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第24話 髪がなが~~~くなりましたとさ

本日は、2話連続更新です。そのため、最新話からいらしたお方は一つ前も見ていただけると幸いです。

「うっ、うっ。もう、ぜ~ったいにユリアさんの作った薬品なんてつかいませんっ」


 カーテンの閉め切られた薄暗いユリアさんの研究室で、他に誰もいないとわかっていても思わず大声で叫んでしまいます。あまりにも大きな声だったのか、慌てて鳥が飛び立っていったように見えたのは気のせいですよね?


 なぜ、私がこんなふうに叫んでいるのかと言うと、肩より少しだけ長いだけだったはずの髪が、くるぶし近くまで伸びてしまっていることと深い関係があったりします。というか、そもそもの元凶ですよ。







 私が手伝わされていたあの薬品の正体は、「育毛剤」だったんですよ。それを、知らされないまま鍋に残ったものがもったいないと思うのなら、あなたが使えばいいのよとユリアさんにニコニコした笑顔で言われました。えぇ、その時私の体に続々とした悪寒が走ったのは決して気のせいではなかったのだと思います。

 私の感って結構当たったりするんですよ。特に最近はそれが顕著だったりします。まぁ、そんなわけで直感にしたがうことにしました。


≪command:身体強化≫


 すぐに、この部屋から逃げ出そうとしました。ニコニコとしたその邪気が一見なさそうな笑顔が今の私にはとても恐ろしく思います。


「逃げちゃダメにきまっているじゃない」


 勢いよく走り寄った出入り口のドアのドアノブをガチャガチャとひねりますが、なぜか見っちもさっちも動きません。あれ、こういう展開って、もしかしてツミ?


 ホラーゲームとかの定番ですよね。そして、にじり寄ってくる足音。


 身長が低いユリアさんが好んで履く、ヒールと言うか、嵩がある靴が、室内に独特の音を醸し出します。



 ユリアさんが、詠唱破棄した魔法を発動させました。対象は、私です。指先一本動かない今の状態から考えるのに、これは≪金縛り≫をかけられたようですね。私はモルモットではないですし、だいたい薬の効果だってユリアさんは知っているはずなのに、どうして私に試そうとするのでしょうか。残ったのは自分で試すか、保存してくださいと言いたいのですが、喉からはひゅうという音しかなりません。


「大丈夫、許可も申請もされている勇諸正しい薬だから。特に貴族とかプライドの高い人に人気でね」


 体に害のあるものではないからと、あの笑顔でいわれ、≪状態以上回復≫の魔道具を指からするっと抜かれて、どこからともなく少し変わった形をした櫛を取り出すと、出来立ての薬品に浸しながら私の髪をとかし始めたんです。


 むちゃくちゃ怖いですよ。恐怖心倍増ですよ。誰かどうにかしてください、ユリアさんを止めてぇ!!

 叫けびたいのに声が出ないのが、辛いです。叫べたらそれだけ恐怖心が減ってくれそうなのに、誰か助けてくださいよ。

 いくらお偉いさんに許可をいただいたって、怖いもんはこわいです!



 あれから、十数分をまんべんなく、薬品を髪の毛に振りかけられたり、梳かされてたり、ごにょごにょと呪文を唱えられていないのが不思議なくらい弄ばれたあと、今に至るわけです。


 金縛りを解いてもらったため動けますが、頭が急に重たくなったためいつも通りではありません。そしてさっきの叫びになるんですよ。えぇ、なくもんかって異世界に来た日に決めたのですが、半分くらい涙目に若干なっているのも致し方ないと思うのですよね。とっても怖かったんです。


 涙目のままユリアさんをちょっと本気で睨むと、うろたえたのが解ります。もしかして、このことを今日の報告という名のレイさんとの通信でちくられるの畏れているのでしょうか??

 ちょっと面白いくらいに顔が青ざめています。


「えっ、ちょい泣かないでよ! ごめん、さすがにやりすぎたわ」

「ユリアさんに、もうご飯作りませんからねっ」

「うっ、ごめんって。でも、私だってまさかここまで効果ききがいいとは思わなかったのよ?」

「私を実験台にしたんですか!」

「違う、のよ? ただ、アザレアは髪が長い方が似合っていると思ったから……でも、私の薬に髪の色を変える効果はないはずなのよ? だから、これは、その、私も想定していなかったっていうか、あれは納品できないかしら? それに、10センチも伸びないくらいの効果だったのに、まさか、こんな」


 オロオロと言葉に詰まりながら、必死ですね、ユリアさん。でも、さすがに今回のはやりすぎです。私だって怒ることくらいあるんですから、まぁ、不機嫌になるだけですけど。


 あれ、それにしても、今妙なことをユリアさんが言いませんでしたっけ? 髪の色がどうとか……。慌てて、部屋を飛び出し、さすがのユリアさんもドアを開けてくれました、隣のお菓子の家に急いで飛び込む。洗面所に映し出される己の姿を見て、絶句してしまいました。


 そこに映るのは久しぶりに見る髪の黒い自分の姿、その髪は今まで伸ばしたことのない長さのため全く別人と言うほどではないが、見慣れない。


 髪の毛を洗うのも乾かすのも時間がかかるので、テスト勉強やレポートで忙しっ句なる前にバッサリ切ってしまっているので、こんなに長いと違和感があります。まぁ、どっちみち髪の毛を切らないと身動きが大変そうです。茶色い染めた部分は、足元のわずかな部分だけで、どれだけ急成長したのかと驚かされます。こんな急成長して体に負荷が本当にかからないのでしょうか。魔法のある摩訶不思議な世界でも、私の肉体はどうやら向こうの世界のままなので、もしかしたら効果がありすぎてしまったのかもしれません。どうしましょう、将来禿になってしまったら、一体どうやってユリアさんに責任を取ってもらいましょうか。ふふふ。


 とりあえず、レイさんに髪を切るための鋏が家にあるかどうか聞いてみることにしましょうか? 困ったことが、あるとすぐにレイさんを頼ってしまうのはきっとあまりよくないですよね。それにしてもこの髪、腰あたりで切りそろえるだけでもかなりの量を切り落とすことになりますよね。ほどほどに長さのある髪ですから、もったいないような気がします。そうです! この世界でも髪を売り買いがされているかもしれません。確かそういうのって専門の人がいるのですよね! お金にもなりますし、一石二鳥です! あれ、でもユリアさんの魔法薬があるから、この世界では鬘とかそういう文化(?)がないのかもしれませんね。上方とかだってレイさんの良くつかっている姿替えの魔道具を利用すればいいのですし、そもそも私の髪の毛ってあまりきれいじゃなさそうですし、かってくれる場所なんてなさそうですよね。そもそも、黒い髪なんかより金と銀の綺麗な色の髪のほうがいいでしょうしね。それに、この世界では金髪の人間を多く見ます。この街だけというわけではないと思います。大衆向けの娯楽小説に出てくる主人公たちの髪色とかは、一般的な髪色ですからね。


 日本では、主人公が黒め黒髪っていうのが普通でしたし、異世界に行って黒髪が目立つという設定のラノベをよく見ました。そうそしてそういう登場人物たちは、「死神」とか「魔王」とかいう異名を付けられるのです。まぁ、私もそんなファンタジーな現状にいるのですよね。確かにこの街で黒い髪はそんなにみませんがレイさんの髪も今は黒ですし、珍しくはないのでしょう。


 とりあえず、片方編み込んだだけで、ものすごく指が付かれたました。髪の毛を三つ編みにして、まとめたら少しは動きやすくなるかと思い至ったのですが、仕方がありません≪身体強化≫の魔法を使いましょう。ふふふ、≪身体強化≫を髪の毛を編み込むためだけに使う人ってきっと私くらいですよね。とりあえず、綺麗に編めましたので、良しとしましょう。あとは、この髪の毛を目立たなくさせる服装ですね。マントみたいなので帽子をかぶるとか? でも、怪しくないですか? まぁ、セネットさんに会いに行くだけですから、大丈夫でしょう。セネットさんに、相談して、ダメそうでしたら美容師さんを紹介していただきます。


 あんなことをされましたが、レイさんのいない間の保護者というか身元引受人みたいな立場にあるユリアさんにあまり心配や迷惑をかけたくないです。置手紙くらいは残しておくべきでしょう。



 服装は悩んだ挙句、ワンピースにカーディガン、麦わら帽子と言った格好にしました。大きめの麦わら帽子の中にくるくるとまとめた三つ編みを突っ込みました。普通の麦わら帽子なら、蒸れてしまいますが、レイさんが改良したものなのでその心配はありません。


 前髪とかは黒いですが、この程度なら問題はありませんし、顔立ちや身長など何も変化していないので大丈夫でしょう。それに、セネットさんはレイさんたち賢者の塔の住人達の非常識極まりない実験結果を長年見てきた人たちですので、こういうことにもきっと慣れているはずです。それに、私があの塔に出はいりしていることと賢者の弟子の関係者であることはうすうすこの街にも広まっているみたいなので、多少のことで驚かれはしないはずです。みなさん、一夜にして誕生した森とか、家とかそのほかもろもろに慣れていらっしゃる異端児たち、問題児たちの行動には非常におおらかです。たとえ、損害を受けたとしてもそれ以上の徳をこの街に必ずもたらしてくれるとわかっているからともいえます。




 とりあえず出かけましょう。ユリアさんの昼食は自分でどうにかしてもらいましょう。台所が被害にあわないように、レイさんに言われたとおりに結界の魔道具をセットしておきました。ユリアさん限定ですので、私にはまったく被害がありませんし、私にとって安全地帯になりますね。対ユリアさん限定ですけど。


 お金も持ちましたし、準備ができたのでセネットさんにさっそく相談をしに行きたいと思います。頼りにしています、このままでは過ごしにくそうです。まだ腰くらいなら我慢できなくもないですけど、くるぶしくらいまでとかちょっと人間の髪の毛の長さの限界を突破している気がします。


 効果がありすぎるんですよね。


 まぁ、魔法薬の威力を身をもって知りました。攻撃用の魔法薬って存在するのでしょうか? あれば、護身用に常備しておきたいですね。


 太陽の日差しを浴びながら、美しく澄んだ海を眺めながら鼻歌交じりに坂を下っていきます。長年地球と言うこちらの世界から見ると平和ボケした世界に住んでいたため私は、この時気づきませんでした。

≪祝福≫というものがもたらす混乱と欲を、そして人の闇を知らずにいました。



 町まであと目前と言うところで、ふと嫌な予感にかられ、その予感の正体を探ろうと周囲を見回した時、ぞわりと背筋が凍った。知らない間に後ろに誰かが、立っている。ユリアさんではないし、セネットさんではないことは明白。それにこれは、悪意を持っている気配。私を傷つける気配。はっとして、慌てて魔道具起動をさせようとしたとき、口元に白い布を押し当てられ、強い香料の匂いを嗅がされました。ふっと遠のく意識の中で、この匂いがルルハーバの花の匂いであることと、状態以上回復の魔道具をそういえばユリアさんに外されたままだったと思いながら、意識を完全に失った。




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