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第十二話 おふざけがすぎます


島原角屋で酒乱のオッサンが起こした一件…ゴホン!芹沢さんが起こした一件は、瞬く間に島原中に知れ渡り、ほかの遊郭をも震えあがらせた。

と、同時にさらに壬生浪士組は島原内で持て囃されるようになった。

まぁ、これは単なるご機嫌取りで、陰での評判は悪くなる一方だったのだけれど。


そして当の芹沢さんは、数日前、近藤さんとともに総司くんやらはじめくんやら新八さんやら、腕のいい人達を引き連れ大坂に出張していってしまった。

私も誘われたのだか、また歩きで行くとか言いやがるからやめておいた。

うん、いつかは行きたいな、大坂。すでにタコ焼きがあるのか知りたいところ。


今回は大坂での取締を強化するとか言ってたから、どうやら長期の滞在になるらしい。

ぶっちゃけ京に残った私の遊び相手は減り、毎日刺激のない生活を送っている今日この頃。


「あ~あ…総司くんがいたら甘味屋さんに一緒にいかない?とか言ってくれたんだろうな…」


大の甘党の総司くんは、美味しい甘味屋を見つけると私を連れだしたりしてくれた。


「新八さんは酒飲むか!?とか言ってくれただろうし…」


新八さんが非番で、私が暇しているときはよく二人で昼間から酒を飲んだりしていた。

まぁ、歳さんに見つかると雷を落とされたんだけど。


「はじめくんとか山南さんもきっと話し相手になってくれただろうなぁ…」


はじめくんの場合は私が一方的にしゃべってるんだけど。

山南さんは江戸の話や時勢の話やら、ためになる話をわかりやすく教えてくれる。


「はあぁぁぁ……ちょぅ暇」

「……だからってなんでてめぇは俺の部屋に来て、一人で団子食ってるわ、ぶつぶつ言ってるわ、仕事の邪魔しに来たんかよ!」


文机に向かっていた歳さんがくるりと振り返り、鬼の形相を見せた。


この人のツッコミってキレがあるよね、うん。



「歳さん遊んでくださいよ~」


山積みになった書類を前にして、私の呑気な一言にカチンときたのか、歳さんの眉間に深いシワが刻まれた。

負けるか。だって暇なんだもの。


「歳さん、歳さんってば!」

「……俺の遊びはちょっと激しいがそれでもいいか?」

「は……ぇ!?」


次の瞬間、私の視界が反転した。

目の前には屯所の天井と、不敵に笑う歳さんの顔……


「なぁ……わかるよな。いいか?」


こ…この状態は…/////

も、もしかして…/////


「/////!!!」


私を見下ろす歳さんがあまりにも妖艶で思わず顔を赤らめる。

どどどどうしよう////!!ま、まさかこんなことになるなんて…////!!

いや、今までもぶっちゃけワンナイトラブとかもあったけど!!

でもあれは酒が入ってたからできたことだし!!

つーか明るくて恥ずかしいし!!

あ、でも歳さんイケメンだし…

つーかぶっちゃけ気になるし…////

あ!でもこれを機に本当に好きになっちゃったらどうしよう…////!!


いろんなことが瞬時に頭を駆け抜ける中、私の口から出てきた言葉は……


「…や……優しくしてね/////?」


少し恥じらう様子を見せると、歳さんは一瞬で赤くなり、すぐに私を組み敷くのをやめた。


「……あれ?」

「馬鹿野郎////!!冗談に決まってんだろうが////!!」


バッと視線をそらした歳さんは耳まで真っ赤だ。


「え。もしかして歳さん、初め…」

「んなわけねぇだろうが////!」

「あはは…ですよね。男に押し倒されるのなんて、随分ご無沙汰だったから不覚にもドキドキしてしまいましたよ」


精一杯冷静を装ったが、まだ顔が熱いままだ。

だってあの歳さんの男の顔…

私はヘラヘラと笑ってごまかすと、そばに置いてあったお茶を一気に飲み干した。


「…男に押し倒される…か」

「ん?歳さん、なんか言いました?」

「なんでもねぇよ!!左之にでも遊んでもらえ!」


湯呑みを置いて歳さんに向き合うと、そこにはいつもの顔面凶器の歳さんが不機嫌そうに舌打ちをした。


「え?何?ホントはヤリたかったとか?」

「ばっ…////!!いいから出てけ!!」


歳さんは私の襟首をひょいと掴むと、襖を開け廊下に放り投げた。


「ちょ、猫じゃないんだから!」


振り返ったときにはガコンと乱暴に襖が閉められたあとだった。


「……歳さん、襖外れましたよ?」

「うるせぇ////!!あとで直す////!!」


……まったく。

突然押し倒してきてみたり、不機嫌になってみたり。

随分忙しい人だなぁ、歳さんも。

しかしどうやら遊んではもらえないらしい。


「……左之さんとこ行くか」


私はそう呟いて、左之さんがいるであろう道場へと向かったのだった。



***



ったくあの女は……

この俺が振り回されてばっかりじゃねぇか…


俺は江戸にいた頃から女に不自由したことはねぇ。

甘い言葉を囁けばどんな女だって股を開いたし、狙った女は必ず落としてきた。

それは京に来ても変わらねぇ。

だが…

なんだ?なんだってぇんだ?

あの女は俺の心の隙をついてくる。

俺の心を掻き乱す……

まさかこの俺があんな女に…


まさか。まさかだ。

俺は愛だの恋だの信じねぇ。

俺には必要ねぇ。

俺が信じるのは己の武士道のみだ。


「……さぁ、やるか」


俺は目の前にある山積みの書類を手に取り、筆をとった。


「…副長。山崎です」

「あぁ、入れ」


外れた襖がガタガタと音をたて、山崎が姿を現す。


「副長…襖が外れているようですが……」

「あぁ。わりィが直しといてくれ……んで、どうした?」

「あ……近藤局長より、副長への文です」


スッと差し出されたのは、大坂にいる近藤さんからの文らしかった。


「おぅ。ありがとな」


そう礼を言うと、山崎は一礼して部屋を去っていった。


……文をよこすなんて、また芹沢の野郎が何かやらかしたか………

俺はそう思いながら、近藤さんからの文をパサリと開けたのだった。




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