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11 過保護な師匠

「誰だ、貴様。よくも私の前に顔を出せたな。」


エレオノーラは胸を反った状態で腕を組み、その長身からユリウスを見下して言ったのだ。

大上段から不機嫌であることを隠そうともしない態度であった。


「恐れ多くもエレオノーラ殿下のもとには伺わなければならないと常々考えておりました。

昨日、王家の方からリディア嬢に私との縁談を申し込ませていただきまし___」


「んぁぁぁああああ!!!!

知らん!! 知らん知らん!! ようやく、第4王子の馬鹿との関係が破談になったかと思えば今度は貴様か!? ありえん! ヴェスタリア王家ごときが私のリディアを取り込もうなど100年早いわ!!」


「え、あ……。そこ?」


エレオノーラは両耳を手で覆って嫌々と全身を捻ってかぶりを振った。

冷え切った態度にいったい何事かと肝を冷やしていた私は肩透かしを食らった気分だ。


「そもそも、リディア! こんな男のどこが良いのだ!?


たしかに、顔がいいのは認める。頭も、まぁ悪くはない。前の馬鹿王子と比べれば幾分かマシだ。だが、腹黒のモヤシ男だぞ!? 

お前にはもっとふさわしい男がいる! 婚約相手なら私が見繕ってきてやるから考え直せ!!」


「いえ、そもそもユリウス殿下との縁談は保留にさせていただいてますので……。」


「なに!? そうなのか!?」


私の返答がよほど気に入ったのか、エレオノーラは目を見開いて満面の笑みを浮かべた。

機嫌を良くしたのか、ふふんと鼻を鳴らしてユリウスに向き直って言い放った。忙しい人だな。


「そういうことだ、ユリウス。リディアを私の元まで送り届けてくれたことには感謝してやる。

お前はもうお役御免だ。さっさと王都へ帰るが良いぞ。お前を屋敷に招いてやる義理など私にはないのだからな!!」


「私は構いませんが、それでは後々リディア嬢が困りますよ。」


「……リディアが?」


勝利の笑みを浮かべて満足げだったエレオノーラの表情はユリウスの言に影を落としたのだった。

それ以上はわめくことをやめ、暗に続きを述べよと態度で示した。


「はい。愚弟の不届きが原因とはいえ、リディア嬢は一度王族との縁を破談にした身の上です。

もちろん、我々はリディア嬢の名誉が傷つかないように努力を惜しむつもりはありませんが、『だからこそ』、


国を横切って令嬢の護衛を務めた第2王子を用が済んだからと顎で使うように送り返したなどと広まれば、リディア嬢の名誉に関わりましょう?


それを思えば、リディア嬢のためにこそ。私は今ロメリアから去るわけにはいきません。」


「……ぐっ。」


上手い返しだ。などと、私は他人事ながら思った。

当意即妙なのか、予めこうなることを予見していたのかは知らないが、なかなか『ユリウスらしい』手である。


エレオノーラはぐぬぐぬと目を閉じ、歯を食いしばって考えていた。

ユリウスのことが好きではないのは、まぁ、演技なのか本気なのかは分からないが、どちらかといえば言いくるめられるのが不満なのだろうか。


すると、エレオノーラはふぅと息を吐き、顔を隠すように視線を落としたのだ。

正面のユリウスからは見えないだろうが、横に控えていた私からは一瞬だけ愉快さにこらえるような笑みを作ったのが見えた。


「ふんっ。相変わらず口の回る男だ、忌々しい。

リディアのためだ、屋敷にあがる許可はしよう。だが、もてなす気はない。貴様は納屋で寝ろ。」


「畏まりました。」


ユリウスが恭しく頭をさげるのを見て、エレオノーラは満足そうに鼻を鳴らしたのだった。


「うむ、公共の場でいつまでも長話をするものでもないな。屋敷に向かおう。

リディア、お前を呼び寄せた用事も伝えねばならんしな。」

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