初日-2-
コンコンッと扉がノックされた。扉が開くと執事のカロルが立っていた。
「ルナ様、後宮の説明と庭をご案内いたします。」
「ありがとうございます。宜しくお願い致します。」
カロルは、広く煌びやかな後宮内を隅々まで案内していく。やはり、自国とは異なる文化に驚きつつ、ひとつずつ場所や規則などを覚えていく。
先ほど、玄関で迎えてくれた、お仕着せをカッチと着こなした女性がこちらに向かって礼をしている。
「侍女長のセリーヌです。宜しくお願い致します。」
「こちらこそ宜しくお願い致します。こっちがレイルン国から連れてきた侍女のキャシーです。」
ルナはあいさつし、キャシーを紹介した。キャシーは、侍女長に礼をした。
「キャシーさんには覚えて欲しい事もありますので、これから少しお借りしてもよろしいでしょうか。」
キャシーがルナの様子を伺った。
「あっはい。私は、一人で大丈夫ですので。キャシー行って来て。」
キャシーがいなくなり、次は、庭の案内のために外に出る。
「うわー!!本当に綺麗な庭だわ。」
クスクスとカロルが笑っている。
「はしたなくて申しわけありません!」
ルナは大きな声を出してしまったことに焦って、頭を下げた。
「いえ、失礼いたしました。ただ、後宮の高級な品々を見ていた時はおっかなびっくりといった感じでしたので、庭には興味を持って頂けて嬉しく思っただけなのです。」
「すみません、高いものを見ると壊したらマズイという思いが強く、顔がこわばってしまうのです。」
「庭は気にいって頂けましたか?」
「はい!とっても!!」
「それは、庭師が聞いたら喜ぶでしょう。せっかくなので庭師も紹介致します。」
カロルが手を振り、少し離れたところから、白いひげをたくわえたおじいさんがやってきて帽子をとって礼をした。
「こちらで、庭師をさせて頂いております。ダリウスです。」
「始めまして、こちらでお世話になることになりました。ルナと申します。宜しくお願い致します。」
「ルナ様は、この庭がとても気に入ったようですよ。」
「本当ですか?それは、嬉しい!もっと見せたい場所にご案内いしてもよろしいかな?」
「宜しくお願いしますわ!」
ルナが一つの花に興味を持てば、ダリウスが咲く時期や育て方、花言葉に逸話まで、面白おかしく説明していく。
「あれは、何をされているの?」
「花を摘んでいるのですよ。花は摘まなくては次の花が育ちませんからね。摘んだ花は捨ててしまうのです。」
「まあ、もったいない。後宮内で飾ったら良いのに。」
「後宮に飾るのは、それ専門に業者に任せているのですよ。そもそも摘んで、飾るのも重労働だし、人手が足りないのです。」
「そうなのね、あんなに綺麗なのに…」
「ルナ様に心痛めてもらえれば、花も本望でしょう。さあ、ここが我が庭の最大の見せ場、コーラル畑になります。」
目の前いっぱいが、薄ピンク色で埋め尽くされ、ほうじゅんな香りが辺り一面を覆っている。良く見ると、薄ピンクの小さな可愛らしい花がたくさん咲いている。
「こんな可愛い花初めて見たわ!!コーラルというの?レイルン国には無い花だわ。本当に素敵…」
「そんなに気に入って頂けて本当に嬉しいです。今が花盛りで、一番綺麗に見えるのでルナ様はラッキーですよ。」
ダリウスがニカッと笑った。つられて、ルナもニカッと笑顔になった。