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24 悪役令嬢の出番

王都の門を早馬で通り過ぎて30分は過ぎている。


クルトの案内で王都郊外にあるナタリアとかいう金貸しの根城へ向かっているのだ。

乗馬の仕方が分からない私とクルトはそれぞれ、コゼットとグレイの後ろにひっついて二人乗りをしている。


「リディア様。実際にクルトが案内した先がやつらの根城だったとして、その先のことは考えてるんですか?」


コゼットが馬に体勢を低くして馬を巧みに操りながらも状況を確認しようとしている。

先の潜入作戦での暴走が頭にチラついているのだろう。当然のことだ。


「大丈夫! 今回はちゃんと作戦があるから!」

「作戦ですか?」


少なくとも、ロザンヌはレオとユリウスの求婚の結果がどうなっているのかの詳細は知らなかった。

つまり、リディア・パラケルスという女の身持ちはまだ曖昧なのだ。それは、体制のどちらについているのかもそうであると言えるだろう。


「そうよ! 悪役令嬢作戦よ!!」


自信満々に答えた私の作戦はコゼットの耳に届いているのかいないのか、感想は返ってこなかったが固唾を飲む音は聞こえたような気がした。


◇◇◇


郊外の農村跡地につくと、見たとおりに誰もいないかのように静まり返っていた。


無駄に話し声などは出さずにクルトの先導で農村の中でも一番立派な建物の前まで歩く。

立派といっても手入れが届いておらずあちらこちらにツタが這っており、雰囲気的にも廃墟と呼ぶべき様相であったが。


全員と視線を合わせて心の準備をした。

コゼットだけは心配で仕方ないという様子であったが、これ以上の手は思いつかなかった。


目標は二つ。レオや貴族たちと闇金融の繋がりを吊り上げること。そして、ここであるのかないのかは分からないが親玉と拠点の情報を掴むことである。


こほん、と。下準備に喉を整えてから声を出した。


「ナタリア!! ナタリアはここにおりますの!?」


連れてきた3人はポカンとしている。

私はそれを無視して扉をガンガンと叩いて急かした。まるでカチコミであるかのような勢いだ。


「ここにいるのは分かってますのよ! ナタリア!! 出てきなさい!!」


「ちょちょ!? ちょっと!? 何してるんですかリディア様!!」

コゼットは焦った様子で私を羽交い絞めにしようとしたが、無視して扉をドンドコ叩き続けた。


「やめてください!! やめてやめて!!」と声は抑えているが涙目になりながら止めようとする従者をわたしはそれでも無視し続けていると、扉の向こうに足音が近づいてきた。


「どちら様ですか?」

酒焼けしたような女の声であった。

わたしはクルトに視線を向けると、クルトは首を横に振った。ナタリアの声ではないようだ。


「誰よあんた! ナタリアはどうしましたの!? 無礼ですわね!!」

とにかく尊大に向こうに譲歩をさせる。交渉の余地を与えるつもりなどない悪役令嬢ごっこである。


「失礼ながら、あなたのおっしゃっている方はこちらにおりません。何用でございますか?」


馬鹿め、と口角が少し上がった。釣れたのだ。

本当にナタリアという人物とこの建物が関係ないなら『何用であるか』などと聞くものか。

無関係なら追い返すだけだ。

それをせず用件を聞いた時点で、ここが当たりだと分かった。


ビンゴだ。出てくる気がないのか、あるいは、『ここに』いないのかは分からないが、この扉の前にいる女がナタリアと繋がっているのは間違いない。

アタリを引いたことで緊張が一気に高まったが、それが逆にアドレナリンを分泌させているのか頭はよく回っている。


「わたくしはパラケルス伯爵家の嫡女、リディア・パラケルスですわよ!! お前のような下っ端に用はありませんわ! ナタリアを出しなさい!! わたくしの貸してる金は無事でしょうね!?」


ガンガンと扉を足蹴にして叩き続けている。

闇金融の借金取り連中のことだ、自分がそうすることは日常茶飯事でもされることなどそうないだろう。


だが、そういう連中が口八丁で引き下がらないことは日頃の自分を垣間見れば分かるはずだ。

絶対にあきらめない、と。


すこしの間が空いてから、扉の錠に手がかかる音がした。

建付けが悪いのか、手入れがされていないのかギィという鈍い音と共に扉が開くと、目つきの悪い女がそこに立っていた。


私は腕を組み、脚を肩幅にも開いて女の目をまっすぐと睨みつけている。


「誰よ! あんた!!」


全身をもって不機嫌であることをアピールした。お前と話すことなどない、と示すためだ。


「わ、わたしはナタリア会長の助手をしている者です。ナタリア会長はいま不在でして……。」

女は自らの立場を明かす。


心の中でほくそ笑んだ。

わたしが本当に用があるのは『お前』だよ、と。


ふんと鼻をならし女と肩をぶつけんばかりにズカズカと許可も取らずに屋敷に足を踏み入れた。

ここまでは完全にこっちのペースである。

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