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14 予期せぬ再会

「血を使った偽薬ですか。そうですね……。偽薬に関係しているかは分かりませんが、魔法と血について研究してる学者なら一人だけ心当たりがあります。」


状況を説明するとコゼットがそう語ったので紹介を頼んだのだ。

案内をお願いすると、いつも鉄仮面、もとい涼しい顔をした彼女が少しソワソワしている様子が気になったが、やはり久しぶりの母校は懐かしいというようなことだろうか?


「クルトもロメリアに興味あるの?」

「……屋敷に残るとエレオノーラがうるさいんだ。」


トコトコとついてきたのを少し不思議に思い問うてみるとクルトはうんざりとした表情で答えた。

親(師匠)バカのエレオノーラは孫と見初めたクルトをとにかく構い倒して食事で腹が膨れたらお菓子を出し続け、それにも飽きると今度はとっかえひっかえ服を着せ替え始めたのだ。

おそらく、エレオノーラ自身か、あるいはリディアが滞在していた時のお古だったため、服は女子用のものだった。


死んだ目でマネキンをやっていたクルトの表情などお構いなしにエレオノーラはキャーキャー言いながら楽しんでいた。

そりゃ、理由をつけて屋敷を離れたいと思うだろう。


「ねぇ、コゼット。師匠って昔からああだったの?」

「そうですね……。昔から空気が読めないというか、人の心の機微に鈍いというか、とにかく勝手気ままな人でしたが……。昔より明らかに悪化してますね。」


「へえぇ……。まぁ、なんたらと天才は紙一重ってやつなのかな?」

「お言葉ですが、昔はリディア様も大概でしたよ。私はそんな二人に囲まれてお世話しながら生活していたんですからね。」


それは、心中お察しする。

さぞや頭の痛い10年間であったであろう……。


ロメリアの門を通るとそこにはまた別の町が広がっているようであった。

ただ、外とは建物の作りが違う。


一つ一つの建物が大きく、窓の数を見れば多くの部屋がまとまっているのが分かる。


「大抵の学者や魔導士は住み込みで研究をしますから。博士号まで取得しても貧乏生活が続きますし、外泊する人の方が稀なんです。」

「あーね。」


裕福なのは親に援助を貰う学士まで、本格的に研究に身を投じる一人前の学者になるような人は貧乏なのだ。

この辺は日本の大学と同じだな。わざわざ大学院までいって就職先が見つからない友人を思い出す。


ただ、私が気になっているのは別のことであった。


「……なんか、視線が痛いんだけど。」

「当たり前です。あなたは『エレオノーラ・アリステリアの弟子』、ロメリアの暴君・悪役令嬢『リディア・パラケルス』なのですよ?」


どうやら転生する前の記憶のない時期の悪逆非道の行いのせいであるようだった。

煤被りの噂が本当であろうか探るような好奇の視線、とにかく関わりたくないという畏敬の視線、たぶん恨みつらみがあるのだろう敵意の視線。


勘弁してくれ。

そんなに見られても(少なくも私からすれば)人違いなのだ。


視線に耐えながら研究棟に入って進むと、コゼットはついに一つの扉の前で止まった。


「ここ?」

「……はい。」


「……?」


扉の前で立ち尽くすコゼットは深く息を吸い込んでは吐き出していた。

開けないのだろうか? そんな疑問をもって背中を見ていると、コゼットは前髪に手櫛を入れ始める。


……もしや?


やっかみ根性である。ひょっとして面白いネタではないかと胸を躍らせて見ていると、ついに扉に手をかけて勢いよく開いたのだ。


「クラフト先生! 失礼します!!」


「___ぎゃびっ!!??」



ドンと、激しい衝突音が響く。

コゼットは顔を真っ青にしながらアワアワしていた。


半開きの扉から覗くと白衣の男がのびている。

この顔には見覚えがあった。


「あ、ビン底眼鏡。」

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