農業
アルフレッドの看病のおかげか、ルナは翌日には回復した。しかし、アルフレッドはベッドから起き上がる事を許さず、カロルの講義も禁止だと言ってから出かけていった。
お目つけ役として侍女長で忙しいのにセリーヌも今日は付き添ってくれる事になった。
やることの無くなってしまい、ルナはとても暇である。そうすると、いかにお金を捻出出来るかばかり考えていた。
しかし、なかなか良い案は浮かばない。キャシーも色々と言ってくれるが、2人で頭を悩ませるばかりになってしまった。
その姿を見てセリーヌも後宮の情報をくれるが、なかなか良い案が出ずに唸っていた。
そんなところに、コンコンとノック音が聞こえセリーヌが扉を開けた。
そこには、シェフ姿の見知らぬ男性が立っていた。
「始めまして、後宮でシェフ長をさせて頂いております、ジャック・マクレーンと申します。」
「始めまして、いつも美味しい食事をありがとうございます。」
「お加減はどうですか?本日は、旦那様に、昼食は奥様の希望を聞くようにと言われましたので、食べられそうな物などを伺いにまいりました。」
そういいニコリと笑うジャックの姿はとても優雅で、思わず見とれてしまった。
朝食までは、おかゆだったために、ルナはもうすでにお腹はすいている状態である。アルフレッドの配慮を嬉しく感じた。
「ありがとうございます。あまり、脂っぽくない物で簡単な物を頂けないでしょうか。」
そう答えてみると、いつもの食事が本当に豪華すぎると気がついた。食費を削れれば、節約が出来るのではないかと考えた。
「あの今後、普段の食事をもう少し簡易な物にして頂けないかしら?」
「何か、食事に問題ございましたか?」
ジャックが少し不安そうな顔を見せた。それを見て、ルナは焦り否定した。
「まさか、全く問題なんてありません!本当に美味しいです!!ただ、少し節約をしたいな、と考えておりまして…私の食事だけどうかお願い出来ないでしょうか!」
「ルナ様のだけ…んーそーですねー。では、朝食と夕食は今まで通りで、その残り食材などを組み合わせて、昼食をお作りするなんてどうですか?」
ジャックは、少し考える格好をしたと思ったら、パチンと指を鳴らし提案をした。
「そんなことして頂けるのですか!?どうか、宜しくお願い致します。あっあともし良ければ、食糧費の帳簿を見せて頂けないでしょうか?」
「ルナ様は本当に、節約に御熱心なのですね!理由は、カロルから伺いましたよ。微力ながらお手伝いさせて頂きます。」
ジャックは、面白げに話を聞いてくれ、ウインクをして答えてくれた。
「その態度はルナ様に失礼ですよ。」
黙って見ていたセリーヌがさすがにと思ったのか苦言をいった。しかし、それ対してジャックは顔色一つ変えず、いやむしろ、より笑顔になった。
「セリーヌ、ルナ様に妬いているのかい?僕が愛するのは君だけなのに!」
「またそんなふざけて!!」
セリーヌの怒った顔を初めて見た。しかし、それにすらジャックは気にする事もなく、では、さっそく食事を作って、帳簿も持ってきますねーとジャックは、楽しげに部屋を出ていった。
その後、ジャック自ら食事と帳簿を届けに来てくれた。ルナが食事を終えて、帳簿を見ている時も、どういった経費なのか丁寧に説明してくれた。
「形をつぶしてしまう、トマトなんかはもっと安いものを使うのは駄目でしょうか?」
「確かに、形は悪くても問題はないですね。味が落ちてしまうのは駄目ですがね。」
「んートマト栽培するなんてどうですか?」
「庭師に栽培の仕事を頼んでみますか?」
「いえ、さら地になっているところがありまして、私が栽培をしてみたいなと。」
「ルナ様が?それは面白いですね!」
じゃあ、私がカロルとかを説得しておきますねーとさっそうとジャックは出ていった。セリーヌは諦めたように、日傘や作業服などを確認してきますと、ジャックを追って出ていった。
翌日、アルフレッドからベッドから出る許可をもらい、午前はいつも通りカロルの講義を受けた。昼食は簡易なものになっていた。
簡易でも美味しいわ、と感動した後、セリーヌが用意してくれた服を着て、庭師のダリウスに会いに行った。
そこで、ルナはさら地でトマトを作らせてもらえるよう頼んだ。
すると、ジャックから話は伺っておりますと、トマトの栽培方法と、栽培道具の使い方を習った。
初めて、くわ持って地面を耕してみて、その難しさを痛感したが、時間をかけてなれていった。午後いっぱいを使って、狭い範囲ではあるがトマト畑を耕す事が出来た。