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平穏な毎日  作者: tama
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平穏

初めての投稿です!よろしくお願いします!m(__)m

10年前―――俺の母親は死んだ。


当時母子家庭ということもあって、決して裕福とは言えない家で育ってきた。ろくでもない父親が母さんに愛想をつかしてどこかにいってしまったんだろう。


現在―――俺、市川連(いちかわれん)は17歳のごく普通の高校二年生だ。先日春休み明けの始業式があり、今日から晴れて二年生という訳なのだ。


「お兄ちゃーん!朝ごはん出来たよ!」


「今行くよ。」


俺には妹がいる。毎日朝、昼、晩の飯を作ってくれて掃除に洗濯等の家事もこなす本当に良くできた自慢の妹だ。


「ハイ。愛情たっぷりのごはんを召し上がれ。」


市川瑠美(いちかわるみ)――彼女の名前だ。


彼女は今年から俺の通っている高校に一緒に通うことになる、高校一年生だ。

瑠美は俺よりももっと頭がよくて成績が良いため本当ならばもっと頭のいい学校に進学できたのだが瑠美曰く、

「お兄ちゃんと一緒に学校行くことが私の夢だったんだ♪」


…これ聞いたとき泣きそうになった。思いっきり抱き締めたくなったのだがドン引きされそうだったので流石にしなかった。

ルックスは上の上。兄である俺ですら美人だと思ってしまうほどだ。腰あたりまで伸びた黒髪のロングヘアー。ほどよい大きさの胸、太すぎず細すぎずのお腹周り、女性らしさを表している可愛らしいお尻。

性格もおとなしくもあり、活発でもある。

更に成績優秀ときた。

総合的に見ても俺とは比べ物にならないほどで、時々本当は血が繋がっていないんじゃないかと思ってしまうことがある。…まぁそんな漫画やアニメの世界の話じゃあるまいし、ないとは思うが…


「ご馳走さまでした。」


朝食を食べ終わった俺は数分くつろいだ後、洗面所へ向かい歯磨きをした。

顔を洗って目やにを取り水で濡らした手で寝癖を直した

そして二階にある自室に戻り制服に着替え二年生の証である青色の名札を左胸のポケットに針を通して着けた。


現在時刻は7時45分。学校の登校時間は8時30分だ。家から学校まで徒歩25分の距離にある。

俺は基本的に8時15分には着くようにしているため、そろそろ出発しなければならない。そう思いながら一階に降りると一年生の証である赤い名札を左胸に着け、制服を着こなしている瑠美が玄関で待っていた。


「お兄ちゃん!はやくいこ!」


「ああ、待たせてごめんな。」


そう言って瑠美の頭を撫でた。


「ん…だいじょぶ…えへへ。」


「行こうか。」


俺たちは出発した。



二人で横並びになって歩く。今まで一人で登校してきたから気分的になんだか楽しくなってくる。なってくるのだが……なんか…妹の距離が近い…だって肩が当たるぐらいにまで接近してるからな。流石にこれは恥ずかしいので


「る、瑠美。ちょっと近すぎないか?」


そう言うと妹は


「んー?なあにお兄ちゃん。もしかして照れてるー?」


「バッ!!別に照れてねーよ!!」


「あははー!必死になると逆に説得力ないよー!」


「こ、こら!兄をからかうな!…まったく…ん?」


ふと目に入ったのは瑠美の髪止め。それって…


「瑠美、その髪止め…」


「…やっと気付いた?」


瑠美は嬉しそうにそう言った。

瑠美が今着けている髪止め。それは受験の合格祝いの時に俺がプレゼントしたものだ。だが、母方の祖母から貰ったものが数万する髪飾りだったため、4000円で買った俺の髪止めの影が薄くなってしまい他のものにすればよかった…と後悔したほど使われないと思っていたのだ


「ほんと、全然気付かないんだもんなぁー。お兄ちゃんってすごい鈍感だよね。全く…。」


そんなことを言いながらも気付いてくれたのが嬉しかったのだろう。幸せそうな顔をしている。


「なんでそれを使ったんだ?」


疑問だった。年頃の女の子だったら安物のアクセサリーよりも高くて価値のある方を選ぶに決まってる。なのになぜ……そう思っていると妹は俺の質問に対しての答えを言った。


「だって…お兄ちゃんが買ってくれたんだもん。」


笑顔でそう言った。あれ…涙が…


「ぐす…瑠美ってほんと、かわいい奴だな…」


「ふぇっ!!?」


あー…涙が止まらねぇぜ…ん?なんか瑠美の顔が赤いような…ごしごしと涙を拭ってみるとトマトのように顔を真っ赤にした瑠美がうつむきながら歩いていた。


「瑠美?大丈夫か?もしかして熱があるんじゃ…」


「あっ!だだ、大丈夫ダヨ!ちょっと暑いだけ…ひゃっ!」


瑠美のおでこに手を当ててみる。


「あっっっづ!!!」


ヤバくないかこれ!?熱すぎるよ!50度はあるぞこれ

瑠美はというと…


「あうぅ…」


湯気が出そうなくらい顔を真っ赤にしていた。


「瑠美!今すぐ救急車呼ぶからな!!えーと…救急車は…」


「あっ!大丈夫だから!ほんとに!」


「でも…」


「ていうかお兄ちゃんが悪いんだからね。」


「ええっ!?嘘だろ!?」


なんで!?俺なんかしたっけ!?

まぁでも…


「まぁ、無事なら良いか。」


俺はそう言って笑った。


「っっ…!もぅ…そーゆー不意打ちはセコいよ…」


瑠美がほんのり顔を赤くしながら何かを呟いた。内容は声が小さすぎて聞こえない…


「え?」


「っ…なんでもないっ!」


そう笑いかける妹。

こんな平穏な毎日が続いている。

そうしている間に俺の通っている高校――すなわち、西宮(にしのみや)高校に着いた。

校門には入学式と書かれた看板が立て掛けてある。そう、今日は入学式なのだ。


辺りは桜の花びらでいっぱいだ。赤い名札を着けた――つまり新入生が親と一緒に写真を撮ったり、おそらく中学で一緒だったであろう女子二人組がキャアキャアとはしゃいでいたり。


「……」


「…どうした瑠美?」


「えっ?ぁ……いや、なんでもないよ?」


今さっき瑠美が見ていたのは……親に写真を撮られていた女子だった。さっきも言った通り俺たちには親がいない。きっと瑠美は羨ましいのだろう。


「瑠美。」


「?」


カシャッ


「えっ?えっ?」


慌てている瑠美。

こんなこともあろうかと俺はカメラを持ってきていたのだ。


「プッ……変な顔……」


驚いたような顔をしている瑠美の写真を見て思わず笑ってしまった。


「ちょっ、ちょっとー!消してよぉー!」


恥ずかしそうに言ってくる瑠美。


「あはははー!やだねー!」


「もー!」


「ははは……ほら瑠美。そこに立ちな。」


俺は入学式と書かれた看板の前に立つように瑠美に催促する。


「……!……うんっ!」


満面の笑顔で返事をした瑠美は看板の前に立ち少しはにかみながら――カメラに目線を向けるのだった。


「ハイ、チーズ」


カシャッ


「……うん。よくとれてるよ。」


「ほんと?みせてみせてー!」


妹の高校入学。はやいもんだなぁー…

そんな風にしみじみしていると、


「ありがとね…お兄ちゃん。」


瑠美が聴こえるか聴こえないか、それぐらい小さな声で呟いた。

今度はちゃんと聴こえたので、


「…おう。」


俺は瑠美に聴こえるか聴こえないか、小さな声で返事をした。





その後俺は靴箱で瑠美と別れた。一年生の教室は東館で二年生の教室は東館だから逆方向になるため靴箱で別れることとなった。


今年は2年C組だ。クラス人数は41人。全クラスAからEまでクラスがあり、学年人数は215人である。

教室に入って自分の席である窓際の一番後ろの机に向かい教科書等を机の中に入れ、弁当と水筒の入った鞄を机の横のフックにかけて椅子に座った。

現在時刻は8時12分。予定時刻より少し早い。この時間は教室内にあまり人がおらず、静かである。他の生徒たちは授業の支度をしたり、読書をしたり―自分の時間を過ごしている。俺もこの静かな時間帯では外を見ながらボーっとするのが入学してからの日課だ。



時間がたつにつれ人が増えてくる。すると段々騒がしくなってくる。こうなってくるとあいつ(・・・)が来る。


「おはよー!」


元気な声とともに教室に入ってくるポニーテールのいかにも活発そうな女子が入ってくる。


「おはよっ!市川君!」


ポニーテールの女子は俺の前に立ち、挨拶をしてくる。


「おう。おはよう、姫城。」


彼女の名前は姫城舞(ひめぎまい)一年生の時に同じクラスだった女子だ。

白のカッターシャツの袖を腕捲りして腰にセーターを巻いている。彼女はソフトボール部に所属していて、とても元気な女の子だ。

少し茶色がかった髪を耳より少し上の高さで髪をくくり、ポニーテールにしている。顔はクラスではダントツの一位、学年でもトップスリーには入るだろう。胸も豊満で俗に言う"巨乳"である。彼女は一年生の時から何かと俺に話しかけてくるし、昼食も一週間に三日ぐらい他の女子の友達の誘いを断ってまで俺と一緒に食べてくれる

そんな彼女は俺の数少ない友達だ。



姫城は俺に挨拶をすると、自分の席に戻り授業の支度をする。俺は外を眺める。

しばらくするとチャイムがなる。


(さぁ…今日も一日が始まるな…)


そう心のなかで呟いたのであった。

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