(3)邂逅っと誤解
(3)邂逅っと誤解
ティーネの目線
玄関に辿り着き扉の取っ手を握り開けようとするが開かないので、「先生、私です。ティーネです」と叫び何度も戸を激しく叩いたが反応が無い。
玄関から離れて居間の鎧窓の下まで行って窓を何度も叩いてみるがここでも反応が無い。
【何処かへ出掛けているのかしら?】とも考えたが、【出不精の先生が有り得ないと】と考えを改めて玄関の前に戻ると、クロガネが玄関先に座って待っていた。私を見ながら自分の頭を指差して何かを伝えようとしてきた。慌てる余りクロガネに借りてる兜を被ったままだった事に気づいて兜を脱いだ。
鐵の目線
門を潜るとティーネは家の方に走って行ってしまい俺はバイクから降りて回りを見渡してみた。柵の中と外では微妙に空氣が違う感じがする。【門の外には出ない方が良さそうだな】と考えながらバイクを押して家の方に進んで行くと、ティーネが家の周りで大きな声を上げて戸や窓を叩いていた。
それを横目に玄関横にバイクを止めてノートと鉛筆を持ってティーネが来るのを玄関先で座って待つことにする。
ティーネが戻ってきたので、ヘルメットを被ったままなのを手振りで伝えて気持ちをおちつかせるように、隣に座るように空いてる所を手で叩き手招きする。
隣に座って少し落ち着いた所でノートと鉛筆を渡してみると、少し考えてからノートに描き始めた。
ティーネの目線
クロガネが座っている隣を叩いて手招きしてきた。私は兜を抱えたまま隣に座り兜を横に置いた。すると、薄い本と先の尖った棒を渡してきた。少し考えて、扉を開けて中に入りたい事を伝える絵を描いた。それをクロガネに見せると、玄関の扉の鍵穴を調べ始めた。暫くすると、不思議な乗り物の所に行き横に有る箱の中から何かを取り出し玄関前に戻ってきた。持ってきたのは手のひらより少し大きな箱のようで、蓋を開けて中から細い金属棒を二本取り出し鍵穴に差し込んだ。如何やら鍵を開けようとしている様だ。慌てて薄い本に術で鍵が掛けられている事を伝えようとしたけれど上手く表現する絵が思い浮かばずオロオロしていると、クロガネが振り向き首を横に振って両手を上に上げた。やはり上手くいかなかったらしい。クロガネは持っていた道具を箱に仕舞い、箱を私に渡してきて、更に後ろに下がる様に手振りで示した。
そして、クロガネも扉から少しはなれると勢いを付けて扉に体当たりをしたが、扉はびくともしない。
一瞬不思議な乗り物を見たが、再び扉を観て何かを考え始めた。
鐵の目線
ティーネがノート見せてきた。如何にか扉を開けて中に入りこの家の住人の安否を確認したいようなので、扉の鍵を調べてみる。とても単純な造りの様なので、バイクに積んで在る工具で如何にか成るだろうと取に行く。工具の中からマイナスドライバーを二本出して鍵を探ると直ぐに手応えが有ったが扉は開かない。もう一度試すが結果は同じで扉はびくともしない。振り返るとティーネが何かを伝えたいのかノートを睨み考え込んでいる。目が合うと俺は首を横に振り両手を上げた。工具仕舞い工具箱をティーネに預けると玄関から離れる様に手振りで伝える。ティーネが離れたのを確認すると、俺も扉から少し離れ、そこから勢いを付けて知当たりをしてみると、何か変な反発力の様なものを感じたので【取っ手にロープを結んでバイクで引っ張るか】と考えたが燃料が無い。それに【さっきの変な感覚、何か結界の様なものでも掛けられているのでは】とも考え諦める。やはり【森で倒木を飛ばした力を工夫して力場を扉の一点に集中させるしかないか】と考えてはみたが、【失敗して家ごと吹き飛ばしてしまったら】と悩んでいると、ティーネが近付いて来て諦め顔で首を横に振った。
その姿を見て【ままよ】と踏ん切りが付きティーネとバイクを柵の近くまで退避させ扉と対峙し両手の間に乱気流を生み出し圧縮して右手に集め鍵の辺りに叩き付けた。
すると、物凄い圧力が掛かり俺は後ろに吹き飛んだと同時に扉も砕け散った。
ティーネの目線
クロガネの近くに行き、諦め込めて首を横に振ると、何故かクロガネは吹っ切れたように不思議な乗り物の所に行き私に手招きをして不思議な乗り物を柵の近くまで押していく。それに付いて行くと、ここで待つようにと見える手振りをされ素直に従うと、クロガネは再び玄関の前に行き両手を胸の前で向かい合わせにした。
そいえば、黒龍の森で倒木を吹き飛ばした時も同じ様な構えをしていた。【あんなのを放ったら家ごと飛んでいってしまうのでは】と心配になったが時すでに遅し、クロガネの右手に緑色の光が集まりその光を扉に叩き付ける所だった。
物凄い突風が起こり玄関の扉が壊れるのと同時にクロガネも後ろに飛ばされた。慌ててクロガネに駆け寄ると、無事である事を示すように手を挙げてその手で中に行けとばかりに玄関方向を指差した。
それに従い家の中に駆け込み居間に続く扉を開けると、先生が驚いた顔で扉の方を見ていた。そして、入ってきたのが私だと分かると「何でティーネ、貴女がここに居るの」と更に驚いた顔をした。
そこで私が「先生落ち着いて下さい。順を追って説明します。ですがその前に呪術薬の『翻訳薬』は在りますか?」と聞くと「確か一本残っているはずだが、そんなもの何に使うのだ」と聞いてきた。
細かな説明は省いて「状況説明に必要なので、直ぐに用意して下さい。」とお願いすると、渋々ながら居間の奥の扉を開けて隣の部屋に行き紫色の液体の入った小瓶を持って戻ってきた。
鐵の目線
倒れたままティーネが家の中へ走って行くのを見送って何度か深呼吸を繰り返し勢いを付けて起き上がった。玄関に近付きながら周りに飛び散った扉の破片を拾い集めていく。見える範囲の破片が集め終わると、玄関の内側に入り入り口付近に破片を置き両手をかざし壊れる前の扉を思い浮かべながら手に意識を集中させていくと、破片が少しづつ繋がっていき元道理に直ってくれた。
そこで一息付いていると、ティーネが「クロガネ」と呼んできた。
声のする方に向かうとそこには、紫がかった黒い髪の背の高い女性が背中を向けて立って居るのが見えた。その横にティーネが居て、俺に何かを差し出してきた。
すると、ティーネの隣に立つ女性が振り向き俺を見ると、素早く俺とティーネの間に立ち鋭い目付きで睨んできた。
すると、ティーネが慌てて「**********、**************************」と叫んだ。
すると警戒しながらも女性は横にずれ、ティーネが一歩前に出て小瓶を俺に渡してきた。
渡された物を見ると、とても毒々しい紫色の液体が入っており【飲んだら確実に死ぬのでは】と考えていると、ティーネが手振りでそれを飲めと伝えてきた。
躊躇っていると、女性が近付いてきて小瓶を奪い取ると、蓋を開けて右手に持ち左手で俺の後頭部の髪を掴み強引に上を向かせ口に小瓶をねじ込み中身を流し込み強引に飲ました。
ティーネの目線
「クロガネ」と大きな声で呼ぶと、ゆったりとした足取りで居間の入口に姿を現した。
先生を見た後、私の方に目線を向けたクロガネに呪術薬を差し出すと、私を庇うように先生が、二人の間に入ってきた。
慌てて先生の腕を掴み「この方は、私の命の恩人よ」と叫び引き留めた。
渋々引き下がった先生の横を進みクロガネに小瓶を手渡すと、手振りで飲むように促すと、あからさまに嫌そうな顔に成る。すると先生が私を押し退けクロガネの頭を掴み呪術薬を強引に口の中に流し込んだ。
「先生!何をしてるんですか(怒)」と大きな声で怒りを露わにするが、先生は平然と「こ奴が愚図愚図しているのが悪い」と言い放った。
その横で床に手を付き咳き込んでいるクロガネに慌てて近付き背中をさすりに行くと、先生に腕を掴まれ引き離されてしまった。
私が「何をするんですか」と抗議すると「得体の知れない男に近付くな」と逆に怒られてしまった。
鐵の目線
途轍もなく不味い液体を強引に口の中に流し込まれ、咽るは不味いはで咳き込んでいると、ティーネが背中をさすってくれようと近付いてくると、黒髪長身女がティーネの腕を掴み引き寄せた。するとティーネが「何をするんですか」と抗議の声を上げると「得体の知れない男に近付くな」と怒鳴っている。
如何やらさっきの不味い液体のせいでか言葉が解るように成って居るようだ。
やっと咳が収まり喋れそうなので、一度咳払いをして「随分な言われ様だな、ここまでティーネを無事に送り届けた相手に言う言葉かね」と抗議と呆れを混ぜた感情で言うと「貴様、ティーネを連れて来たら黒龍が何をしでかすか分からんのだぞ」何故か悔しさの滲んだ声で怒鳴られた。
少し考えて、「ティーネ?黒龍ってあの黒い巨大な生き物の事か?」すると素早くティーネが「そうよ、クロガネが倒してくれたあの黒い生き物」と答えが帰ってきた。
すると驚いた顔を此方に向けて「黒龍を倒しただと」と言いながら床にへたり込んでしまった。
驚いて助け起こそうと近づくと、「近付くな」と睨まれてしまった。
仕方なくティーネに目線を送ると、彼女は頷いて黒髪女の傍らにしゃがみ「先生、今のは格好悪いですよ」と意地の悪い笑みを浮かべて手を差し出した。




