出会い
今夜は、ルナの弟、セシルの誕生日パーティである。今日で成人を迎え第一王位継承者になった、セシルの周りには多くの人が詰めかけている。
セシルが成人するまでの間は、ルナが第一王位継承者だったため、このような会では中心にいたが、その必要ももうなくなり、少し離れた場所から弟の様子を眺めている。
壁の花のようになっていた、ルナの耳に黄色い声が聞こえてきた。
大方、カータス国の第一王子が騒がれているのだろうとあまり興味もなく目を向ける事は無かった。
カータス国とは、ルナのレイルン国とは、協力関係であり、敵対関係でもある。カータス国は、工業が発達していて町工場などが多くある。レイルン国は、商業が盛んであり、加工などを行い販売する。
表面上、協力関係のように見えるが、カータス国は、レイルン国の下請けのような扱いを受けている。お互いに不満や不正を隠し持っていて、関係は悪化の一歩をたどるばかりである。
そんな、レイルン国からすると少し複雑な関係にあるカータス国の第一王子は、見た目がとても良い。ルナも一度か二度挨拶を交わしたことがあるが、目を奪われるような外見であった。
しかし、ルナはかっこいーなと思う程度で、わざわざ話かけに行きたいと思う事は無かった。黄色い声が大きくなってきたので、弟セシルに話かけにこちらに来たのだろうと、少し顔をあげてみた。
すると、目の前に、カータス国の第一王子が立っていた。
「お久ぶりです、ルナ様。覚えていて下さってますか?カータス国のアルフレッド・オースティンです。」
「お久しぶりでございます。もちろん、忘れるわけがありませんわ」
ルナは、思いめぐらしていた人物に急に話しかけられ焦ったが、優雅に礼を返すことが出来た。
「それは、よかった。もしよろしければテラスで一緒に休みませんか。」
「私も、少し涼みたいと思っていたところでしたの」
アルフレッドが話しかけてきた理由がルナには、全く見当もつかない。第一王位継承者でも無くなったし、個人的にアルフレッドと関わりを持った事も無いのだ。女性達からのキツイ視線を浴びながら、頭を必死に働かしたがわからない。
宮殿内の賑やかさから離れ、落ち着いた雰囲気であるテラスについた瞬間、アルフレッドの顔から笑顔が消え、ルナを見据えた。
「お前は、両国の関係をどう思っている?」
先ほどまでとは、大きく雰囲気が異なり真剣にルナに問いかけた。その変化に驚きはしたが、自分も真剣に答えねばと思い少し考えをまとめてから、ルナは話始めた。
「今の一部の人間だけが潤っている状態は、不満を持つ人が多すぎます。規制されていないところでの不正も目に余るものがあります。私達の国同士協力していけば、他国より優れた商品を生み出すことが出来、両国ともに全体的な活性化が目指せるのではないかと考えております。私は、もっと両国の関係を改善させていきたいです。」
「それは、本気の思いか?」
「はい」
ルナは、アルフレッドの目を見つめ答えた。
「俺と結婚してくれ。」
「えっ!?」
「本当に普通の姫にしか見えないが、なぜだかお前は、レイルン国で人気があるんだろ。俺もカータス国で人気がある。僕達二人が結婚というとこになれば、友好の証になるし、両国の関係を深くすることも出来る。」
---なんだか、失礼なこと言われた気がするわ…
「そんなに上手くいくものでしょうか」
「お前は、昨日まで王位継承者だった。それが、我が国に嫁に来るというのは、我が国民としては優越感が出るはずだ。貴国においても、第一王子である俺の正室として迎えるとなれば、特別待遇であると思うだろう。」
「失礼ですが、第一王子の正室がレイルン国の者になることに、反感が出る可能性があるのでは?」
「ああ、それはその通りだ。だが、」
アルフレッドがルナの目を見つめる。
「お前のことは俺が、命にかえても守る」
「後日改めて、正式な婚姻申し込みを送る。それまでに考えておいてくれ。」
アルフレッドは宮殿内に戻っていった。
「命にかえても守るなんて始めて言われたわ…」
胸の高鳴りを抑えつつ、先ほどの話を何度も繰り返して考えた。しかし、すぐに決められるはずもない。まずは、今日の自分の役割を果たさなくてはと、宮殿内に戻ることにした。