彩源高校
4月。彩源高校入学式。
鮮やかに咲き誇る桜に見守られ、オレは無事高校生になった。
斉本 彩葉 15歳。
父は油絵画家、母はイラストレーター兼漫画家で叔父は風景画家。じいさんばあさんは日本画家。遠いご先祖さんも絵描きだったらしい。
うちの家系に生まれた者は代々絵師として働いている。オレはその跡継ぎになるはずの斉本本家の長男だ。
だからといってオレは絵を描くのがうまいわけじゃない。てゆーかドヘタだ。
例を言えばたくさんあるが、1つ紹介しよう。
幼稚園に通っていたころ、母の絵を描くことになったことがある。
オレの周りの子たちは子供らしいかわいらしい絵を描いていた。女の子が描いたのとかは目ぇがキラキラ☆だったりする。
そんな中で、オレが描いた母の絵だけが棒人間でのっぺらぼうだった。そんな母の横にはうちで飼っている柴犬のポチを描いた。……はずだったのだが、そこにあるのは黒いダンゴムシ。
母とポチを描いたつもりがただの棒人間と黒い丸になっていた。しかも黒一色。
その絵をみた幼稚園の先生は、
「いろはくん、まる描くの上手ねえ(汗)。」
って苦笑い。
家でこっそり母が泣いていたのを覚えている。
他にもいろいろ絵に関しての事件はあったが、それでも身内はオレを跡継ぎとして絵を教養してきた。5歳のあの事件までは。
5歳のあの日、オレは日本画を描かされていた。そのときとんでもないことをおれはしてしまったのだ。
…まぁその話は今は置いておこう。
とにかく、その事件以降身内がオレに絵を教養することはなくなった。
斉本家の跡継ぎは、落ちこぼれのオレではなく、天才の4つ上の姉になった。
おかげでオレは自由の身。毎日のんびり遊んですごしてきた。
すごい楽しい!絵を描くよりマンガを読む。絵を鑑賞するよりテレビを見る。もーサイコー!
5歳まではいっつも監視されて絵を描かされていたから、絵を描かなくていいことがこんなにすばらしいものだとは知らなかった。
姉をかわいそうに思った。
彼女の部屋には、他人の影響を受けないように、彼女の絵と道具しか置かれていないらしいのだ。
姉は隔離され、オレは5歳から姉と会わせてもらえていない。
オレがあんな事件を起こしたせいで、姉は跡継ぎにされ、オレのときよりひどい環境に置かれていた。
オレはそんな姉を助けたくていろんなことをしたがどれも効果はなく、結局ある約束をして終わった。
それ以上オレにできることはなくて、まただらだらする毎日にもどる。
で、そうやって毎日だらだらしてたら、そうもいかない時期が来た。
……高校受験だ!
だらだらしてるうちにいつの間にか中3になっていた。
勉強なんてほとんどしてなかったから、行ける高校がなくなっていた…。
そしてコネで入れたのが、この私立彩源高校。
普通科と美術科のある高校で、オレは当然普通科にいくつもりだったのだが、
「美術科にしろ。それがいやなら高校には行くな。」
と普段オレにはかまわない父が言ったので、美術科にすることになった。
やだなぁ。みんなが素晴らしい絵を描いている横で棒人間とダンゴムシ描くのは。
おっと、彩源高校の紹介をしてる途中だった。
彩源高校は創立17年の歴史の浅い高校だ。校舎はまだ新品のようにキレイ。周りからの評価も高い、人気の高校である。
何でオレがそんな高校に入れたか…それは……
叔父の高校だからだ。
姉が通った高校でもある。
斉本家は姉を、跡継ぎを監視するために高校まで建ててしまった。
どんだけ姉に執着してんだよ。怖ぇよ。
てゆーかオレもう10年ぐらい姉さんと会ってない。
顔もわかんない。
姉さんもうオレのこと忘れてんじゃないか?
ちょっと不安だ。
そんなことを考えてたら、入学式が始まった。
叔父が壇上に立ち、鋭い視線をオレに向ける。
やっぱりオレは身内に嫌われているらしい。
特に叔父には。
5歳の事件で一番被害が大きかったからだろう。
入学式が終わり、少しテンション下がり気味に教室へ向かう。
姉はきっとにっこりほほえまれて入学したんだろう。
そう思うと気分が悪い。
「いろは。」
名前を呼ばれた気がして後ろを振り向く。
そこにいたのはうわさの…
叔父さんだった。
初めて投稿します。
いろいろおかしいところがあるかもしれませんが、楽しんで頂ければ嬉しいです。