46 これから
良く晴れた昼下がりである。
庭を広く使った場所にいる二人を、私は少し離れて眺めていた。
「あの二人、仲が悪いのかと思ってたんだけど。」
「クルトなりに感謝しているみたい。まぁ、それはそれとして苦手意識は持っているみたいですけど。」
「……ふーん。」
今日はジゼルはアーデルに代わってクルトに剣術の指南をしていた。
ガムシャラに挑むクルトをジゼルは容赦なく木剣で叩いて弱みを咎めていた。
少し離れたところから眺めながらユリウスと話していたのだ。
地下組織掃討における顛末の報告を受けていた。
レオは王位継承権剝奪の上、投獄。
ナタリアも重罪と見なされ塀の中だ。
その他の主要な幹部も捕まり、紆余曲折あったが作戦としては大成功という判断とのことだ。
雨降って地固まるというやつで、リディア・パラケルスの暴走も不問とされた。
「むしろ、女王陛下としては貢献著しいとして謁見の機会を設けたいということだけど。」
「げっ……。勘弁してよ。私がそういうの嫌なの知ってるでしょ?」
「うん。だから、適当な理由でかわしておいたさ。」
この件に関しては素直にユリウスに感謝を述べた。
多分、本人としても何かしらの計算が裏にあるのだろうが、なんだかんだ私の気持ちを汲み取ってくれたのであろうと思っている。
「ただ、姉上は是非近いうちにどこかで話がしたいと言っていたと伝えてほしいと。」
「うぇ……。」
やはり、気が重い。
形の上では婚約者(候補)の姉である。
この国を治める高貴な身分の人が小姑というのは気が滅入るのだ。そんな人と何を話せば良いかなど皆目見当もつかない。
「それと、結局、彼は予定通り3年後に聖剣に挑むんだね?」
「えぇ、クルト本人の希望もあるしね。うちとしても助かるから。」
「そう言われると、僕個人としては複雑な心境だけど。」
ユリウスの言に私は「ふん」だけと鼻を鳴らして答えた。
あの夜、洗いざらい全部話した身としては『お前との政略結婚を遅らせるために聖剣に挑ませる』というのは気が引けるが、やはり今回の地下組織掃討のような事件に巻き込まれるのはもうごめんだ。
私としてはどうにか政治に関わらずに済む道を探したい。
現実的かどうかは別として、クルトが聖剣に選ばれて勇者になるというのは一番まるく収まる最良のケースとなりえるので淡い期待を寄せているのだ。
「これからどうするのかを聞いていいかな?」
ユリウスが諦めた様子で話題を変えた。
「パラケルス領に戻るつもりよ。もともと、この前の社交界のために王都の屋敷に来ただけだしね。」
「そうか、それは寂しくなるね。」
「あっそ。」
どうせ思ってもないことを口にしているのだ、この男は。
紅茶を口にするユリウスを横目にわざとらしくそっぽを向いてみせた。
しかし、視界を向けた先に思いがけず人影を見つけた。
コゼットが少し急いだ様子でこちらに向かっていたのだ。
「……リディア様。その、お手紙です。」
「手紙? 私に?」
はぁはぁ、と息を切らして肩をあげさげしながらコゼットが答えた。
その様子から面倒事かと唾を飲む。
「ロメリアからです。」
「……はあ?」
いまいちピンとこない。
学術都市、リディア・パラケルスが幼少期を過ごした地の名であるがコゼットは少し動揺した様子を覗かせている。
私は、少し不安な気持ちで手紙の差出人を確認したのだ。
「アリステリア公爵・エレオノーラより、我が弟子リディア・パラケルスへ?」
封を開けて中身を見ると、いかにも高そうな質の良い便箋に似合わぬ不躾で短い一文だけが書かれていた。
『会いに来い。』
第1章 『転生してショタを拾う』 完
ここまでお付き合いいただきありがとうございました!
3章までプロットはできているんですが、1章を書き始めてから変更した部分もあるので整合性をとったり内容を整理するのに1週間ほど2章の詳細を詰める時間をいただきます。
次回の更新は2/12(木)予定です。
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