表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

クトゥルフ神話TRPG

声なき者たちの残響

作者: なもゆ
掲載日:2025/12/26

クトゥルフ神話TRPG 第6版

長編シナリオ

『声なき者たちの残響』

シナリオ概要

人数:2~4人(3人推奨)

想定時間:10~15時間(3~4話分割可)

舞台:現代日本・地方都市「霧ヶ峰市」

ジャンル:都市伝説ホラー/心理/選択型

ロスト率:中~高(選択次第)


テーマ

忘れられること

声を上げられなかった人間

救済とは「残す」ことか、「終わらせる」ことか


推奨技能

・必須級

《聞き耳》

《図書館》

・重要

《説得》or《信用》

《心理学》

《精神分析》

《機械修理》or 《電気修理》

・あると深まる

《オカルト》

《クトゥルフ神話技能》

《芸術》(朗読・演説・放送など)


NPC説明

黒瀬恒一くろせこういち

〈基本情報〉

年齢:42歳

性別:男性

職業:元・音響工学研究者

立場:「声の保管施設」の管理者

初登場:第二章(音声のみ)

対面:第三章

〈性格〉

温厚で理知的。責任感も強い。自己評価が低く、他人の痛みに敏感。そのため、決断を先延ばしにしがち。

〈内面・動機〉

「聞かれなかった声」を救いたい。同時に、自分自身も“聞かれない側”になることを恐れている。

善悪よりも「役割」を優先してきた。本当は、誰かに止めてほしいと思っている。

〈探索者への態度変化〉

初期:距離を取る/観察

理解されると:協力的

否定されると:防御的だが敵対はしない

最終局面:判断を探索者に委ねる

藤本沙耶ふじもとさや

〈基本情報〉

年齢:23歳

性別:女性

職業:動画・音声配信者

立場:失踪者/声として存在

初登場:第一章(音声ログ)

明確化:第四章

〈性格〉

内向的で気遣い屋だが、承認欲求が強い。自己主張が苦手であり、諦めが早い。本当は寂しがり。

〈内面・動機〉

誰かに話を聞いてほしかった。注目されているのに、理解されていないと感じていた。

消えたいわけではない。

「ちゃんと存在していた」と肯定されたい。

〈探索者への反応〉

名を呼ばれると強く反応

肯定されると感情が安定

現象扱いされると声が弱くなる

声なき者たち(集合NPC)

〈基本情報〉

正体:聞かれなかった声の集合

人数:不定(数十~数百)

立場:怪異/被害者

初登場:第三章(断片)

顕在化:第四章

〈性格傾向〉

一貫性はなく、子供のような声が多い。なお、強い拒絶反応は少ない。「消される」ことを恐れる。

〈本質〉

悪意はないが、敵でも味方でもない。存在欲求の塊で記録と認識によって形を保っている。


継承者(探索者NPC化)

〈概要〉

エンディング②で発生

探索者の一人が黒瀬の役割を引き継ぐ。

〈性質〉

人間だが、人間社会からは距離を取る。声を聞き、整理し、保つ存在であり、善悪ではなく「維持」を選んだ者。


探索者同士は知り合いということで大丈夫です。

KP向けメモ

黒瀬は「敵にしない」方が物語が深まる

沙耶は“ヒロイン”ではなく“象徴”

声たちは怖がらせるより「切なさ」を意識

NPCは全員「間違っていない」


イントロダクション


――ノイズの向こう側


音は、消える。

それは誰もが知っている事実だ。

声は空気を震わせ、耳に届き、そして消える。

録音したとしても、再生しなければ意味はなく、

再生されたとしても、聞き手がいなければ、それはただの雑音になる。

だが――

**聞かれなかった声**は、本当に消えているのだろうか。

霧ヶ峰市では、ここ数年、奇妙な報告が相次いでいた。

無人の部屋で、誰かが話している気がする。

録音した覚えのない声が、データに混じっている。

そして、その声を最後に、人が一人、また一人と消える。

警察は事件性を見出せず、

メディアは一時的な都市伝説として扱った。

だが、探索者たちは知ることになる。

これは「始まり」ではない。

**ずっと前から溜まり続けていたものが、溢れ始めただけ**だということを。



クトゥルフ神話TRPGシナリオ「声なき者たちの残響」


・ノイズ混じりの依頼


最初の違和感は、とても些細なものだった。


行方不明者――

**藤本沙耶(23)**。


配信活動をしていた女性で、

数日前から連絡が取れなくなっている。

部屋に荒らされた形跡はなく、争った痕跡もない。

ただ、生活が途中で切り取られたように、「そのまま」残されている。

机の上には、スマートフォン。イヤホン。

そして、小型のボイスレコーダー。

探索者の誰かが、再生ボタンに触れる。

カチ、という乾いた音。

続いて流れ出す、ザー……というノイズ。

最初は何も聞こえない。

だが、耳を澄ませると――

ノイズの奥に、確かに「声」がある。女の声だ。


・音声ログ①(KP読み上げ推奨)

「ねえ……これ、ちゃんと録れてる?」

「今日もさ、配信したんだけど」

「コメントはいっぱい来るのに、

「誰も“私の話”は聞いてないんだよ」

「声って……受け取ってもらえなかったら、最初から無かったのと同じなのかな」


一瞬、息を吸う音。

何かを言いかけて、止めた沈黙。

そして、録音は終わる。


再生を止めたあとも、探索者の耳には、ノイズの余韻が残っている。

今のは、ただの独白だ。

そう言い聞かせても、「誰かに聞かれている感覚」が消えない。


【聞き耳】に成功した探索者だけが気づく。

――今の録音には、沙耶の声以外の、微かな息遣いが混じっていたことに。


SANチェック 0/1d2。


・沙耶の部屋


部屋は静かだ。

あまりにも静かすぎる。

冷蔵庫の低い唸り音。

外を走る車の遠い音。

それらの「生活音」が、逆に異様に感じられる。

壁には防音材。

配信用の簡易ブース。

ここは「声を出す場所」だった。

それなのに今は、声を失った殻のように見える。

探索者の誰かが、ふと気づくかもしれない。

この部屋には――

誰かが「まだいる」気配がある。

振り返っても、もちろん誰もいない。

だが、いないはずなのに、いなかったと断言できない。


・第一分岐


・聞く者か、聞かない者か

ここから先、探索者の態度が

物語を静かに分けていく。


◆ 声を「聞く」選択


録音を繰り返す。

ノイズを解析する。

沙耶の残した声を、何度も再生する。

そのたびに、声は少しずつ近づいてくる。

再生が終わったはずなのに、一拍遅れて、同じ言葉が聞こえる。

「……ねえ」

誰かが、続きを話そうとしている。


◆ 声を「避ける」選択


録音を止める。

再生を控える。

これは怪異だと割り切る。


心は、多少楽になる。

だが同時に、

声は探索者から距離を取る。


後になって、「あの時、聞いておけばよかった」と思うことになるかもしれない。


・終わりに


その夜、探索者の誰かは夢を見る。

静かな部屋。

誰もいないはずの場所で、確かに「誰か」が、こちらを向いて口を開く夢を。

声は聞こえない。

ただ、唇だけが動く。


――まだ、足りない。


・声だけの男


沙耶の部屋を出たあとも、

探索者たちの耳には、あのノイズが残っていた。

何かが聞こえた、という確信はない。

だが、何も聞こえなかったと断言することもできない。

それが一番、厄介だった。


・失踪の連鎖


調べを進めるにつれ、

沙耶の失踪が「単独の事件」ではないことが見えてくる。

古い新聞記事。

ネットの片隅に残った書き込み。

削除されたブログのキャッシュ。


【図書館】に成功した探索者は、

それらを一本の線として繋げる。

十数年前から、

霧ヶ峰市では似たような失踪が断続的に起きていた。

* 深夜ラジオのパーソナリティ

* コールセンター勤務の女性

* 一人暮らしの老人

* 音楽配信をしていた学生

共通点は、驚くほど少ない。

だが、唯一、はっきりしていることがある。

彼らは皆、「声を出す場所」にいた。


そしてもう一つ。

失踪直前、彼らは例外なく、「誰にも相談していなかった」。


【心理学】に成功すると、

探索者はその異常さに気づく。

普通、人は不安を口にする。

愚痴でも、冗談でも、独り言でもいい。

だが彼らは、最後まで「誰にも聞かせなかった」。

まるで――

聞かせる相手が、最初からいなかったかのように。


SANチェック 0/1。


・深夜のノイズ


その日の夜。

探索者の誰かが、ふとした拍子に録音機材を触る。

あるいは、勝手に電源が入ったのかもしれない。

ザー……という、あの音。

沙耶の声ではない。

もっと低く、落ち着いた男の声。


・音声ログ②(自動再生)

「……やはり、聞こえてしまいましたか」


声は、穏やかだった。

感情を抑えた、理性的な声。


「驚かせるつもりはありません」

「ですが、あなた方が“彼女の声”に触れた以上、いずれここに辿り着く」


一瞬、ノイズが強くなる。

声が遠ざかり、また戻る。


「私は、黒瀬と言います」

「あなた方と、話をしなければならない」


再生が終わる。

……はずなのに、

探索者は気づく。

誰も再生を止めていない。

それでも、声は、ぴたりと消える。

部屋は静まり返る。

だが、その静けさは、「終わり」ではない。

待っている静けさだ。


・声だけの会話


しばらくして、

探索者の誰かが、

思い切って問いかけるかもしれない。


「誰だ」

「何を知っている」

「沙耶はどこだ」


すると――

答えは、スピーカーから返ってくる。


「藤本沙耶は、生きています」

「少なくとも、“声として”は」


その言い方が、

何より不穏だった。


「私は、彼女を殺していない」

「ですが……救ったとも言い切れない」


【心理学】に成功した探索者は、

この男が嘘をついていないと感じる。

同時に、**何かを決定的に隠している**ことも。


・黒瀬の独白(割り込み)


突然、

会話とは無関係に、

男は話し始める。


「声は、溜まるんです」

「誰にも届かなかった声は、消えずに、残る」

「私は……それを聞いてしまった」


その声は、

どこか疲れている。


「最初は、幻聴だと思いました」

「次に、偶然だと思おうとした」

「でも――あまりにも、多すぎた」


ノイズが、

心臓の鼓動のように強まる。


SANチェック 0/1。


・調査


ここで探索者は選択を迫られる。

* 声の発信源を探る

* 機材を解析する

* 黒瀬を問い詰める

* 会話を遮断する


【機械修理/電気修理】

→ 声が特定の周波数帯に「固定」されていることが分かる。


【オカルト】

→ これは霊的存在というより、

 「集積された情報」に近いと推測できる。


【説得】を試みることもできるが、

この段階では成功率が低い。

黒瀬はまだ、「人としてここにいない」ので。


・黒瀬の最後の言葉


「お願いがあります」


声が、ほんの少しだけ震える。


「どうか……壊さないでください」

「ここは、彼らが“存在していられる場所”なんです」


一拍の沈黙。


「次に会うときは、きちんと、顔を合わせましょう」


ノイズが、

ゆっくりと薄れていく。

それきり、

声は戻らない。


・終わりに


その夜、探索者の誰かは、自分の声が録音されていないか、何度も確認する。

再生しても、自分の声しか聞こえない。


――今は、まだ。


だが、「今はまだ」という感覚が、確かに胸に残る。


・姿を持つ声


霧ヶ峰市の郊外に、地図から消えかけた施設がある。

正式名称は残っていない。

古い資料には「音響実験棟」とだけ記されている。

コンクリートの外壁は雨に削られ、窓は半分以上が割れている。人が近づかなくなって久しい場所だ。


それでも――

探索者たちは感じる。

ここは、完全に捨てられた場所ではない。


・施設内部


扉を押すと、錆びた蝶番が、低く鳴る。

中は思ったより整然としている。

埃はあるが、誰かが定期的に出入りしている痕跡がある。電源ケーブル。簡易な補修。新しい録音媒体。


【目星】に成功した探索者は、

「管理されている」という印象を受ける。

荒廃しているのに、放置されてはいない。


・スピーカーの森


奥へ進むと、大きなホールに出る。

天井から、壁から、床から。

無数のスピーカーが取り付けられている。

それぞれが、微妙に違う方向を向いている。

まるで――

誰かの話を、聞こうとしているかのように。

探索者の誰かが、無意識に息を潜める。


すると。


「……大丈夫ですよ」


声が、背後から聞こえる。

今度は、スピーカー越しではない。


・黒瀬との初対面


振り返ると、一人の男が立っている。

年は四十前後。

痩せていて、白衣は少しサイズが合っていない。

目の下には、はっきりとした隈。

だがその表情は、驚くほど穏やかだ。


黒瀬くろせ 恒一こういち


「驚かせてしまいましたね」


声は、あの録音と同じだった。

探索者は気づく。声と姿が一致した瞬間、得体の知れなさが“人間”に変わった。


それが、安心なのか、それとも――

より恐ろしいことなのか。


・会話という試験


黒瀬は、探索者を敵視していない。

だが、心を開いているわけでもない。


「藤本さんの件で、ここまで来られたのでしょう」


【心理学】に成功すると分かる。

この男は、責められることを覚悟している。

それでも、逃げるつもりはない。


「ここは……声を、保管する場所です」


黒瀬は、

ホールを見回す。


「正確には、“残ってしまった声”の」


・黒瀬の語る過去


黒瀬は元々、音響工学の研究者だった。

音の反響。記憶への定着。人が声をどう認識するか。


「最初は、ただの研究でした」


だが、ある日を境に、「想定外のデータ」が混じり始める。録音していない声。存在しないはずの話者。


「最初は、無視しました」

「でも……無視しても、減らなかった」


黒瀬は、はっきりと探索者を見る。


「だから、聞くことにしたんです」


SANチェック 0/1。


・技能が意味を持つ


ここで探索者は、

本格的に黒瀬と向き合う。


【説得】

→ 成功すれば、

 黒瀬は「自分の恐れ」を語る。


「……私も、聞いてもらえない側に行くのが怖かった」


【心理学】

→ 黒瀬は“善悪”ではなく

 “役割”に縛られていると分かる。


【オカルト】

→ この現象は霊的存在ではなく、

 人の記憶と音が歪んだ結果だと推測できる。


・声たちの反応


会話の最中、

ホールのスピーカーが

微かに震える。


「……きいて」

「いる」

「まだ」


単語だけ。

だが、明確な意思を感じる。

探索者の誰かが、思わず振り向く。

黒瀬は、それを止めない。


「彼らは、あなた方を見ています」

「……正確には、“聞いている”」


SANチェック 1/1d3。


・黒瀬の問い


沈黙のあと、黒瀬は静かに言う。


「あなた方は、どう思いますか」

「これは……間違いでしょうか」

「それとも、必要なことだと思いますか」


この問いに、正解はない。

だが、探索者の答えは――

確実に、この先の運命を変える。


・終わりに


施設を出ると、

外はもう夕暮れだ。

空は赤く、音は遠く、街は何事もなかったように動いている。

だが探索者は知っている。

この街のどこかで、声は今も、溜まり続けている。

そして、それを聞いてしまった以上、もう無関係ではいられない。


・名を持たない声たち


施設に滞在する時間が長くなるほど、探索者たちは、ある事実に気づき始める。

ここでは、沈黙のほうが異常だ。

何も話していないときでさえ、微かなノイズが漂っている。それは風の音に似ているが、よく聞けば、不規則で、人為的だ。

――誰かが、何かを言いかけている。


・夜の施設


日が落ちると、施設の空気は一変する。

暗闇の中、非常灯だけが赤く灯り、スピーカーの影が壁に伸びる。黒瀬は、簡易ベッドの横に座り、古いノートをめくっている。


「夜のほうが……声は、はっきりします」


それは、経験から出た言葉だった。


・沙耶の声


そのとき。

一つのスピーカーから、これまでとは違うノイズが流れる。短く、息を吸う音。

探索者の誰かが、直感的に理解する。

――これは、藤本沙耶だ。


・音声ログ③(断片)


「……あれ?」

「ここ、どこ……?」


声は、混乱している。


「ねえ……誰か、いる?」


黒瀬は、一瞬だけ目を閉じる。


「……来てしまいましたか」


・個としての認識


これまでの声は、単語や感情の断片だった。

だが沙耶は、文として話している。


【聞き耳】に成功すると、

声がスピーカー間を移動しているのが分かる。

まるで、「居場所を探している」ように。


SANチェック 1/1d3。


・黒瀬の葛藤


「彼女は……完全に取り込まれたわけではない」

「まだ、“境界”にいます」


黒瀬の声には、迷いがある。


「戻すことも、終わらせることも……できる」


その言葉が、探索者に重くのしかかる。


・声たちの主張


次々に、別のスピーカーが反応する。


「いかないで」

「まだ、はなしてない」

「ここ、あたたかい」


それらは、子供のようでもあり、老人のようでもある。

だが共通しているのは――

拒絶の意思だ。

彼らは、消えることを望んでいない。


・技能による理解の深化


【心理学】

→ 声たちは恐怖よりも

 「忘れられること」を恐れている。


【オカルト】

→ これは霊ではなく、

 人の“記録されなかった記憶”の集合体。


【説得】

→ 沙耶に直接語りかけることができる。


・沙耶との会話


探索者が、名を呼ぶ。


「藤本沙耶」


一拍。


「……あ」

「呼ばれた」


その反応は、あまりにも人間的だ。


「ねえ……私、ちゃんと、いたよね?」


その問いに、どう答えるか。

それが、決定的な分岐点になる。


分岐


・A:個として肯定する


「君は、確かにここにいた」


その言葉に、沙耶の声は震える。


「……ありがとう」


施設全体が、一瞬だけ静かになる。

声たちは、“聞かれた”と理解する。


→ **解放ルート強化**


・B:現象として扱う


「これは、起きてしまった現象だ」


空気が冷える。

沙耶の声は、小さくなる。


「……そっか」


→ 破壊/管理ルート強化


・黒瀬の決断


どちらの選択でも、黒瀬は口を開く。


「……私には、もう決められません」

「だから……あなた方に託します」


それは、責任の放棄ではない。


継承の宣言だ。


・終わりに


夜明け前、施設の外で、風が吹く。

探索者は感じる。

この場所は、もう限界に近い。

声は増え続け、器は歪み、いつか溢れる。

次に下す選択は、世界を静かに変える。


・残響の行方


夜明けが近い。


施設の非常灯が、ひとつ、またひとつと落ちていく。

電力が限界なのではない。

声の密度が、許容量を超え始めている。

空気が、わずかに震えている。

それは音ではなく、音になる一歩手前の何かだ。


・臨界点


スピーカーから、同時に複数の声が流れ出す。


「きいて」

「まだ」

「わすれないで」

「ここにいる」


言葉は重なり、意味を失い、それでも感情だけが残る。

黒瀬は、制御盤の前に立つ。

手が、わずかに震えている。


「……ここが、限界です」

「もう、溜め続けることはできない」


探索者は、理解する。

これは戦いではない。

選択だということを。


・最終分岐


・探索者の選択


ここから先は、どの技能を使い、誰に語りかけ、何を壊し、何を残すかで結末が変わる。


・エンディング①


・完全破壊 ―― 静寂の世界


条件:設備の破壊/遮断を選択。【機械修理/電気修理】複数成功。


最後のスイッチが落ちる。

ノイズが、一瞬だけ大きくなり――

途切れる。静寂。耳鳴りすら、やがて消える。

黒瀬は、しばらく動かない。


「……これで、誰も、苦しまなくて済む」


だが、その声には、安堵よりも疲労があった。

街は、何事もなかったように朝を迎える。

失踪は止まる。都市伝説も消える。それでも探索者は、時々、完全な無音を恐れるようになる。


SAN回復:1d6

後遺症:深い静寂への不安


・エンディング②


・継承 ―― 聞く者たち


条件:黒瀬を理解/管理を選択。探索者の一人が役割を引き受ける。


「……本当に、いいんですね」


黒瀬は、何度も確認する。

探索者は、頷く。

役割は引き継がれる。

声は、すぐには消えない。

だが、整理され、区別され、暴走しなくなる。

黒瀬は、初めて、肩の力を抜く。


「ありがとう」


その言葉は、誰に向けられたものだったのか。

探索者の一人は、やがてNPCになる。

聞く者として。


SAN回復:1d4

キャンペーン継続可


・エンディング③


・解放 ―― さよならの合唱


条件:声を「個」として扱う。【説得or芸術】成功。


探索者は、声たちに語りかける。

一人ひとりに。

確かに、そこにいたと。

沙耶の声が、最後に響く。


「……ありがとう」


次の瞬間、合唱が起こる。


「さようなら」

「きいてくれて」

「もう、だいじょうぶ」


ノイズは、ゆっくりと薄れ、溶けるように消える。

施設は、ただの廃墟になる。

声は残らない。だが、忘却でもない。


SAN回復:1d4

神話技能:+1d3


・隠しエンディング④


・歪んだ救済 ―― 次の管理者


条件:声への依存。SAN大幅減少。管理失敗。


探索者は、気づいてしまう。

ここにいれば、誰にも無視されない。

声は、常に応えてくれる。

黒瀬は、それ以上、何も言わない。

役割は、自然に移る。


数年後。

霧ヶ峰市では、また噂が流れ始める。


「声が、増えたらしい」


物語は、終わらない。


・エピローグ


・残ったもの


事件は終わる。

記録は残らない。新聞にも載らない。

それでも探索者は、時々、思い出す。

確かに、そこに誰かがいたことを。

それを、救いと呼ぶか、忘却と呼ぶか。

答えは、探索者の中にだけ残る。


シナリオ終了。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ