市街地訪問-3-
翌朝、続き部屋を出て、アルフレッドのところに行ってみると、アルフレッドは立ち上がって伸びをしていた。
「アルフレッド様、体調は大丈夫ですか?」
ルナは、心配になり、アルフレッドの元に近づく。すると、アルフレッドは、ルナの顔を覗き込んだと思ったら急にルナを抱き上げた。
「アルフレッド様!?」
慌てたルナは、アルフレッドを見たが、アルフレッドは、キャシーの方を向いていた。
「侍女、まず、カロルに医者を呼ぶように言ったら、看病の支度をしてくれ!」
「あっはっはい!!」
アルフレッドは、壊れ物を扱うように、ベットにルナを寝かしつけた。
「見事に俺の風邪がうつったな。」
まさか、気づかれると思いもしなかったルナは驚いた。多少寒気と頭痛がある程度で、咳も出ていなかったので、キャシーにも気づかれなかったのだ。
「でも、私は、全然たいしたことないです!看病なんてそんな…みんなの大切な時間を使わせるわけにはいかないです。」
「お前より大切なものなんてあるか!!…って皆思っているから安心しろ。ゆっくり休め。」
アルフレッドの言葉がとても心に響いた。この後宮に自分の居場所があるような気持ちになった。
そんなとき、キャシーにカロル、セシールまで、走りながら入ってきてくれた。普段なら、決して走ったりする事なんてありえないのに…ルナは自然と涙が出た。
「どうした!体が辛いのか!?」
「いえ、皆さんに心配してもらえて嬉しくて…」
キャシーが、駆け寄ってきて涙を拭いてくれた。
アルフレッドは、ルナが落ち着くと、カロルに声をかけた。
「俺は、仕事に行ってくる。行かないと、ルナに叱られそうだからな。ただ、体調の報告を頼む。」
「承知致しました。」
そう言ってアルフレッドはルナの方にもう一度目を向け、静かに部屋から出ていった。
ルナは、目が覚めるともうあたりは暗くなっていた。昨日、アルフレッドが心配で夜遅くまで付き添ってしまったこともあり、よく眠ってしまったようだ。
頭痛もだるさも残っていない。もう治ったかなと、少し起きあがってみた。すると、足元に違和感を感じた。
目をこらしてみると、それはアルフレッドだった。
---わっアルフレッド様!?寝ていらっしゃるわ…お仕事から帰ってきてから、付き添ってくれていたのかしら…
ルナは、思ってもみなかったアルフレッドの存在にとても嬉しくなった。 眠っているアルフレッドを覗きこんでみた。
---まつ毛、長い。髪もさらさら
触ってみたいという気持ちにかられ、手を伸ばしてみた。
「んっあっ起きたのか?」
「あっはっはい!!」
ルナは慌てて手をひいたので、上ずったような変な声になってしまった。少し落ち着くと、昨日アルフレッドが風邪であった事を思い出した。
「アルフレッド様は、病み上がりなのに付き添って頂き申し訳ありません。」
「べつに、俺の風邪をうつしたんだしな。」
「いえ、そもそも私のせいで風邪をひかれてしまったのですし…」
「だから、それは違うと昨日も言ったろう!この話は、もーいい!」
アルフレッドは、そっぽを向いて答えた。向いた先には、大量の刺繍された布が目に入った。
「あれは?」
「えっと、あの、侍女さん達の刺繍が素晴らしかったので見してもらっていました…」
---せっかく看病して下さったのに、嘘付いちゃった。でも、内職するような姫は変って思われてしまうかも…
アルフレッドは、起き上がっているルナに寝るように言った。ルナは、アルフレッドの顔を見ていると安心感に満たされ、眠気が襲ってきた。