5話:部屋掃除−4
渉の部屋の前
「ここからは安牌か……」
「「私たちの部屋がやばかったみたいに言わないで?(ください?)」」
「否定できないあたりなぁ…」
「自業自得なのです!」
安心する裕介とは反対に、渉は少しだけ焦っていた。
なぜかと言えば。それは、透花との思い出の品をほとんどすべて飾ってある部屋なので、
「意外と汚い」
と言われて処分されてしまったら。と考えてしまうのだ。
「んじゃ渉、入るぞ?」
ぼーっとしている渉が心配になり、声を掛ける裕介。返事がないので覗き込むようにして顔を見ると、肩をガッと掴まれて。
「捨てるときは!俺を絶対挟んでね!?」
「え?あぁ、うん。勿論。」
裕介には伝えたということは、もう何も安心いらない。そう思って渉も部屋を開け、全員が部屋に一歩を進めると、
「えっ」
「あれ…?」
「渉の部屋かこれ」
「おぉ……」
各々が少し引いたような反応を見せた。
どうやら渉との心の距離は一歩引いたようだ。
部屋の中は、壁一面に写真や思い出の品であろう物たちがびっしりと、貼ったり留められていた。
どうやら皆が引くと同時に、結構邪魔なのでは?と気付き、手を伸ばして捨ててしまおうと、動き出した、が。
「ダメ、それは。14回目のデートで透花が泣いたときに涙がついた服の部分だから。」
「そっちも、37回目のデートで…」
と、流れるように思い出であろう場面を喋っていく。
「あれ、渉ってこんなキャラだっけ」
「めちゃくちゃNO…」
「英語力の無駄遣い」
発音がいいNOが美紀から聞こえたが、管理者組はガン無視して部屋の中に足を進める。
恭弥が机の上を汚物を触るような手つきで整理していると。
「渉〜、これは?多分捨て損ねたお菓子のゴミじゃないか?」
「あ、それ私があげたカンカンのブラウニーの箱…」
「ほんとだ」
愁人が声を上げたが、何一つ容赦なく捨てられる箱。
「ひえっ」
「容赦〜」
「むしろ正しい。」
上から愁人、透花、筍である。
その反面、壁からものを取ろうとすると透花ですらすごい勢いで止められるのだが。
一方、瞳は。
こんなやり取りの横で、裕介がブツブツと喋っているのに気付いた。
珍し…い?時々挙動不審になる裕介だが、特になるような要因(※彼女)はなかったはず…と思い、心配して声をかけた。が。
「瞳どうしようめっちゃ渉の気持ちわかるんだけど僕」
きしょかった。
面倒になったので肩に置かれた手をはたき落としてみんなの方へ戻った。
渉にだけ合図して、そのまま掃除を再開する。
というか、みんなして見ないふりをすることになっているようだった。
「だいたい終わった?」
「まぁ変に広げられてた参考書とかも棚にしまったし…いいんじゃね?」
渉の部屋は僅か20分足らずで見違えるほどにきれいになっていた。
「わかった。んじゃあ次は喜多川さんの部屋で。」
「おけ〜」
恭弥の指示に皆が従って部屋を出ていく。
そんなメンバーを視界の端にして、すみっこで悶えながら惚気合う渉と裕介は、珍しく見れた2人の家メンらしい、どこかおかしい一面だった。