2 不思議なこと
家に帰り、何気にパソコンを開いた。そうだ。私、小説書いてたっけ。あれ、どうしたかな…。
わ。すごいアクセスの数。
あれ…?この感想、名前に天宮昴って書いてあるけど、本物?
「えええ?!」
私は慌てて、昴くんのブログも見た。そこには私の小説を紹介してある文が、書かれていた。
「え~~?!」
他にも何か書いてあるかと思い、読んでいたら、今大好きな人がいますって書いてあった。
「え…?」
すごいショックだ。あの10歳年上の彼女か…。それとも、新條亜矢?
「駄目だ。また、落ち込んだ」
ドスン…。ベッドに横になった。
いや、待てよ。私の小説を読んでくれてるんだよね。
それから、私の小説が映画化なんてされて、昴くんが演じてくれたりして。そうしたら私、また昴くんに会える!それどころか、近づくこともできる?…って、そんなの妄想だよね…。
はあ…。妄想でしかないことにまた落ち込んできて、私はさっさとお風呂にはいって、寝ることにした。
その日は寝ると夢の中で昴くんが現れて、私に、撮影中こんなことがあったとか、こんな内容のドラマで面白いんだって熱く語っていた。そんな昴くんが、すごく可愛いなって夢で私は思っていた。
翌日は、バイトのシフトが入っていない日だった。
「さて、今日は何をしようかな」
なんとなくパソコンを開けてみると、そこに新たな小説が書かれていた。
「ええ?私、こんなの書いてたっけ?」
題名は、「2012年 愛と光の地球」。う~~ん、覚えがない。でも、私のパソコンだ。私以外の誰が書くんだろうか。
他にも、なんだか変なことが周りで起きていた。母が、その日の昼に私を呼び、
「ひかり!テレビに昴くん出てるわよ」
と言うのだ。あれ?私がファンだって知ってたっけ?
ワイドショーをしていたのだが、そこで、新條亜矢とのことが話題に出ていた。ドラマのシーンや、撮影風景まで映され、けっこう仲むづましい感じだった。
「あら~~。こんな奇麗でスタイル抜群の若い子じゃ、あんた太刀打ちできないわね。かわいそうにね」
と母に言われてしまった。な、何それ…?別に、昴くんとどうしようとか思ってないし。私は単なるファンだし…。と思いつつも、なぜか、胸が痛かった。
昴くんのアホ…。って思ってる私がいて、正直びっくりした。
美里からメールがあった。
>あの記事、でたらめでしょ?
あの記事って、昴くんのことかな~~。私はなんて返事していいかわからず、そのままほっておいてしまった。
そのあと、薫からもメールがあった。
>だから、天宮昴なんてやめときなって。あんな子と写真撮られちゃってるじゃん。
ええ?ファンだって、言ったっけ私。でも、やめとけって言うこともないじゃない。単なるファンでいても、いいじゃない?
なんだか、変なメールばかりが来る。そのうえ、緒方さんからもメールが来て、
>ひかりさん、大丈夫ですか?
と書かれていた。う~ん、何が?なんの心配をしてるんだろうか。確かに、相当ショックだったけど、でも相手は、芸能人だよ?そりゃ、なんだか知らないけど、心がすごく痛いし、何かぽっかりと穴が開いたような変な感覚はしてるけどさ…。
夕方、葉月ちゃんからメールが来て、
>ご飯食べに行きませんか?
と誘われた。葉月ちゃんは今日仕事だから、仕事終わってから会う約束をした。
新宿まで行き、本屋の入っているビルの前で待ち合わせをすると、
「今日はダブルデートしませんか?」
と葉月ちゃんが言って来た。
「ダ、ダブル?」
誰と、誰が…?
「ついさっき、一緒にみんなでご飯食べようって言われて…。車で迎えにこれないらしいから、電車になるんですけど…」
「え?うん。それはいいけど、どこに行くの?」
「ちょっといい感じのお店を、発見したんです」
「そうなの?」
私は言われるがままに、ついていった。お店に着くまでの道のりで、葉月ちゃんは、昴くんのドラマ面白いですよねって、そんな話を楽しそうにしていた。
「そうだよね。面白いし、クールな昴くん、いいよね」
私も、嬉しくてつい、はしゃぎながら話し出した。
「だけど、撮影がものすごくハードみたいですね。今日だってギリギリまで、撮影みたいだし」
ギリギリ…?オンエアーにってことかな?
「食事する時間も、そんなに取れないかもって言ってました」
「…?」
食事する時間もないほど、忙しいのかな?でも、それをなんで葉月ちゃんは知ってるのかな。
「何も言ってきてないんですか?」
「え?何が?」
「いえ、だったらいいんですけど」
「???」
なんのことかな。
店に着くと、そこはちょっと暗くて、そんなに人もいなかった。だけど、いい雰囲気のお店だった。
「奥の席にいますって」
いますって…、誰が?そういえば、ダブルデートって、何?葉月ちゃん、彼いたんだっけか?その人と、その友達?もしや、すごく若い子?
あれ…。美里とも、こんなことなかったっけ?ああ、そうだ。ビリヤード一緒にしたっけ。それで、私すごく気持ちが悪くなって、その時、誰かに助けられて…。誰?ぼやけてて、顔が思い出せない。それに頭が痛い。
「お待たせ!」
葉月ちゃんが明るく、誰かに言った。店内は暗く、そのうえ奥まった席だから、さらに暗くて顔が見えなかったが、
「ああ。いきなり呼んで、大丈夫だった?葉月」
と声が聞こえた。あれ?この声、聞き覚えがあるよ。そうそう、結城悟にそっくり。
テーブルの前まで来て、そこに座っている人を見ると、私は心臓が飛び出そうなくらい、びっくりしてしまった。
え…?す、昴くんと、結城悟?!!!!
なんで?なんで二人がいるの?なんで、葉月ちゃん知ってるの?え?え?ダブルデートって?ええええ?!!!
私が目を丸くしていると、
「どうしたの?」
と昴くんが聞いてきた。それでも、まだ私は口を開けぽかんとしていた。昴くんは席を立って、私のそばに来て、私の肩に手をまわした。
「隣に座る?」
え?
「葉月ちゃんが、悟さんの隣に座りなよ」
今まで、昴くんが座ってた席に葉月ちゃんを座らせ、昴くんは私をその前の席に座るように言った。そして、昴くんは私の隣の席についた。
「……?」
いったい、何がどうなって、こうなってるんだか…。