調査団
午前の公務が終わり、昼食もとり、アルフレッドは少しくつろいでいた。連日、執務室のソファでねむっているため、少し疲れが出てきているのを感じた。
そんな時、ノック音が聞こえ入ってきたのは、執事カロルであった。
意外な訪問者にアルフレッドはガバッと起き上がった。
「ルナに何かあったのか!?」
カロルが来るなんて、よほどの事が起こったのではないかと心配になった。
「いえ、なにもございません。本日はお願いがあってまいりました。」
アルフレッドは、椅子に座り直しカロルの方を向いた。
「珍しいな。なんだ?」
「アルフレッド様、これを御覧下さい。」
そう言い、カロルは後宮の経費表をアルフレッドに手渡した。アルフレッドは、じっくりと眺めた。
最近の後宮費用が予定していた額よりかなり削減されている事が分かった。
「ルナ様は、この浮いたお金で、調査団を結成して頂きたいそうです。」
「どうやってこんなにうかしたんだ?」
「まず、調度品は新調されず、王妃様のを再利用されました。ほかにも、花摘みして飾りつけ、刺繍の内職、最近は、トマト栽培を始めたらしく、くわを持って畑を耕されています。」
「内職、花摘み、農作業…」
アルフレッドは、思い返すと思い当たることがいくつもあった。アルフレッドは笑いが込みあげてきた。
「ハハハ!ウソだろ!あいつ本当に、一国の姫かよ!!あーもう、母上の言う通りだ、俺は、こんなに国に尽くしてくれるルナに惚れてこんでる。」
そういうと、ずっと溜まっていた気持ちがすっきりとした。なんで気づなかったのか不思議なくらい、今は好きという気持ちが溢れてきた。
「そこまで、されて、俺がなんにもしないわけにはいかないだろうが!!」
アルフレッドは立ち上がり、クロードに指示を出していく。
「まず、調査団の隊長を選ばなくてはな。予算の都合上隊長以下は、新人にやらせる。始めは少数でいこう。クロード、現在の中隊長、新人騎士のリストをくれ。」
そして、カロルの方に向きかえった。
「カロル、ルナには、具体的になったら俺から伝える。そもそも、なんか言ったら勝手に動きそうだからな。だから、よく見張っておいてくれ。」
「承知いたしました。」
カロルは、もう一度礼をして部屋から出ていった。それを合図にアルフレッドは、作業に取り掛かろうとした。
しかし、その瞬間にクロードが話しかけてきた。
「ところで、さきほどのお言葉に訂正がございます。」
その言葉にアルフレッドは顔をあげた。
「アルフレッド様が、ルナ様に惚れている理由は、国に尽くしてくれるからだけではありませんよ。ただ純粋に心底全部に惚れてます。」
「このくそ従者め!!」
その日の夕食アルフレッドはルナに話かけた。
「そろそろ籍を入れたいと思っている。国民へのお披露目の日取りも決まったぞ。」
「そうですか、それはありがとうございます。」
ルナにお披露目式の具体的な説明をしていった。そうしている間に夕食も終わり、ルナを部屋に送り届けた。
するとすぐに、アルフレッドは部屋を出て厨房に向かった。厨房に着くと、シェフ長のジャックを見つけ話かけた。
「厨房の予算削減が予定されていたな。まさか、トマトなんかでそんな減らないだろう。」
「ルナ様が、昼食は簡易な物を希望されましたので、経費は削減していけます。」
「そうか、では、朝も夜もそういった簡易な料理に変えくれないか?せっかくの腕が申し訳ないが。」
「いえいえ!限られた食材でも最高の料理をお出ししてこそ最高の料理人ですよ。」
ジャックは、腕の見せどころですと、腕を叩き頬笑みながら言った。
ある日、トマト畑に行ってみるとパラソルがたっていた。ルナは驚き、庭師のダリウスに聞いてみた。
「これ、使って良いのかしら?」
「日差しが強いので、良ければ使ってください。あと、朝の花摘みの際も手が傷がつかないように手袋がリアカー付近に置いてありますので使って下さいませ。」
ダリウスはパラソルも手袋も用意したのはアルフレッドである事を伝えたいと思ったが、アルフレッドから口止めをされている。
それになにより、自分が言ってしまうのは野暮だと感じた。