第5話「歪み」
街の空気が異様に歪んでいた。
空を走る光は波打ち、地面は微かに震え、瓦礫が音もなく滑る。
断層獣の群れは一度退いたものの、都市の裂け目から漂う黒い霧が、再び異形の気配を示していた。
「……まだか」カナタは拳を握りしめる。
焼き印が鈍く赤く光り、手首に重い痛みが走る。世界線異常の波動が、彼の体に直接警告を送っていた。
その時、闇の中から複数の断層獣が飛び出す。
小型とはいえ、数が集まれば危険は計り知れない。
リベラが前に出て、熱血の気合と共に蹴散らす。
「みんな、行くぞ!」
ノワルは冷静に刀を振るい、正確無比の斬撃で敵を仕留める。
ゼフィは周囲の地形を計算し、仲間の動線を調整する。
マキナは後方支援で味方の疲労と傷を瞬時に回復させ、戦闘効率を維持する。
しかし、戦闘の余波は予想以上に大きかった。
裂け目の影響で、瓦礫が崩れ落ち、突如として空間が歪む。
カナタの拳が光を帯び、空間の裂け目に力を集中させる。
「押し返す……!」
衝撃波が街全体に広がり、断層獣は吹き飛ぶ。
瓦礫の塵が舞い、煙と光が入り混じる光景は、まるで都市そのものが生き物のように蠢いているかのようだった。
戦闘が収まった後、ノワルは手を握り締め、震える声でつぶやく。
「……怖かった。でも、戦えた」
リベラは微笑みながら、彼女の肩を叩く。
ゼフィは計算通りに敵を排除した安堵を胸に、マキナは静かに全員の体調を確認する。
焼き印の赤い光は弱まらない。
「まだ終わっていない……」カナタは呟き、次の行動を決意する。
裂け目の向こうに、旧文明遺跡の存在が浮かび上がる。
そこには、新たな謎と試練、そして敵の影が待ち構えていた。




