デート
ルナも後宮の生活にすっかりなじんできたある日の朝食中にアルフレッドが声をかけてきた。
「ルゥ、僕は今日休みなんだ。デートしよう。」
「えっいいの?」
「そりゃ、せっかく君と一日過ごせるんだから、デートしたいんだよ。ただ、警備の都合上王宮の敷地内のみになってしまうけど。」
アルフレッドは、少し悲しそうな表情を見せた。
「いいえ、嬉しい!後宮の周りしか行ったことがないの。」
「そうか、じゃあ、食事が終わったら支度して出かけよう。」
朝食が終わり、部屋に戻るとアルフレッドはいつものしかめっ面になる。
「せっかくのお休みをよろしかったのですか?」
「王宮内は、安全なうえに人の目が多い。仲の良さをアピールするには絶好の場所だ。」
「そうですか。」
「支度は大丈夫か?じゃあ、行くぞ。」
部屋を一歩出たとたんに、アルフレッドの顔は王子様の顔になる。
「さあ、どこか行きたい場所なんかはあるかな?花畑のようになっているところもあるし、乗馬も出来るような場所もあるよ。」
「まあ素敵、両方とも行ってみたいわ!」
「ルゥは、乗馬出来るの?」
「あまり速くなければってくらいかしら…アルは?」
「それは、実際に見て確認してよ。」
アルフレッドは、ニコッと笑いかけた。
「じゃあ、まずは、花畑に行ってみるかい?」
「はい!」
二人は、王宮内を歩き、花畑に向かう。色とりどりの花が見えてきて、ルナは駈け出した。
「うわー凄い!!連れて来てくれてありがとう!」
---可愛い…
「アル?」
「なっなんだ?」
「ううん、反応がなかったから。」
アルフレッドは、何を話しかけられたのか分からないため適当に笑ってごまかしていたら、ルナの興味はすぐ別のものにうつった。
「あっコーラルだわー綺麗。」
うっとりとしたようにルナが言う。アルフレッドはその姿を見ながら、髪についている髪飾りの色の濃さを改めて感じた。
そろそろ昼食の時間であることをクロードに告げられたが、ルナがまだ花に夢中になっているので、ここで食べられるように準備するよう命じた。
クロードは、ニコニコと承知しましたと告げ準備を始めた。
---その顔が癇に障るんだよ!
外なので、アルフレッドは心の中だけで悪態をついた。
食事の準備中もルナは気づくことなく様々な花を夢中になってみている。その姿をアルフレッドも目で追っている。
昼食の準備が出来ましたと、クロードが満面の笑みで言ってきたが、人前であるし、ここで食べるという願いも叶えてくれたのでなんとか蹴りを入れたい気持ちを抑えられた。
「ルナ、ここでお昼にしよう。昼食後に、乗馬しにいこうか。」
「えっここで昼食を食べられるの?嬉しいわ!ありがとう!」
アルフレッドは顔が赤くなるのを感じた。しかし、後ろから聞こえる噛み殺した笑い声のせいですぐに苦々しい気分になった。
昼食も進み、ひと段落ついたところで、アルフレッドは午後の予定について話し始めた。
「乗馬するなら、少し、服を着替えなくてはだね。ルゥに良い馬を選んでおくからゆっくり支度してきて。」
アルフレッドにそう言われ、ルナは、乗馬用の服に着替える為に一度後宮に戻った。