髪飾り
アルフレッドは執務室で新規購入予定である銃の視察を行っていた。軍事的に遅れをとっているカータス国は銃器などの整備に今力を入れている。
そのため、今回も新たな銃を試験的にためす機会をもうけた。
「こちらが、献上を予定させて頂いております、最新の銃になります。」
「話通り本当に軽く、丈夫そうだな。しかし、ここでは、機能の方は確認出来ないがな。クロード、軍指揮官に確認の要請をしてある。届けにいってくれ。」
「承知致しました。」
クロードが銃の入った木箱を抱えて、執務室から出ていった。
アルフレッドは、商人の方に向きかえった。
「確認が取れ次第連絡する。」
「ありがとうございます。」
商人は頭を下げ、荷物整理を始めた。
アルフレッドは、あることが頭によぎり、クロードもいない今のタイミングならと思い、商人に声をかけてみた。
「ところで、貴殿は多くの商品を取り扱っているそうだな。」
「はい、各国からの輸入品多く扱っております。」
「宝石はあるか?」
「はい!それこそ、西から東、様々な宝石がございます。」
少し、アルフレッドは考え、ドアの方を確認してから、問いかけた。
「あーコーラルのような色の宝石はあるか?」
「でしたらペツォッタイトなどになると思います。サンプルはこちらになります。」
商人が取り出したサンプルは、薄ピンク色でコーラルの色にかなり近い。
「それ、いいな。」
「家は、輸入屋ですので、宝石そのものもございますが、この宝石を使いコーラルをモチーフに加工した装飾品も多くございます。」
「モチーフにしているのもいいな。装飾品はどういったのがある?」
「首飾り、イヤリングなど様々ございます。写真がこちらに。」
「ずいぶん準備が良いな。」
「お客様のご要望に即座に対応出来てこそ商人です。どうぞごゆっくりご覧ください。」
商人は頬笑み、写真をアルフレッドに渡した。アルフレッドは、一つ一つを慎重に確認していくと、一つの髪飾りが目にとまった。
クロードが選んだ濃い色の髪飾りより、俺が選んだコーラルの髪飾りの方が喜ぶだろうなと想像して頬がゆるんだ。
一度咳払いをし、商人に、髪飾りを手配するように頼んだ。
すると、1時間もあればお渡し出来ますと言われ、さっそく持ってきてもらう事にした。
その際、直接アルフレッドに手渡すようにと強く念を押し、商人を見送った。
髪飾りは写真よりも数段よく、クロードに見つかることなく受け取る事ができてアルフレッドは上機嫌で後宮に帰っていった。
出迎えの際も夕食の際も、どうやって渡そうかばかり考えていると、あっと言う間に全て終わり部屋に戻っていた。
ルナはいつものように、続き部屋に向かおうとした。それを見てアルフレッドは焦った。
「あー市民に結婚のお披露をすると言ったろ。その時ように使え。」
「ありがとうございます。」
ルナは、木箱を見つめ、前にくれたのは、仲良しアピールのためにクロードが選んだものであった事を思い出した。せっかくもらったのに、それがアルフレッドの意思ではないと思うと、嬉しさは出てこなかった。
そんな、あまり喜ばないルナの姿に、前回渡した時喜んでいたのは、ただの演技、アルフレッドはそう思い知らされた気がした。
ルナが続き部屋に入っていき扉が閉まった瞬間、箱を開けてもくれないルナに苛立ちを覚え、近くにあったゴミ箱を蹴飛ばそうとしたら机に当たった。痛みで少し冷静になった。
するととたんに、むなしさに襲われ、ただただ、閉まっている扉を見つめ続けた。