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ゲート ~黒き真実~  作者: 閃天
最終章 不透明な未来編
259/300

第259話 魔族狩りの理由とは?

 ルーイットに助けられたパルは、現在、氷の城に来ていた。

 ここは、ルーイットが現在寝泊りしている場所で、寒さも凌げ、食料もある程度備蓄されている場所でもあった。

 元々、氷の女王エメラルドが暮らしていた場所だ。

 ルーイットがここに寝泊りしているのは、人目につかないという事も一つの理由だった。

 ここなら、ルーイットは派手に鍛錬が詰めるし、獣化も人目を気にせずする事が出来た。

 それもあり、ルーイットはここ数ヶ月ずっとここで鍛錬を続けていた。


「しかし……驚いたぞ。あの腕は何だ?」


 腰に手をあて、感慨深そうにパルはそう口にする。

 紺色の髪を揺らすルーイットは、ティーカップにお茶を注ぎながら、苦笑した。


「アレは、部分獣化って言って、右腕だけを獣化した形だよ」

「部分獣化ねぇー。そんな事、可能なのか? ……て、聞くのは野暮か。実際、目の前でやって見せたわけだし……」


 困り顔で、パルは頭を掻いた。

 正直、そんな事が出来るとは、知らなかった。

 その為、イマイチ、ルーイットの説明に納得はいっていない。

 パルのその疑念を感じ取ったのか、ルーイットは右手の人差し指で頬を掻き、眉を八の字に曲げる。


「いやー。まぁ、なんて言うのか……獣化って、全体でするから負荷が掛かるから、部分的に出来ないのかな? って、考えて練習してたら、出来る様になったんだよねー」

「おいおい……いくらなんでも、無謀すぎるだろ? 体への負担が大きすぎるだろ?」


 肩を竦めるパルは、呆れた様に首を振った。

 幾ら人目が無く、派手に動き回っていいと言っても、獣化は体に相当の負担が掛かる。

 一度獣化するだけで肉体はボロボロになる程だ。

 誰もいないこの場所で、そんなものを使えば、最悪死ぬ可能性だってある。

 そんな確立の中で、獣化の部分化を成功させたのは、正直驚きだった。


「よく……死ななかったな」


 パルは目を細め、鼻から息を吐いた。


「私も、自分でビックリだよー。よく、死ななかったなーって」


 あはは、と笑うルーイットに、パルは引きつった笑みを浮かべた。



 それから、二日が過ぎ――。

 クロトとティオは、土属性の魔力を使い作り上げたかまくらの中に居た。

 この辺りに集落や村がなかった為、苦肉の策で、今の状況だった。

 食料の類を持っていない為、体力を消耗しない為動かず飢えを凌いでいた。

 吹雪は未だに弱まる事はない。

 ただ、この状況は幸いだったのかも知れない。

 少しでも体力を回復する為、体の傷を癒す為、時間が必要だったのだ。

 特にクロトの体はボロボロだった。

 轟雷による二度の雷迅で、右肩は限界に近い。

 先のバレリアでの戦いでも、相当無理をして居た。

 だが、クロトはそれを表情に出す事はなかった。

 一方、ティオも精神的に参っていた。

 兄であるガガリスの件が大きな要因だ。

 ティオも、それを表情には出さないが、時折その表情は虚ろになる。

 壊れた馬車の破片を燃やし、暖をとる二人はほぼ同時に深いため息を吐く。

 そして、打ち合わせしたわけでも無いのに、二人の声が重なる。


「あの……」

「あの……」


 二人の声が重なり、視線が交錯する。

 沈黙が続き、クロトとティオは同時に笑う。

 二人の笑い声は吹雪きの音にかき消される程の小さな声だった。

 暫くの後、二人は笑い会い、やがて話し合う。


「まず、俺からいいか?」


 クロトがそう言うと、ティオは小さく頷く。


「正直、グランダースが魔族狩りをしている理由が未だに分からない」

「そうですね……目的として、魔力を集めているって言うのが一番有力ですけど……」


 腕を組むティオが、眉間にシワを寄せる。

 その考えが、一番有力だが、どうにも腑に落ちない。


「ただ、そうだとして……なぜ、魔力を集める必要があるのかって事なんだけど……。ティオは何か心当たりは無いのか? 例えば、グランダースが大量の魔力を消費する兵器を持っているとか?」


 クロトが右手の平を上にして、軽く上下に振りながら問い掛ける。

 すると、ティオはオレンジブラウンの髪を揺らし、右耳にした銀のピアスを煌かせる。


「すみません。私には……。城では、一番力の弱い存在でしたから……。極秘事項や、そう言うモノの存在は知らされて居なくて……」

「そうか……」


 クロトは腕を組むと右手を口元へと当てる。

 人差し指で鼻先をトントンと叩くクロトは瞼を閉じた。


「まぁ、兵器だとしたら、あのガガリスがなんらかの対策を打っているだろうし……」

「そう……ですね」


 クロトの言葉に、一瞬だがティオの表情が沈む。

 その表情にクロトは瞼を開くと、頭を下げた。


「悪い。思い出したく無い事を……」

「いえ。いいんです。気にしないでください。だとして、何の目的なんでしょう?」


 ティオがそう言うと、クロトは首を振る。


「分からない。ただ、心配なのはセラだ……」

「そうですね……。魔王デュバルの娘ですから……相当の魔力量を持っているでしょうし……」

「うん……そうだな。でも、心配してるのはさ、そうじゃなくて……」

「そうじゃなくて?」


 ティオは聞き返し、首を傾げた。



 グランダース城の地下深く。

 両腕を鎖で拘束されたセラが、吊るされていた。

 無数の管が体に通され、様々な機器壁際には置かれていた。

 何に使うものなのかは定かではないが、とても物々しい機器の数々だった。

 まだ、もうろうとする意識の中で、セラは、一人の老人の姿を目視する。

 薄暗い為、それが誰なのかはハッキリとは分からない。

 だが、とても不快な雰囲気を漂わせていた。

 もうろうとするセラの意識の中で、しゃがれた声が聞こえる。


「魔王デュバルの娘よ。貴様の持つ、無限に出、魔力を解放しよう」


 老人はそう言うと、傍にあったスイッチを下ろす。

 すると、機械音が響き、物々しい音が鳴り出す。

 大きな歯車がゆっくりと動き出すような、不気味な音だ。

 その音に遅れ、薄暗い部屋に明かりが灯る。

 そして――


「ぐがああああっ!」


 唐突に、セラがうめき声を上げた。

 彼女に繋がった管から僅かな光を纏った魔力が次々と吸引されていく。

 無理矢理、セラの魔力を奪い取っているのだ。

 それは、激痛だった。

 体中を捻られ、絞られているようなそんな感覚だ。

 あまりの激痛に、セラの呻き声が消える。

 声にもならない痛みだった。

 苦しむセラの姿に、老人は不敵に笑う。


「さぁ、貴様の両親が封じたと言う膨大な魔力を、解放しろ!」


 老人は両腕を広げ、声高らかにそう言い放つ。

 やがて、セラの意識は失われる。

 その最中、セラは、願う。


(クロト……助けて……)


と。

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