1/24
第1話「覚醒」
暗闇に包まれた街。瓦礫が積み上がり、地面にはひび割れが走る。カナタはゆっくりと目を開けた。手首に光る焼き印が痛みを伴って疼く。冷たくも熱を帯びた感触が、指先から腕全体に伝わってくる。
「……ここは?」
低く、震える声を上げるが、応える者はいない。視界の端で、白銀の髪がかすかに揺れる。ノワル――無表情の少女。感情の痕跡はないが、その目には微かに光が宿っていた。
地響きが街全体を震わせ、断層が轟音と共に裂ける。闇からは牙をむく影――断層獣が跳び出した。生き物とも異形ともつかぬ存在。カナタの直感が鋭く警告する。
拳を握りしめ、周囲の空間が振動する。彼の内に宿る能力――適応構築が発動した。拳に集まる力が暗闇を裂き、断層獣の前脚を叩き落とす。瓦礫が飛び散り、冷たい空気に煙が混じる。
「守る。」
自然に出た言葉。ノワルの瞳がわずかに細まり、微かな笑みが浮かぶ。世界はまだ混沌の中だが、この瞬間、何かが確かに動き出したことを示していた。
しかし、焼き印の赤い光が手首で揺らめき、世界線の歪みが脈打つ。都市の歪み、異常。まだ何も理解できないが、カナタは直感した。
「……俺は、ここで、立ち向かわなければならない。」
夜空に微かに光る赤。瓦礫の間に映る影。彼らの戦いは、この街の運命だけでなく、世界の運命そのものへと向かう――。




