過去 後編
今回短いです……(;´_ゝ`)
今、時刻は6時14分。部活もしていないお兄ちゃんが帰ってこない。ケータイを見ても連絡が入っていない。私のなかで中学二年の時に起きたあのことが脳裏に浮かんだ。きゅうに不安が胸を襲う。
「…何してるの?……お兄ちゃん……。」
私は誰もいないリビングで一人呟いた。
―――「瑠美ィィッ!!」
瑠美は曲がり角があれば所構わず曲がり、複雑な道を通って逃げる。しかし俺はこれでも運動部だ。部活をしていない、更に女子である妹に追い付くのは時間の問題だった。
「瑠美ッ!!止まってくれっ!ハァッ……」
建物と建物の間からで出て、大通りに出た。
信号は青く点滅している。瑠美は信号を渡った。
(くそっ……あれじゃ赤になるっ……!)
すると……
ブオオオオオオ!!!
大型トラックがまだ信号が赤だというのに猛スピードで走っている。あのままだと瑠美にぶつかる!!瑠美はそのトラックに気づいたが、怖かったのだろう、足を止めて震えていた。
「あ……あ……」
このままじゃ……!!
俺は全力で走った。今までに無いくらい思いっきり走った。そして…
「瑠美いいいいいい!!!!!!」
思いっきり叫びなが横断歩道へと走った。そして瑠美を目の前にした。トラックは距離にして約3メートルほどだった。
俺はまるで水泳選手がダイビングするかのように瑠美に向かって飛び込んだ。そして空中で瑠美の両肩を持ち、そのままトラックをギリギリで避ける……はずだった。
ほんの数秒、足りなかった。瑠美には怪我はない。しかし俺にはあった。
飛び込んでいるようになっている俺。その俺の右足に大型トラックが衝突した。
ゴリンッッ!!
そんな鈍い音がした。俺は左に回転するようにして地面に叩きつけられた。
――――お兄ちゃん!!お兄ちゃ――……
そこで俺の意識は途絶えた。
見たことのない天井。口に違和感がある。これは……酸素マスク?…てことは病院か…無事……なのか……?
「……おにぃちゃん?」
この声は……瑠美?
「お、お兄ちゃん!?」
「お、おう……瑠美…。」
すると瑠美は俺に抱きついてきた。
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
泣きながら謝っている。俺は瑠美の頭を撫でた。
「大丈夫。大丈夫。」
必死で慰める。その後瑠美はしばらく泣いていた。一通り泣き終わると俺は瑠美に聞いた。
「なぁ…瑠美。」
「……。」
瑠美は俯いたまま黙っている。俺の目頭が熱くなる。
「っ……!なぁっ……俺さ…俺っ…!」
大粒の涙が俺の頬を伝う。
「……ひっく……うぇ……ごめんなさっ…!」
瑠美も泣き出した。俺もそれにつられて泣く。瑠美は俺にひたすら謝ってくる。俺にはその意味が分かった。何故なら俺には――
右足の感覚が無かったのだから。
それから三週間の月日が流れる。中学校最後の大会はとっくに終えたころだ。
俺は事故で右足首の骨と股関節に異常があり、三週間のリハビリの末、歩けるようになるまで完治した。医者の先生からはこの期間で歩けるようになるのは奇跡だ、と言われた。しかし、当然のごとく試合には出られなかった。
瑠美はしばらく俺とまともに喋れていなかった。恐らく自分のせいで俺が事故に遭ったと罪悪感を抱いているのだろう。俺は瑠美に言った。
「今回のことはお互いに忘れよう。どっちも悪くない。仕方がないことだ。うん。……はい!じゃあいつも通りな!」
俺はそう言った。すると瑠美は涙を目に貯めてこう言った。
「…ありがと……お兄ちゃん。」
それ以降今回の件について二人が口にすることは無かった。
俺は股関節の異常は今もあり、走ったり出来ないため、バスケットをすることは二度となかった。……