第十九話 陰の逆転
・・・ブウンと音がした。
意識が覚醒したら目の前に魔物らしき物がいた。
「・・・戻ったのか?」
そう言って周りを確認した。
その瞬間コルネの叫んだ声が聞こえた。
「佑君!前!!」
「っ!?」
その言葉に俺はとっさに体を左に跳躍させた。
ゴウン!!と音をたてながら俺がいたであろう場所に何かが飛来した。
・・・黒くとても黒く濁った液体のようなものだった。
その液体が触れた場所は草原らしく草が生えていたがどんどん茶色くなっていく。
どうやら腐食、または生命を奪ってるらしい。
「メア!!」
「わかってるよ!!」
俺の隣にいたメアも逆方向に跳んでいたらしくすでに距離を随分と空けていた。
「どうやら帰ってきたみたいだな・・・」
俺は魔物を見ながら独り言をこぼす。
「主!我は魔力を使いすぎた!少し後ろに下がるぞ!!」
「了解だ!!後ろで回復しておいてくれ!!」
そっか時間感覚的には結構経っていたように感じたが、カンナ達はここにほぼタイムラグなしで入ってきてるから魔力が回復してないのか。
「ウツウつうつくシいいいいいイいいイ!!!!!」
目の前の魔物が狂気を含んだ声でそう叫ぶ。
「少しだけ時間を稼ぐ!!メア第7以上の呪文で頼む!!」
「わかった!!」
それだけでわかったのかメアはコクリと首を縦に振り、呪文を唱え始めた。
頼むぞメア。
じゃないと俺が第12を唱えなれない。
普通に呪文が長すぎて唱えてる間に攻撃されておしまいだ。
カンナとコルクに関しては魔力の使いすぎで今は回復状態だ。
俺も限界まで魔力を溜めたけど、唱える時間がない。
よってメアに頼るしかないとうわけだ。
「さてと・・・じゃあ時間稼ぎに付き合ってもらおうかね・・・・・・・!!」
とりあえず身体強化の第1でいいか。
時間稼ぎなら持久力があったほうがいいからな。
「我、大地を駆ける雷なり!!」
あれ?と呪文を唱えた瞬間思った。
こんな呪文だったけかと。
そしてそのまま魔法名まで唱える。
『雷虎!!』
あっれーーーーー!?
魔法名まで変わってるぞ!?
魔法を唱え終わった瞬間バチバチと雷をまとい始める。
それは前の雷竜と違い角や翼などが無い姿だった。
手足にまとった爪の雷は雷竜のときよりも鋭く、肘と膝あたりまで雷がまとわれている。
頭部は顔の真ん中から上に半分虎をイメージしたような雷が、そして腰の所からは竜の時とは違い細い尻尾が雷でできていた。
「・・・・・・えーーーーー?」
疑問だらけである。
雷竜になろうとおもったらこれである。
「まあ・・・今は助かるかな?」
初めて雷魔法を使ったときと同じで魔法の説明が頭の中に流れ込んでくる。
雷竜とは違い、この雷虎。
完全にスピードタイプの魔法だ。
雷竜は完全なアタックタイプであり、他の魔法の威力を底上げしてくれるものだ。
そしてこの雷虎だが魔法のスピード・・・つまりは放たれる速度、詠唱の速度を増加してくれる。
何故こんな魔法が発生したのかは・・・・・・・・・・・うん。
たぶんあの時コルネに何かしらやられたのだろう。
じゃなければこんなに急な変化など訪れるはずがない。
「ああああああああアアァああァああああ!!!」
おっと、そろそろ敵さんが現界のようだな。
じゃあちょいとやってみますか!
ダン!!と地面を思い切り蹴り魔物の懐まで一瞬で移動した。
・・・驚いた。ここまで速度が違うのか。
雷竜の場合、同じようにしても懐まで入ることはできるだろうが目で追えるスピードだろう。
だが雷虎の場合本当に雷その物の速度で移動できる。
人間の体はそんな速度には普通耐えれないとは思うが。
そこはファンタジーで魔法によって体がその速度に耐えれるまで強化されているっぽい。
「っ!ガア!!!」
俺が一瞬で懐まで入ったのに気がついたのか腕らしきものを振るう。
「あたらんよ!!」
そういい再び雷の速度で移動する。
・・・ちょいと威力を見てみたいけど。
下手のことして死ぬのはいやだからな。
ここは全力で回避に力をいれさせてもらう。
「ガア!!!ガア!!!!!!」
魔物は叫び声をあげながら俺にむかって黒い物体を叩きつけてくる。
だが、遅い!!
「雷爆!」
この雷爆は模擬戦でも使ったがただ雷を収束したのを空間に固定しただけなので呪文を詠唱する必要が無く使いやすい。
といっても完全にカウンタータイプの魔法なので相手の攻撃にあわせて出さないと普通に避けられる。
だが今は雷虎を使っている状態のためそれが簡単にできる。
ただ威力が雷竜の時よりも格段に落ちている。
よって・・・・・・
「グア!?」
ちょっと相手の動きを阻害することしかできない。
「まあ、しょうがないか」
「グラア!!!!」
ブウンと音を立てながら黒い腕を振りぬいてきた。
だからあたらんて。
そう思いながら足を踏み込んで別の場所へと移動した。
「あー・・・・・・速度に慣れすぎるのも怖いなこれ」
そんなことを呟いてると後ろの方でメアの呪文が聞こえてきた。
「願うは常なる雷」
「世は現を喰いて」
「現は世を喰らう」
「鳴り止まぬ音を刻み」
「命を鳴らそう」
「そこにあるはただの力」
「ゆえに力を欲そう」
『ライトニングアナライズ』
魔法が完成したのと同時にメアの体にゆっくりと雷が霧のように現れる。
足元にあった草は光の粒子となってメアの魔法として起動し始める。
メアが手を上空へと上げその手を魔物に向けてゆっくりとおろした。
・・・静かだった。
ゆっくりと雷でできた霧が魔物に近づいていく。
その光景はまさに芸術とまで言えるぐらいに綺麗だった。
「ゴラァ!!!」
メアの魔法に気づいたのか黒い塊をメアの方へと投げる。
「無駄だよ」
黒い塊はメアへと跳んでいったが雷の霧に触れた瞬間光の粒子となって消滅した。
というかあれで十分じゃね?と思う俺がいた。
「・・・ユウ今のうちに早く。この魔法はそんなに持たない・・・・・・・集中力が切れる前に早く!!」
「わかった!!」
どうやらあの魔法は範囲を広げれば広げるほど意識を集中させないといけないようだ。
うっすらとだがメアの額に小さな汗が見える。
・・・・・・ならやることはひとつだろう。
「これから第12を唱える頼むぞメア!!」
「了解だよ!!」
じゃあいくとしますか!!
「我願うは永久の滅び」
「ただ流されるごとく」
「命をただ流そう」
「そこにあるは命の力」
「全てを元とし司る」
「我は雷の化身となりて」
「陰の頂点とならん」
「影は降りて暗闇は飲み込む」
「その身に宿るは闇なり」
「陽となるものを片割れとし」
「全ての重責を背負う」
「今ここに滅びの円舞を開こう」
『黒雷永久ノ円舞!!!!』
その呪文は黒く輝きながら半径数kmを覆った。




