第九話 大事なものはいきなり無くなるものだ
『以上で新入生入学式を終わりにする!!皆、この模擬戦で感じたこと足りないと思ったこと色々あるだろうが!いっそう努力することを忘れないでくれ!!』
結論から言おう。はっきり言って他の新入生の模擬戦はあまりすごいなと思える戦いは余りなかった。
あくまでも余りだ。
うん・・・漫画とかアニメとかの影響が大きすぎるせいで戦い方が地味だな~とも思った。
いやだってさ?
何故ウィンドカッターを一個しか出さないんだ?もっと一気に数出せるだろう?とか色々思っていた。
よくよく考えてみようここにいるのは全員新入生だった・・・・・・
期待しすぎた俺も悪い。
そう考えると俺達がやったことって異常なんじゃ・・・いや考えるのはやめよう。
トルクもいたんだそこら辺は大丈夫なはず・・・たぶん・・・きっと・・・
「ねえユウ?私達の契約獣って何になると思う?」
現在、俺達は入学式が終わり学園案内と同時に新入生が行う契約召喚をするために中庭っぽいというか中庭に来ていた。
「んー全然想像つかないな」
「私は幻獣系がいいな!」
いや、トルクさん幻獣系ってあなた・・・
・・・幻獣系とは契約獣の中でも最上位系列に入る種類だ。
他にも神獣、魔神、魔王、勇者・・・ようするに歴史に名を残した人物や伝説上の空想・・・でもないがそういった獣などが呼び出されるようになっている。
なのでトルクが言った幻獣系は運がよくないと契約できないというわけだ。
それに最上位は契約獣に認められなければならない。
それを終えて初めて契約者として認められる。
まあ、何故か呼び方が契約獣なのかは不明だが。
そしてこの契約は人生で一回のみと言われている。
その理由は簡単だ。二回目の契約は行うことができないからだ。
人には魂の限界という物が存在しているらしい。
その限界ギリギリまで契約獣によって埋められるため二回目の契約は魂の限界を超える。
ようするに魂が耐えられなくなり契約に押しつぶされるというわけだ。
「私は・・・うん。可愛いのがいいな」
うむ。メアらしい。
というかトルクの願望が大きすぎるだけだが。
俺もそんな大きい願望は持ってない。
自分の魔法と相性のいいのが来てくれればそれでいいと思っている。
「ユウは?」
「俺か?俺は自分に合っているのだったらなんでもいいなあ」
「夢がないね。ユウは」
「・・・逆にトルクは夢見すぎな気がするけどな」
「そんなことないよ」
「「・・・・・・・」」
今・・・!ここで視線の戦いがはじま・・・・・・・。
「あ。ほらあそこで契約獣召喚やってるよ?」
メアの一言で始まらなかった。
「「どれどれ?」」
俺とトルクは契約獣召喚がどんなものか気になり同時に声を発していた。
「おーあれが契約獣召喚か」
「あ!何か魔方陣からでてきたよ?」
「あれは確か・・・シムルグだったかな?」
やはり神話の存在もいるみたいだな。
ここはあっちの世界とは違うから存在はしてるかもとはおもったけど。
ならホルスやイシスとかもいるのかね?
「あ・・・あの子、『風鈴の呼び手』だ」
「・・・・・・どなた?」
「ほら、模擬戦で一方的に相手を切り刻んでた風使いの子」
「・・・・・・・・・・ああ!!」
そういえばそんな子いたな。
模擬戦もつまらなくなって途中から半分寝てたから、顔なんて余り覚えてなかった。
だけど魔法はしっかりと見ていたからトルクの言葉で気づけた。
「いいなあーシムルグって言ったら最上位系列の契約獣だよ」
「・・・まあ、そのせいで面倒くさそうなことにはなってるけど」
「「え?」」
「ほら、あれ」
そう言って俺は再びシムルグの方に指を向けた。
その指を追うように二人はシムルグの方を見ると静かにそこに居座ってるだけだった。
「・・・?」
「あれが何か?って顔してるけど。今あそこで風同士の衝突が起きてるからな?」
「そうなの?」
「ああ。ほらあそこだけ風が完全に無くなってるだろ?」
よーく見ると芝生が少しも揺れていない。
「でもそれだけじゃ・・・」
「説明不足ってか?まあ、待ってればわかるよ」
・・・しばらくすると風が爆発したように急に吹いた。
「どうやら終わったみたいだな」
「・・・本当にやってたんだ」
「あ。見て。シムルグがあの子に合わせるように体が小さくなってく」
おお。体のサイズも自由自在ってかすごいな。
「・・・・・・」
興味深いと思いながらシムルグの方を見ていたら、その契約者の子がこちらを見て何かを言っていた。
「『次はあなたの見せて』か・・・」
「何かいった?」
「いや・・・よし!次は俺が行ってくる!」
そう言いながら俺は契約獣が現れるであろう魔方陣に向かった。
「お?次は自分か?」
「はい」
「わいはここで契約獣召喚の管理をしてる。3年のティルトやよろしゅうな」
わーいすごい関西人っぽいぞおー。
「ほな自分そこに血を垂らしてえな」
そう言われ俺は右手の親指を少し噛み切って血を出した。
・・・こう口寄せの・・・ゲフンゲフンなんでもない。
「そいで魔力を流し込んだら完了や」
魔力・・・こうか?
自分の中にある魔力を腕を伝い魔方陣の中に流し込むようにした。
そうすると魔方陣が光だし、何かが姿を現し始めた。
ゆっくりと頭の方から現れ始める。
やがてその姿がはっきりとしてきた。
人型だ。しかも女性である。
髪は鮮やかな黄色で顔も整い綺麗という言葉が合うだろ。
・・・胸もC?ぐらいあり、身長も160ぐらいだろう。
いや、それは今問題じゃない。
人型ってことは・・・
そんな思考を打ち切るように目の前の女性は目を開きこう言った。
あ・・・目は蒼いんだな。
「我が名はカンナカムイ。龍神にして雷神なり」
その名を聞いた瞬間彼女を見てボウっしていた意識がたたき起こされた。
まて!?カンナカムイだと!?何故女性なんだ・・・・!?
そうカンナカムイと言えば男性のはずだ。
「ほう。我が契約者になるかも知れぬ者か、中々にいい目をしている」
そんなふうに思考をしているとこちらの目を見据えてそう言ってきた。
「では我が与える試練を超えて見せるがいい」
その試練という言葉を聞いた瞬間、俺はつばを飲み込んだ。
「そう緊張せずとも平気だ。何、簡単だ。我をこの場で惚れさせてみせよ」
『・・・・・・・・・・・・・はい?』
うん。今のすごかったな。ここにいる全員がはい?とか中々にすごい・・・じゃなくて!!?
「惚れさせる!!?」
「そうだ。我を女として惚れさせてみせよ」
女としてだと・・・!!?
彼女いない暦=生まれた年の俺にいったいどうしろと!?
そ、そうだ落ち着け俺。こういう時は漫画を参考にしよう。
えーっとこういう場合の時、漫画では・・・・・・
あれ?いきなりキスをして俺の女になれって言ってる所しか浮かばない・・・あれ?
ということはあれですか!?今!ここで!全員が見てる前で!!キスをしろと!!!?それ+あの甘ったらしいセリフを言えと!!?!?
「さあどうした?我を惚れさせて見せるがいい。もう時間は余り無いようだぞ?」
確かに時間が無さそうだ。
魔方陣が光を段々弱めていっている。
くっ・・・覚悟だ。
覚悟しろ!これから学園で『あーあいつ契約獣とキスしたやつだ』とか言われても大丈夫だと思うんだ!!思う・・・んだ・・・・
ええい!悩んでも契約は一回きりならやることは決まってる!!
「カンナカムイ」
「うむ。なんだ?」
名を呼ぶのと同時に彼女を引っ張り、耳元でできるだけ優しい小声で囁く。
「俺の・・・女になってくれ」
「(ゾクッ)」
一瞬、カンナカムイが身震いをしたがそのまま続行した。
腕の中に彼女を引き寄せゆっくりと顔を近づけ目を瞑りキスをした。
・・・どのくらいたっただろうか。
ゆっくりと目を開けるとカンナカムイは顔を真っ赤にしながら目を潤ませていた。
アレ・・・?やりすぎた・・・?
そう思った瞬間顔を離し、カンナカムイと距離をとった。
離れる瞬間『あ・・・』という言葉が聞こえたが今は仕方ない。
というか俺の羞恥ゲージが限界突破してやばい。
顔が自分でも真っ赤になってるのがわかる。
だって、あれ一応俺のファーストキスだぞ!?
しかもあんなセリフまでえええええええ!!!?
『うがあああああ!!』と心の中で頭を掻き毟っていたがいつまでもそうしているわけにもいかないので俺はカンナカムイに話かけた。
「そ、それで!?試練はいいのか!!?」
めっさ動揺した声が出てしまった。
「(ぽー・・・)・・・ハッ!?う、うむ。試練は合格である。あんな情熱的な惚れさせ方をさせられるとは思ってもみなかったが・・・我が契約者よ、契約獣として・・・いや、嫁として今後ともよろしく頼む」
『嫁ーーーーーーーーーーーー!!!???!?』
ああ・・・はい。俺の学園生活は今破壊されたのですね。わかります。
だって後ろから何か黒いモヤが迫ってくるのがわかりますもの。
「(ガシッ!)ちょっと詳しくきかせてくれるかなユウ?」
右肩をしっかりとつかまれました。般若つきで。
「(ガシッ)うん。詳しく聞きたいかなー?」
左肩もしっかりとつかまれました。雷を背にして。
「うおおおおおお!!?俺は悪くないいいいいい!!?」
そのままずるずると引きづられていきました・・・
ユウの悲鳴は学園中に響いたとさ。
そして同時に学園に神を落とした者として語り継がれた。




