10分ぐらい前よ。声をかけても反応がないからレムレムでも鼻に入れてあげようかと思ったわよ」
そう言うトルクの手にはレムレムがあった。
あのレムレム、俺達の世界で言うレモンに近い。
そしてあれを鼻に突っ込まれたら1日は涙が止まらないという惨事になる。
「いや、さすがにそれはひどくないか?」
「この前私を置いていったのはひどくないのかしら?」
「うっ・・・」
この前とはメアについての話だろう。
「はあ・・・はいこれ」
俺が言葉に詰まっていると色々な食材が入った袋を渡された。
トメルにレムレム、バル、ナーム、バーナ、ジニャ・・・その他色々と結構入ってる。
ちなみにトメルはトマト、レムレムはレモン、バルはバジル、ナームは茄子、バーナはバナナ、ジニャは人参である。
というかこれいったい何を作る気だ?
「これっていったい・・・」
「お母さんが新しい献立を考えてるのそれの材料を買ってきてと言われたの」
「納得」
「それじゃあ荷物持ちお願いね?」
「え?」
「お・ね・が・い・ね?」
「あ、はい・・・」
女性って怖い・・・
というかなんで俺の周りはこう良い言い方で個性の強い人、悪い言い方でマイペースな人が多いんだろうか・・・
「何か言ったかしら?」
「イエナニモ」
そうして俺は大人しくトルクについていくのだった・・・
そして買い物が終わりもう夕方になろうとしている時間になった。
「お久々です。アライアさん」
「あら~こんばんわ~ユウ君~」
相変わらずのんびりして口調である。
これであの状態があるとは初めて来た人は誰も思うまい。
「はい。お母さん頼まれたもの買ってきたわよ」
「ありがとう~・・・トルクちゃん~その口調やっぱり戻せない~?」
「あ、やっぱり無理してたのか」
「そんなわけないでしょ!」
「ほら~」
「あ」
まあ、学園に入るのと同時に口調が変わったからな。
他の人に子供っぽい自分を見せたくなかったのかもしれない。
「まあ~無理にとは~言わないわ~」
「ありがとうお母さん」
少し顔は真っ赤になっていたがアライアさんにそう言われちょっと笑顔になっていた。
「それよりも~なんでユウ君が一緒なの~?」
「荷物持ちです」
「なるほどね~」
まあ、袋と俺に雷魔法で磁場を作って少し浮かせていたからあまり重くは無かったけど。
それにいい練習になった。
この物を浮かせるということは結構繊細で一方向に力が偏るだけで横に倒れ始める。
一種の天秤のようなものだな。
それをあの噴水の所から今までずっと練習していたおかげでどこからどうやったら魔力を効率的に流せるのかもわかった。
うむ。今回のこと急だったけど中々に良かった。
「てっきり私はデー・・・」
「お母さん!!」
「あらあら~怒られちゃったわ~」
手を頬に当てながら微笑むアライアさん。
だがもう片方の手は料理をしているのかずっと動いている。
すごいなオイ。
と、どうでもいいいい方向に考える佑なのであった。
「えっと・・・荷物ここ置いときますんで俺帰りますね?」
そう言って帰ろうとしたが・・・
「あらあら~夕飯ぐらい食べて行きなさいな~」
「でも俺お金が・・・」
そう、今俺は金欠というか一文無し状態である。
その状態でアライアさん達が稼いだお金を元にただ飯を食うのはちょっとなあ・・・
「いいのよ~新しい料理の感想も聞きたいしね~」
「それならお客さんに試食として出せばいいのでは?」
「あら~?味もわからない物をお客さんに出せるお店の人なんていないわよ~?そこでユウ君の出番よ~」
「俺・・・ですか?」
「そう~トルクのお友達だしね~お客ではあるけど商売客じゃないから~」
これまた一本取られたな。
「わかりました。それじゃあ味見をさせてもらいます」
「ありがとう~トルクも喜ぶわ~」
「ちょっとお母さん!」
再び二人の言い合いが始まったがアライアさんがトルクに何か耳打ちすると顔が真っ赤になりこちらを見てきた。
軽く手を振る返すとそっぽを向かれた。
むう・・・
そんなこんなしてるうちに一品目の料理が出来たようだ。
「はい~トメルの実を使ったパリパリよ~」
これはまたうまそうだ。
見た目は完全にピザである。
乗ってる食べ物は主に野菜系か?
トメルはトマトのことを指してるとして、パリパリってなんだ?
そう思いながら6カットされたピザの一枚を取り口に含む。
「!」
これは・・・!?
口の中で噛んだ瞬間にパリパリと心地よくなる触感・・・!
いったいこれは?
「あら~気づいた~?」
「アライアさん・・・これって?」
「それはね~オロイルと言う実を使ってるのよ~」
オロイル・・・オリーブオイルか?
それにしてもこの触感は出せないだろう。
「オロイルはね~香りが強いけど~特徴的なのが唾液に触れるとパリパリに固まることなの~」
そうか・・・そういうことか。
俺は俺のいた世界の常識・・・つまるところ料理の知識に当てて材料を見ていた。
だがここは異世界新しい触感の材料があってもおかしくは無い。
「どう~おいしい~?」
「はい。これは初めて食べる食べ物です」
「そう~よかったわ~」
顔を微笑ませながら嬉しそうに次の料理を出してくる。
「はい~じゃあ次はこれね~」
「え?」
ついつい間の抜けた声が出てしまったのは仕方ないと思う。
なぜならこのピザ風のを食べたら結構、腹が満たされてしまったせいだ。
「酒蒸しのポンタよ~」
そんな俺の意思とは関係無く料理が運ばれてくる。
まさかと思いトルクの方を見てみると・・・
「(ごめんなさい。そうなったらお母さん止められないの)」
無慈悲にもそんなことが聞こえてくるような申し訳無いという顔をしていた。
「(ははは・・・つまりこれは・・・・・・戦争なんだな?)」
・・・よし!
やってやるぞ!!
俺はアライアさんのご飯を全て食べてみせる!!!
そうやってアライアの試作料理を食べ続けた佑は後日、学園を腹痛で休んだのだった。




