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レイン・リベリオン  作者: まくら
第二部 『主の資格』
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46 狩りのリスト



「……歓迎するよ、カイ。あたしの、本当の研究室へ。――さあ、仕事の続きだ」


 リアの言葉が、旧時代のサーバー室に響く。

 カイは、まだ爆風の熱が残るパルスライフルを肩にかけたまま、ホログラムに映し出された、あの天文学的な量の「素材リスト」を睨みつけた。


「……本気か、あんた」


 カイの声は、疲労でかすれていた。


「仕事の続きどころじゃない。このリスト、セクターCで手に入れた合金を作るためだけの素材だろ。残りのパーツはどうする。それに、俺たちの『巣』はもうバレた。工房も足も失った。どうやって、この状況でこれを集めるんだ」


「だから、頭を使えと言ってるんだ」


 リアは、レクス7の「魂の設計図(データチップ)」を、新たな解析サーバーに接続しながら、冷ややかに言った。


「お前がやったように、ただガラクタを漁るんじゃない。……奴らの動きを読んで、こっちから狩りに行くんだよ」


「狩る? 誰を」


「あたしたちを追ってる、番犬どもを、だ」


 リアはコンソールを叩き、下層区の簡易マップを表示させた。


「奴ら軍の非公式部隊は、この下層区で活動するために、必ず『補給線(サプライチェーン)』を持っている。あたしたちが今必要な、あのリストにあるような希少な軍用素材も、奴ら自身が上層区から運んでくるはずだ」


 カイは、リアの恐るべき計画の全貌を理解し、息を呑んだ。


「……まさか、奴らの輸送部隊を、襲うのか」


「それが、最も合理的で、最も効率的な『狩り』だ」


 リアの目が、冷たく光る。


「だが、それをやるには、奴らの通信網に割り込み、輸送ルートと時間を正確に把握する必要がある。……そのためには、奴らが使っている最新の『軍用暗号キー』が、どうしても必要だ」


「そんなもの、どこにある」


「奴らの『目』や『耳』……下層区に潜伏している、連絡員や観測手が持っている。まずは、そいつらの一人を特定し、捕獲する。殺すんじゃない、生きたまま捕らえて、キーを奪う」


「……言うのは簡単だが」


 カイは反論した。


「どうやって、その連絡員を見つけるんだ。それに、奴らが潜んでるような厳重な区画に、どうやって潜入する。そんな技術は、俺には……」


「だから、お前はここで訓練を続けたんだろうが」


 リアは、工房から運び込まれていた、あの旧式のシミュレーターポッドを叩いた。


「お前が学んだのは、ただの戦闘技術じゃない。敵の『システム』を理解し、その裏をかく『戦術』だ。シミュレーターで学んだ兵士の思考は、奴ら本物の兵士が、どこに潜み、どう動くかを予測するのに役立つ。……そして、リアルの戦いで叩き込んだ殺しの技術は、敵に見つかった時、音もなく相手を無力化するために使う」


 リアは、ポッドのハッチを開けた。


「……だが、お前に一番足りないものが、まだある。潜入の技術だ」


 彼女は、シミュレーターのプログラムを書き換え始めた。


「今から、お前の第二段階の訓練を開始する。……セクターEの市街地を、警備ドローンと兵士に一切見つからずに、目標地点まで到達しろ。仮想の戦場だが、見つかった瞬間に、お前の神経に最大負荷のペインパルスを送る。……覚悟しろよ。これは、昨日の『猿の戦い』より、よっぽどキツいぞ」


 カイは、再びコクピットへと乗り込む。  リアの本当の狙いを、彼は理解していた。

 レクス7の「魂」を解析するリア。

 そして、その「肉体」を再生するための素材を狩るカイ。

 二人は、この隠れ家で、反撃のための牙を、同時に研ぎ澄まし始めたのだ。

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