第7話「影」
都市の高層ビル群。夕暮れの光が灰色の空を赤く染める中、影が蠢いた。
瓦礫と崩れた道路の迷宮を抜けたカナタとチームの視界に、黒く巨大な影が忍び寄る。
「……気配が強い」カナタの声が低く響く。
手首の焼き印が熱を帯び、痛みが走る。世界線異常の波動が、空気の振動となって全身に伝わる。
ノワルは刀を抜き、無言で周囲を見渡す。
リベラは両手を握り、戦闘態勢に入る。
ゼフィは冷静に地形を分析し、マキナは後方支援の位置を確保した。
「奴ら……単独じゃない」ゼフィの指摘に、全員の視線が一瞬で一致する。
小型断層獣が複数、影に紛れて待ち構えていた。
しかも、これまでの群れとは明らかに違う、鋭く人智を超えた知性が宿る動きだった。
影が動いた瞬間、群れが襲いかかる。
カナタは瞬時に拳に力を集め、適応構築能力を発動。光の衝撃波が都市の瓦礫を押しのけ、最初の一体を弾き飛ばす。
ノワルはその隙間を縫うように斬撃を加える。
刀が影を切り裂き、冷たい金属音が響く。
リベラの熱血蹴りが続き、敵の動線を封じる。
ゼフィは連携を指示し、マキナは支援魔法で仲間を回復、戦闘効率を最大化する。
だが影の動きは予想以上に俊敏で、瓦礫の影に消える度に奇襲が繰り返される。
ノワルは一瞬目を見開き、カナタに小声で言った。
「……奴ら、戦術を理解している」
チームの動きが一体化する中で、初めて全員の呼吸が共鳴する。
互いの動きと意識が繋がり、連携が完璧に近い形になる瞬間。
都市の裂け目はなおも広がり、世界線の歪みは増していたが、チームの心は一つになった。
戦闘が一段落した後、カナタは高層ビルの影を見上げる。
「……奴らの本体が、あの中にいる」
視界の奥で、さらに大きな影が蠢き、赤い光を帯びた世界線異常が揺れる。
ノワル、リベラ、ゼフィ、マキナ――全員の目が決意に燃える。
この影が、次の試練の幕開けであることを、誰もが理解していた。




